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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千五百七十七 絵里奈編 「こんな素晴らしい人間関係を」

九月二十七日。日曜日。曇り。




昨日はあれから玲那も目を覚まして、三人で自転車に乗って絵里奈と玲緒奈れおなのお見舞いに行った。


そして、新生児室に近付いたら、


「ぎゃうあああ~っっっ!!」


って、怒鳴るみたいなすごい泣き声が。


玲緒奈だった。玲緒奈がおっぱいを要求して泣き喚いてたんだ。


生まれた時の、「ふやあ…、ふやあ…」って感じの泣き声が嘘だったみたいに、全身全霊で声を上げてた。


「これは…、あれだね。生まれたばっかの時は、時間が掛かったこともあって玲緒奈自身、疲れてヘトヘトだったに違いない」


玲那の言葉に、


「なるほど」


と思ってしまった。


そこに、ふらふらと頼りない足取りで絵里奈が現れて、目の下にものすごいクマを浮かせた顔でおっぱいを。


授乳後に少しだけ話ができたけど、


「一時間ごとに起こされておっぱいあげてる……。死にそう……」


「そ……、それは大変だね……」


としか言えなかった。だから面会よりもとにかく休ませてあげたくて、看護師さんが渡してくれた書類だけ受け取って、その足で区役所に出生届けを出しに。


ただ、出生届け自体は受理してもらえたんだけど、


『時間外窓口では母子手帳の出生届出済証明欄への記入ができないんです』


って言われて、後日、改めて出向くことになってしまった。


「HPにしっかり記載されてますな……」


玲那がスマホで市のHPを確認して言う。確かに、これは勇み足だった。










九月二十八日。月曜日。晴れ。




今日は、僕は出社する。


と言うのも、金曜日に上司には言ってあったんだけど、二十九日からの予定だったのと、僕の代わりに製図をしてくれる人の都合が二十九日からしかつかなくて、今日だけはってことだったんだ。


普段、僕の方からもいろいろ融通を聞いてもらってるから、快く承諾できた。こういう時に会社との信頼関係というのも影響してくるなって実感する。


でも、担当分の仕事は三時過ぎに終えられて、


「チェックは在宅でいいよ」


って課長に言ってもらえたから、早退扱いにはならずに絵里奈と玲緒奈のお見舞いに行けて。


ただし、チェックした後は、会社のクラウドサーバーにアクセスするためのセキュリティキーを返却しなきゃいけないから、明日また、一旦、会社に顔を出すことになるけどね。


沙奈子ももちろん学校で、玲那も『SANA』の仕事だ。


そして僕が、会社から直接行った絵里奈と玲緒奈のお見舞いから家に帰ると、


「おめでとうございま~す♡」


ここまで自重して遠慮してくれてた千早ちはやちゃんが先頭に立って迎えてくれて。


その後ろに、星谷ひかりたにさん、大希ひろきくん、イチコさん、田上たのうえさん、鷲崎わしざきさんが満面の笑顔で。結人ゆうとくんも、そっぽは向いてるけど、機嫌は悪くない感じで。波多野さんも、今日はバイトで来られないけど、喜んでくれてるって。


ああ……、僕は、こんな素晴らしい人間関係を築くことができたんだな。ここに玲緒奈を迎えることができるんだ。


なんだ…、これならもう、玲緒奈の人生は何も心配要らないよ。


ここにいるみんながあの子を祝福してくれてるんだから。



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