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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千五百八十六 絵里奈編 「ありがとう」

十月十二日。月曜日。晴れ。




だけど人間、大体のことには慣れるものみたいで、ここまでくると、ほんの一時間でも眠って体と頭を休めるコツがつかめてきた気がする。


もちろん、十分に休めてるとは言えないけど、うん、どうやら僕自身の山場は乗り越えたようだ。玲緒奈の表情を見る余裕も戻ってきたかな。


元々あまり好きじゃなかった化粧はまったくせず、髪もロクに整えてなくて、しかも目の下にクマを浮かせたヒドい姿の絵里奈が、幽霊みたいな顔で玲緒奈れおなにおっぱいをあげてた。


でも、そんな姿を見ても、やっぱり僕の絵里奈への気持ちは変わらない。


ありがとう。絵里奈。










十月十三日。火曜日。晴れ。




「お父さん、大丈夫……?」


食事を持ってきてくれた沙奈子が僕に声を掛けてくれる。


「うん、ありがとう。僕は大丈夫だよ」


決して強がりじゃなく、素直にそう言えた。だけどそれ自体が、沙奈子や玲那の協力があってのことだと思う。


経験者の山仁やまひとさんのアドバイスをもらえてるとはいえ、初めての乳児の世話でほとんどが手さぐりに近い状態で何とかなってるのも、沙奈子と玲那が家のことをしてくれてるから、それだけ余裕が持ててるおかげだと思うんだ。


ありがとう、沙奈子。










十月十四日。水曜日。晴れ。




「玲緒奈、機嫌よさそうだね」


僕の膝で両手をばたばたさせている玲緒奈を見て、玲那が笑顔でそう言ってくれた。


「ああ……ほんとに」


僕も玲緒奈が機嫌よくしてくれてることをすごく感じて、気持ちが穏やかになる。


彼女が僕を認めてくれてる実感がすごくあるんだ。そのおかげで僕も癒されてる。


大変なのは事実でも、辛くはない。手応えがあるから。


この子は、僕の子供だ。遺伝子検査なんかするまでもなく、僕に全幅の信頼を寄せてくれてる。


実は、玲緒奈をお風呂に入れるのも僕の役目になってる。


と言うのも、絵里奈や玲那が入れようとするとすごくぐずるのに、たまりかねて僕が代わったら途端に落ち着いてくれたんだ。


どうやら、僕の方が手が大きいことと力が強いことでしっかり支えられるから、その分、安心感があるみたいだね。


「なんか、正直、悔しいです」


絵里奈が苦笑いを浮かべながらそう言ったけど、玲那が、


「まあまあ、父親が子供に信頼されてるっていうのは、きっと、ものすごく大事なことなんだと思う。私は、実の父親のことなんて、記憶にある限り恐怖と憎しみしかなかったしさ。それを思えばありがたいことだよ」


フォローしてくれた。


絵里奈としては、ちょっと、


『自分は母親としてダメなんじゃないか?』


って思ってしまいそうになってたらしいけど、玲緒奈はちゃんと絵里奈のことも信頼してる。おっぱいの時に抱かれてる様子を見る限りじゃ、本当に幸せそうだしさ。玲那もそれを分かってくれてるんだ。


そして、絵里奈のことも僕以上にしっかりと気遣ってくれてるのはとても助かってる。


ありがとう、玲那。



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