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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千五百五十六 絵里奈編 「結局、そういうことなんだ」

九月二十日。日曜日。曇り。




連休二日目。今日も陣痛が始まる気配はない。


「ま、そうは上手くいかないよね」


玲那が肩を竦めて言う。


そんな玲那は、『事件を起こしてしまった自分』を否定してる。


それは、『なかったことにする』という意味じゃなくて、『事件を起こしてしまった自分を正当化しない』という意味なんだ。


確かに彼女は、とても辛い目に遭わされてきた。僕だって、彼女に酷いことをした人たちのことは許せないし、天罰が下ってほしいと正直思ってる。


でも、だからといって事件を起こしていいわけじゃない。


玲那が言う、


「正直、あの時の私は完全に正気を失ってた。あいつを殺すことしか頭になくて、たぶん、誰かが邪魔をしようとしてたらその人のことも刺してたかもしれない。あそこには、私がどんな目に遭ってたか知らない人も何人もいたんだ。そういう人たちからすれば、私の方が『人を包丁で刺そうとしてる極悪人』だったと思う。だったら、止めようとする人がいてもおかしくないよね。


復讐を正当化しようとする人たちは、そういうことを考えてないと思う。ご都合主義で舞台が設定されてるフィクションだと上手くいくことでも、現実はそうじゃないんだよ。それに、あの時の私がそうだったみたいに、追い詰められて復讐しか頭になくなってる人が、冷静に状況判断できるわけじゃないじゃん。逆に、冷静に状況判断できるようなら、それはちゃんと復讐が何をもたらすか考えなきゃいけないじゃん。冷静に考えたらフィクションみたいに上手くいくわけないって分かるじゃん。それが分からないってのは、冷静じゃないってことだよ。


だから私は、『事件を起こしてしまった私』を認めない。感情の面では正当化したい気持ちはあるけど、それはダメなんだ。あの時の私は運良く他の人を巻き込まなかっただけで、もし、もう一度あれを繰り返したら、今度も大丈夫っていう自信はまったくない。


そんなことで無関係な人を巻き添えにしたら、巻き添えになった側にとっては私が『仇』そのものになるじゃん。


復讐を正当化しようとしてる人は、そういう現実を見てないんだよ。フィクションの中のご都合主義に支えられて上手くいってるだけの『おとぎ話』を信じてるだけなんだ。


私がどんな目に遭ってきたかなんて、無関係な人にはそれこそ関係ないんだよ。そんな私の復讐に巻き込まれて大切な人が傷付いて、それで許してくれんの?。『復讐のためなら仕方ない』って納得してくれんの?。私は許さない。納得もできない。私と同じ目に遭ってきた人の復讐に巻き込まれてお父さんや絵里奈や沙奈子ちゃんが命を落としでもしたらなんて、想像しただけで『ぶっ殺す!!』って思うよ。


結局、そういうことなんだ」



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