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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千五百八十四 絵里奈編 「この時期を過ぎれば」

十月七日。水曜日。曇りのち雨。




沙奈子は学校。玲那は仕事。


二階のリビングでは、僕と絵里奈が玲緒奈れおなとの格闘を続けてる。


僕は、玲緒奈を膝に抱いたまま壁に背を預けてうとうとしてた。もうベビーベッドには戻さない。戻そうとするとぐずるから。


病院でもそうだったけど、玲緒奈の泣き声は、ものすごくパワフルだった。この子の命の強さを物語るみたいに、明らかに近所中に響き渡るだろうなと思えるものだった。だから泣きっぱなしにはしない。させられない。


「うぇ……、うぁ……」


ぐずりだした声にハッと目が覚めて、おむつを替える。それを、


「はあい、おむつ替えるからね~。ちょっとまっててね~」


まずは玲緒奈の顔を覗き込んで、目を見て、穏やかに話しかける。すると彼女は、そろそろちゃんと見え始めてるであろう目で、僕を見るんだ。しかも、僕が動くとそれに合わせて目で追ってくる。だから視力には問題ないなって思えた。


それと同時に、赤ん坊は親をものすごくしっかりと見てるというのも実感したな。


当たり前か。だって赤ん坊にとって親は、この世界についての最大の情報源なんだ。親を通してこの世界についての情報を得ていくんだ。


それ以外に、どうやって赤ん坊がこの世界について学ぶの?。










十月八日。木曜日。雨。




僕も絵里奈も、玲緒奈にすごく見られてる。玲緒奈はすごく僕たちを見てる。


僕と絵里奈の顔を、表情を、仕草を。それによって自分の目の前にいるその人が、自分にとって安全かどうかを確かめてるんだろうな。


それと同時に、『人間というもの』について学んでるんだろうなって思った。人間というものがどんな表情をして、どんな仕草をして、どんな声を発して、どんな感情を見せて。


赤ん坊は、ある程度まで成長すると、教えてなくても言葉を話し出す。


だけどそれは、本当に『教えてない』んだろうか?。自分の周りの人が話してる言葉を聞き取って、そうして学んでいってるんじゃないの?。


じゃあ、赤ん坊が学び取るのは、『言葉』だけなの?。玲緒奈見てるととてもそうは思えない。『言葉』だけじゃなく、『言葉遣い』も同時に学んでるんじゃないの?。


それどころか、自分への態度とかを見て、『他人への接し方』も学んでる気がして仕方ない。


だから僕は、寝不足で満足に働かない頭をなんとか動かして、理性を保つことを心掛けた。今の僕の玲緒奈への接し方が、この子の『他人への接し方の基礎部分』になると思うと、迂闊なことはできないと思った。


だからこそ、寝られる時には寝ることにする。遊びたいとか何とか、そんなのはこの時期を過ぎればまたできるようになる。


僕は仮にも大人なんだから、たった数ヶ月くらい我慢できるはずなんだ。



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