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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百一 玲緒奈編 「相応の努力が必要なんだ」

十一月十四日。土曜日。晴れ。




世の中には、


『子供は無条件に親を信頼するべきだ』


『子供は無条件に大人を信頼するべきだ』


みたいな『甘え』がある。


そう、『甘え』だ。


だってそうだよね?。仕事とかしてても当たり前のことのはずなんだけど、


『相手からの信頼を得る』


というのは、決して簡単なことじゃないよね?。気の遠くなるような地道な積み重ねがあって初めて得られるもののはずだよね?。


なのに、『親』というだけで、『大人』というだけで、『子供から信頼を得られて当たり前』なんて、そんなムシのいい話、むしろおかしいと思わないのが僕には理解できない。


今日、沙奈子は、千早ちはやちゃんと大希ひろきくんと星谷ひかりたにさんとで、水族館に行ってくることになった。


千早ちゃんの提案だった。


「山下さんと絵里奈さんが玲緒奈れおなちゃんの世話で動けないんだったらさ、私たちが沙奈を水族館に連れてってあげたらいいじゃん」


って。


千早ちゃんは沙奈子の友達だからそんな風に言うのは『当たり前』と思うかもしれない。だけど、世界のすべてが敵に見えてて、だから他人に対しても攻撃的だった彼女がそんな風に言えるようになるまでには、ものすごく大変な道のりがあったはずなんだ。


なにより、星谷さんが千早ちゃんに信頼されてなければ、たぶん、今の関係はなかった。


千早ちゃんと出逢ったばかりの頃の星谷さんはまだ高校生で、厳密には『大人』じゃなかったかもしれないけど、小学四年生だった千早ちゃんから見たらほとんど大人と変わらなかったと思う。そんな星谷さんが千早ちゃんから信頼されるには、並大抵のことじゃなかっただろうなっていうのは僕にも想像できてしまう。


だけど、それがあればこその結果なんだ。


ニュースを見ると、もう、毎日、


『こんな大人、どうすれば信頼できるんだ!?』


っていう大人が起こした事件がいくつも報道される。人を人とも思わない大人の『悪行』が報道されない日はないくらいだよね。学校でさえ、『イジメ』を隠蔽していたりするし。


そんな大人の何を『信頼』すればいいの?。


そんな大人の姿を見てて、『子供は無条件に大人を信頼するべきだ』とか言われても、納得できるはずがないよね?。


だから星谷さんは、千早ちゃんからの信頼を得るために、


『彼女に対して嘘を吐かない』


『彼女を見くびらない』


『彼女を見下さない』


『彼女を侮らない』


『彼女を蔑ろにしない』


『彼女の言葉に耳を傾ける』


それを徹底したそうだ。


千早ちゃんを『一人の人間』として扱って、敬って、地道に信頼を勝ち取る努力を続けたんだ。


『親』だって、それと同じだよ。


自分の子供から信頼を勝ち取るためには相応の努力が必要なんだ。



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