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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千五百八十八 絵里奈編 「今は頼もしくもある」

十月十九日。月曜日。曇り。




まだまだ、昼も夜もない生活が続く。


それでも、いつかこの状態も終わる。玲那の執行猶予だって終わったんだ。それに比べればほんの数ヶ月のことだ。どうってことない。


夜。


「うぇ……」


と玲緒奈が声を上げた瞬間に飛び起きて、枕元に置いてあるお尻拭きとオムツを手に取り、作業を始める。それと同時に、


「絵里奈……」


小さく声を掛けながら絵里奈を揺り起こした。


「あ…、はい……」


のそのそと体を起こすのを確認して、今度は、沙奈子と玲那の方に視線を向けた。二人の邪魔になってないか、確かめるために。


でも、沙奈子も玲那も寝てくれてる。もしかしたら睡眠は浅くなってるかもしれないけど、実際に起きてこちらを気にするようなことがなければそれでいいと思うようにしてる。


二人が起きてこない程度なら、きっと近所迷惑にもならないと思うし。


こうして、オムツを替えた玲緒奈を絵里奈に渡し、絵里奈がおっぱいをあげてる間にオムツとお尻拭きをビニール袋に封入してゴミ箱へ捨て、洗面所で手を洗う。


そして絵里奈と玲緒奈のところに戻って、見守った。


おっぱいが終わると玲緒奈を受け取り、立て抱っこして背中をとんとん。絵里奈にはそのまままた寝てもらう。


「けぽっ…」


げっぷを確認した時、


『あ…』


と思った。げっぷしたはずみでちょっと吐いたのが分かった。だけど吐いたのを喉に詰まらせたりとかはしてなかったみたいだから、口を赤ちゃん用のウェットティッシュで拭って布団に下して、僕は汚れた自分の部屋着を着替えて玲緒奈を膝に抱いて壁にもたれ、ゆらゆらと小さく揺らしてあやす。


そうすると玲緒奈は、ぐずるでもなく薄明かりの中で僕を見てくれてた。










十月二十日。火曜日。晴れ。




「いってきます」


「いってらっしゃい」


玲緒奈を膝に抱いたまま、僕は、学校に向かう沙奈子を見送った。その顔もちゃんと見るようにしながら。


もし、沙奈子が寂しそうにしてたら、不満そうにしてたら、その時は玲緒奈を絵里奈に任せて、沙奈子を甘えさせてあげなくちゃと思ってる。


でも、今のところはまだ大丈夫そうだ。玲那もそう。


沙奈子と玲那とで、お互いに支えあってくれてるらしい。


「今は玲緒奈に、ね」


って。


ありがとう。


ふと、視線を移すと、和室の隅に鎮座している『兵長』が目に入った。相変わらず怖い顔をしてるけど、ある意味じゃ、『魔除け』にもなってる気がして、今は頼もしくもある。


絵里奈の『志緒里しおり』や、沙奈子の『莉奈りな』『果奈かな』も、一緒にこの家を守ってくれてるのかもしれないな。



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