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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百九 玲緒奈編 「そうやって夫婦の関係が」

十一月二十二日。日曜日。晴れ。




ここまでも何度かそれっぽいことをしてたけど、玲緒奈れおながいよいよ本格的な『指しゃぶり』を始めたみたいだ。うん。明らかに意図して自分の指を口に入れてしゃぶってる。


「十一月二十二日。指しゃぶり本格的に開始」


絵里奈がそう言いながら母子手帳にメモしてた。こうして、玲緒奈の成長が記録されていくんだな。


だけど、『記録』以上に、僕は自分の目で耳で肌でこの子を『記憶』していきたいと思う。


そして今日は、二階のベランダで玲緒奈に外の空気を吸ってもらう。やっぱり暖かいしね。とは言え、絵里奈を抱いて三階への階段をおっかなびっくりで上らなくても、今はまだ焦って直接お日様に当てなくてもいいみたいだし、こうして外の空気を吸ってるだけでも玲緒奈も、


「ふへっ、ふへっ」


って感じでちょっと興奮してるしで、ちょうどいいと思う。


ちなみにうちのベランダはなぜか二階のも三階のも北側に設けられてて、二階の南側にはキッチン、三階の南側には、ベランダとも言い難い、洗濯物がなんとか干せる程度のスペースしかなかった。


普通は南側にベランダを作りそうな気がするんだけど、もしかしたら食堂だった時に店の入り口側にベランダを作りたくなかったってことかもね。ベランダには洗濯物を干すから、お店の上に洗濯物がひらひらというのは避けたかったってことかな。


こういう点でも、『住宅としての価値はあまりなかった』ことで安かったんだろうなって気がする。


だけど僕たちにとってはそれはあまり問題じゃなかった。何もかもが都合よくいくわけじゃないのは分かってるし、これ以上の物件を求めたらもっと家賃が高くなってしまっていたと思う。


僕たちはただ、家族で揃って慎ましく生きたいだけなんだ。家賃とかにお金をかけるくらいなら、もしもの時のために残しておきたいし。


なにより、沙奈子が気に入ってくれてる。


「贅沢言い出したらキリがないないですからね。確かに『SANA』もまずまず順調でこれからもっと売り上げも伸びてくるかもしれません。でも、先のことは分からない。だから今の時点で無理なく生活できることが大事だと私は思うんです。『選択と集中』ですよ。私はこの家を選んでよかったと思ってます」


実質的に我が家の家計を握ってる絵里奈がそう言ってくれてるのがすごくありがたい。


でもきっと、もし、僕に対する不満が募ると、これまで気にならなかった部分、割り切れてた部分が許せなくなってきたりするんだろうな。そうやって夫婦の関係がギクシャクしていくのかもしれない。



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