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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千五百五十三 絵里奈編 「私たちがそうできるのは」

九月十七日。木曜日。曇り時々雨。


案の定、今日は少し蒸し暑かった。気温はそれほどじゃないけど、湿度が高い。




今日は木曜日だから、波多野さんはバイトが休み。


それもあって、絵里奈の様子を見に来てくれてたんだって。


もっとも、半分は、久しぶりに沙奈子や千早ちはやちゃんや大希ひろきくんと一緒に過ごしたかったっていうのもあるらしい。三人が帰ってきたら一緒に二階のリビングで勉強したりしてるのを見てたそうだし。


千早ちゃんにとっては、波多野さんも『お姉さんの一人』みたいなもので、しかも特にノリの合うお姉さんだから嬉しかったみたいだ。


「ホントにもうすぐ生まれるんですね」


僕が仕事から帰って『会合』が始まると、厨房に立つ絵里奈のお腹を見ながら波多野さんがしみじみ言った。


「正直、イチコと知り合う前は、『こんな生き難い世の中に子供を生むとか無責任にもほどがある!』みたいに思ってたんですよね。でもそれは結局、自分の両親に対する不満でしかなかった……。自分の両親が子供のこともまともに見てないのを感じてたから、『メンドクサイとか思うんなら生むなよ!』って反発しちゃってたんだと思います。


まあ特にうちの両親の場合は、兄貴の性欲処理に妹をあてがっときゃいいか的な考え方してるようなロクデナシでしたから余計にそう思うっていうのもあるんですけどね」


肩を竦めて心底嫌そうに口元を歪めて「へ……っ!」って吐き捨てながら。


確かに。お兄さんの事件の影響で家庭が崩壊して心を病んだこと自体は同情しないでもないけど、その一方で、今の状態を招いたのも御両親なんだというのも事実だとは感じる。


だからといって『私刑』を加えるのも違うとは思うかな。


波多野さんは、続けて言った。


「だけど、私の両親は見事に大失敗だったけど、山下さんや絵里奈さんはそんな失敗はしないって思うんです。だって、私の両親と違って、『生んでやった』とか『育ててやってる』とか思ってないから。沙奈子ちゃんのこともちゃんと『人間』として接してるってのが分かります。子供だからってナメてないし見下してない。私の両親の私への態度と、本当に、まったく、全然、違ってるってのが分かるんですよ。それを見てたら、『ああ……。うちがダメになるのも当然だよなあ……』って思います……」


寂しそうな目をして……。


そんな波多野さんに、絵里奈が言ったんだ。


「私たちがそうできるのは、カナちゃんやみんなのおかげだよ。玲那の一件の時だって、カナちゃんたちが支えてくれたから私たちも正気でいられたんだ。だから、さ。カナちゃんが生まれてきてくれたことを、私は感謝してる。ありがとう……」



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