表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1591/2601

千五百九十一 絵里奈編 「その子が発するシグナルを」

十月二十七日。火曜日。晴れ。




一ヶ月までの記録。


裸にすると手足をよく動かしますか。   はい。


お乳をよく飲みますか。   はい。


大きな音にビクッと手足を伸ばしたり泣き出すことはありますか。   はい。


おへそはかわいていますか。   はい。


うすい黄色、クリーム色、灰白色の便が続いていますか。   いいえ。




そして昨日、一ヶ月検診を受けて、


体重四八〇〇グラム。身長五十一.七センチ。胸囲三十六.五センチ。頭囲三十三.五センチ。


栄養状態・良。


所見・健康。


指導事項・現時点で異常認めず。




医師や看護師に触られるとすごく泣くかと思ったけど、泣くどころか、なんか怒ったような顔で睨みつけてた気がする。他の子はすごく泣いたりしてたのに。


さすがに途中からはぐずりだしたりもしたものの、僕が抱いてあやしたらすぐに泣き止んでくれた。


「目も耳も問題なさそうですし、健康そのものです」


医師の太鼓判をもらって帰る途中、絵里奈が、


「やっぱり、パパがいいんですね。ちょっと妬けちゃうかも……」


って。自分が抱くとあやすのに少し時間が掛かるのに、僕が抱いたらだいたいすぐに機嫌が直ることについてだった。


「あはは。たまたまだと思うけど、機嫌がよくなってくれるんだったらそれが一番だよ」


僕も少しばかり申し訳ないと思いつつ、どっちがあやしても泣き止まないというのに比べたら、ね。










十月二十八日。水曜日。晴れ。




一ヶ月検診も終えて、医師の目からも玲緒奈は健康そのものに見えてるんだって分かって、僕たちはホッとしていた。


自分たちの接し方は間違ってなかったんだなって感じて。


ハウツー本も多少は読んだし、山仁やまひとさんからもアドバイスはもらったけど、あくまで参考程度に捉えてる。


だって、僕たちが育ててるのは、ハウツー本を書いた人が見てた子でも、山仁さんが育てたイチコさんや大希ひろきくんでもなく、玲緒奈なんだ。


山仁さんも言ってた。


「他の子供のことは、そんなに気にしなくていいと思います。大事なのは目の前の子をよく見ること。知ろうとすること。


相手も人間なんです。人間なら出してもおかしくないシグナルを出してくれてます。嫌なことがあったら不機嫌になるし、嬉しいことがあったらご機嫌にもなる。


その子が発するシグナルを理解してあげてください」


って。


ここまで玲緒奈と接してきて、その通りだと僕も感じた。玲緒奈は玲緒奈なんだ。沙奈子の時に感じたのと同じ。沙奈子は沙奈子だった。他の子じゃない。そして玲緒奈は、沙奈子とも違う。その事実から目を背けちゃいけない。


改めてそう思ったよ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ