表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1592/2601

千五百九十二 絵里奈編 「目の前にいる本人を見る」

十月二十九日。木曜日。晴れ。




玲緒奈れおなの誕生日は、篠崎ししざき香保理かほりさんの命日でもある。


僕は運命とかは信じないけど、この偶然にはなんとも言えないめぐり合わせみたいなものは感じるな。


とは言え、当の玲緒奈自身はまるっきりそんなことはお構いなしで今日も元気だ。


「体重、四九二〇グラム。この調子だと今週中には五キロ超えそうだね」


お風呂に入れる時、日課になってる体重測定でも、玲緒奈の健康っぷりが分かる。


赤ちゃん用の体重計に乗せた時の様子も堂々としたものだ。本当に逞しい子に育ちそうだな。










十月三十日。金曜日。晴れのち曇り。




最近、玲緒奈がいよいよ僕でないとすぐに機嫌を直さなくなってきた気がする。


絵里奈が抱いても玲那が抱いても、なかなか機嫌を直してくれないんだ。


「う~む……。この調子だと、マジでパパちゃんでないとダメになるかもね。育児休業三ヶ月じゃ短かったかもよ?。せめてある程度はこっちの言葉が分かるようになってからじゃないと」


僕のことを『パパちゃん』と呼ぶようになった玲那が、玲緒奈を膝に抱いてあやしている僕を見ていった。


「確かに。パパが在宅勤務でいてくれる間はいいけど、出勤するようになったら、正直、心配……」


絵里奈も困ったように言う。


「そうは言っても、こればっかりはなあ……」


僕も答えようがなくて言葉に詰まる。でもその上で、


「もしそうなったら可能な限り在宅勤務ができるように調整してみるよ」


と、今の時点でできそうな対応を考えてみた。実際にその時になってみないとまだ分からないしね。










十月三十一日。土曜日。晴れ。




『なんで父親に一番懐くんだ?』


って思うかもしれないけど、これは、


「イチコも大希ひろきもそうでしたね。妻よりも私があやした方がすぐに泣き止みました。だから人それぞれでしょうから、『なぜ?』と気にしすぎても詮無いことだと思います。相手も人間なんですから、機械のように決まった反応をするわけじゃありません。『そういうもの』と開き直ってしまうのがいいんじゃないでしょうか?」


山仁やまひとさんもそう言っていたし、『そういうもの』なんだと僕も思う。


世の中には『母性神話』みたいなものがあるらしいけど、それがまったく当てにならないことを、僕たちはさんざん見てきた。その一方で、『母親』じゃなかった絵里奈が沙奈子の母親になれたり、鷲崎わしざきさんがほとんど結人ゆうとくんの母親になれてたりと、血の繋がりが絶対でないことも実感してきた。


血の繋がった親子であっても、血の繋がらない他人であっても、結局は『人間と人間』なんだ。


『理由は分からないけどウマが合う』こともあれば、『理由は分からないけど嚙み合わない』っていうことだってある。


大事なのは、


『どこかの誰かが言っていた一般論』


じゃなくて、目の前にいる『本人』を見ることだと思う。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ