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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千五百五十八 絵里奈編 「これはなかなかのクセモノ」

九月二十二日。火曜日。晴れ。




四連休最終日。早朝。まだ外は暗い。


僕は、何とも言えない『気配』に目を覚ました。


「うう……」


絵里奈がお腹を抱えて呻いてたんだ。


「お母さん……」


「絵里奈、大丈夫…?」


沙奈子と玲那も気配を察して目を覚まして、心配そうに声を掛けてた。


『予定日』よりは一週間早いけど、


「もしかしたら、陣痛かも……」


絵里奈がお腹を押さえつつ、脂汗を流しながら応える。


「取り敢えず、様子を見ようか」


僕が言うと、沙奈子と玲那も頷いた。


「……収まってきた……」


しばらくして絵里奈がホッとしたような表情に。でも、何十分かするとまたギューって痛み出したらしい。


「うう……」


眉間にしわを寄せて痛みに耐える絵里奈を見ているだけでも辛い。だけど、あまり早い段階で病院に行っても待たされるだけって聞くし。


それでも、お昼前にはその感覚がだんだん短くなっていって……。


病院に電話すると、


「分かりました。どうぞ来てください」


って言われたから、タクシーを呼んで。


実は病院まではゆっくり歩いてでも十五分と掛からない距離なんだけど、念の為にね。


そしてタクシーは、星谷ひかりたにさんがいつも使ってる会社のを呼んだ。そこは、


『救急車を呼ぶほどじゃないけれど歩いてとかでは難しい』


という事例にもしっかり対応してくれるところなんだって。介護タクシーとかも運用してるそうだ。


実際、


「落ち着いて、ゆっくりでいいですよ」


到着したタクシーのドライバーは、すごく丁寧に接してくれた。しかも、


「もし汚しても大丈夫ですから、安心してください」


とも。汚されたりすることもあるのを前提に運用してる車両なんだって。本当に助かるよ。


だけど、幸い、そういうこともなく、入院予定の病院に到着。看護師さんに出迎えてもらって支えられて、まずは待機室に。


ちょうどまた痛みが来て、絵里奈はベッドで横になって、はあはあと荒い息を。


『ああ、いよいよなんだ……!』


そう思ったんだけど……。










九月二十三日。水曜日。晴れ。




だけど昨日は結局、病院に行ったら痛みが治まってしまって、分娩に至らなかった。


「おそらく前駆陣痛というものでしょうね。どうされますか?。予定日まではまだ六日ありますし、退院して様子を見るというのも一つですが」


医師の説明に、絵里奈も、


「そうですね。今日のところは帰ります」


本当に嘘のように楽になってしまったことで拍子抜けして、帰りは歩いて家まで戻った。もし途中でまた痛み出したらそのまま引き返すつもりで。でもそんなこともなく、ただの散歩みたいに普通に帰りつけてしまったんだ。


すると玲那が、


「フェイントとは、これはなかなかのクセモノですな」


ちょっと芝居がかった身振り手振りで言ったのだった。



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