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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百八 玲緒奈編 「ちょっとしたピクニック気分」

十一月二十一日。土曜日。晴れ。




世間では今日から三連休。でも僕と絵里奈に『休み』はない。


ないんだけど、沙奈子と玲那が、ううん、千早ちはやちゃんや大希ひろきくんまでが家のことをしてくれるから、なくても何とかなってる。


沙奈子が、山仁やまひとさんの家でお世話になっていた時に掃除とかを手伝ってたのがこういう形で返ってきたってことかな。


決して返してもらうためにそうしてたわけじゃないけど、あくまで家族同然だったから自然とそうしてたんだけど。


ああでも、『家族同然』だから、こっちでも同じなだけなのか。


そんなことを感じつつ、今日は、天気もいいことだし、しかもなんだか暖かいし、玲緒奈れおなを連れて三階のベランダに出てみた。ここなら辛うじてお日様の光が当たる位置があるから。だけど玲緒奈は、お日様の光が自分の顔に当たると、それが気になるのか、


「んーふ、んーふ!」


って声を上げながら自分の顔をしきりにこすってた。


「顔に何か付いた気がするのかもしれませんね」


絵里奈が言うと、ベランダに出る窓のところに立ってた玲那も、


「言われてみたら、顔にお日様が当たってると分かるもんね。私たちはそれがお日様だって知ってるからあんまり気にしないけど、知らなきゃ顔になんか付いた気がするのかも」


玲緒奈見ながら言った。すると玲那と一緒にいた沙奈子も、


「そっか……!」


感心したみたいに声を上げる。


本当にいろんなことに気付かされるな。


あんまり玲緒奈が気にしてるから、少し下がってお日様が当たらないようにしてあげた。すると途端に、顔をこするのをやめて落ち着いた様子に。


「まあ、直接当てなくてもこうして明るいところに出るだけでも、結構、紫外線は当たりますからね。今日のところはこれでいいということで」


絵里奈が言うから、


「ああ、僕もそれでいいと思う。焦ることはないしね。ちょっとずつ慣れていったらいいよ」


僕もそう応えた。


「だね」


「うん」


十一月も半ばを過ぎようとしてるのに暑いくらいの陽気の中、僕たちは自宅のベランダに椅子を並べて座って、ちょっとしたピクニック気分だった。


と言っても、今は空き家になってる裏の家は目の前に迫ってるし、東側もびっしり家が建ってるし、道路に面して少しだけ開けた西側も、見えるのはほとんど家ばかり。家の屋根越しに山が少し見えるだけっていう、ぜんぜん爽やかじゃないロケーションだけど、いつもと違う雰囲気にちょっと興奮してるのか手足をしきりにばたつかせて、


「ふっほ、ふっほ!」


って呼気を上げる玲緒奈を見てるだけでも、すごく朗らかな気分になれたのだった。



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