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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千五百五十四 絵里奈編 「私も、一緒にいたい……」

九月十八日。金曜日。曇り時々雨。




明日から四連休。


だからといってどこかに出掛けたりとかの予定はない。いつ子供が生まれてもおかしくない状態だからというのもあるからね。


「いつ陣痛が始まっても大丈夫なように、入院の用意はしっかりしておかなきゃ」


着替えとか寝巻きとか必要なものを、みんなでしっかり確認してバッグに入れる。用意自体はすでにしていたんだけど、念のために。


本音を言えばこの四連休の間に生まれてくれると、僕も付き添えるから助かる。


と言うのも、『立会い出産』を希望してるんだ。


入院予定の病院は、それこそ立会い出産を積極的に取り入れていて、希望すれば三人までは立ち会えるんだって。


沙奈子に、


「立ち会いたい?」


と尋ねたら、


「うん……!」


間髪いれず頷いた。


世の中には苦手な人もいるだろうから、『立会い出産するべきだ!』みたいなことは言うつもりもない。ただ僕たちはそうしたいというだけのこと。沙奈子がそれを望むのなら、拒む理由がないというだけのこと。


そして僕も、万が一の場合も含めて、自分がその場に立会いたいんだ。喜びも悲しみも、自分の目で見届けたい。後悔しないように。


絵里奈がどれだけの思いをして僕の子を生んでくれるのか、ちゃんと知っておきたいんだ。


幸い、僕は、血とか見るのも基本的には平気だからね。内臓とかまではさすがに厳しいから、赤ん坊が出てくるところを目の当たりにするのまでは無理でも、せめてその場で絵里奈を励ましていたい。


絵里奈がそれを望んでるしさ。


「正直、パパが傍にいてくれないと思うと不安で仕方ありません。『旦那さんには見られたくない』っていう奥さんもいるそうですけど、私は逆ですね。パパにはちゃんと見ていてほしい。だからできればパパが傍にいてくれてる時に生まれてくれたらと思うんですけど、こればかりはね」


「僕も、ぜひ、その瞬間には立ち会いたいな。だけど、僕たちの希望通りにはいかないこともあるのもちゃんと承知しておきたいとは思う。自分の思い通りにならなかったからってキレたりするのは大人として恥ずかしいし」


すると玲那が、


「万が一、お父さんの仕事中とかに生まれそうになっても、私が傍にいるから心配ないよ。ピカも、『勤務時間中に産気付いた場合には、早退していただいて構いません』って言ってくれてる」


って。


「まあそれについては僕も、途中で抜けてもらっていいとは言ってもらえてるけどね。ただ、病院に駆け付けるまでにはそれなりの時間も必要で、『絶対間に合う』とは言えないからさ。その時は任せるよ」


沙奈子については、さすがに自分の母親の出産に付き添うために早退とかは普通はしないかもしれないけど、


「私も、一緒にいたい……」


そう言った表情に強い気持ちが込められてるのは、分かったのだった。



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