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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千五百四十三 絵里奈編 「そういうことが実際に」

九月七日。月曜日。晴れ。




今日は波多野さんの誕生日。


僕と沙奈子が住んでいたアパートの部屋にそのままスライドする形で入居して、でも、すごく一人暮らしを満喫しているらしい。


「小父さんの家に居候させてもらってた時は、もちろんすごく助かってたしイチコやヒロ坊と一緒に生活できて嬉しかったんだけどさ、やっぱ、申し訳ないって気持ちも抜けなくて……。それが今は自分の稼ぎで借りてる部屋だから、マジ楽チン。織姫さんたちもすっごく優しくしてくれてさ。他の部屋の人も親切で。


でも、隣の部屋の秋嶋あきしまさん?だけはまだ挨拶できてないんだ」


とのことだった。


実家は、たまに波多野さんが帰って掃除しても追い付かなくてすっかり『ゴミ屋敷』みたいになって、お父さんも一日中部屋にこもってお酒ばっかり飲んでる状態で。星谷ひかりたにさんが手配してくれた『犯罪加害者家族を支援するNPO』の職員が週に二回訪問して心療内科に通院させてくれてるらしいけど、正直、今より悪化するのを防ぐだけで精一杯という状態らしい。


『犯罪に憤る正義の人たちの私刑』


が、これを招いたのに、それをやった人たちは、自分の行いを反省するどころか、お父さんが心療内科に通ってるっていうのがどこかから漏れて、


『世論大勝利』


とか言って盛り上がってたらしい。


だけどそれは、実際に事件を起こしたお兄さんにとってはそれこそ狙い通りだったみたいだね。なにしろ、以前の裁判の時にも、自分の両親が苦しんでることをどう思ってるか検事に聞かれても、


「ざまあ、としか思いません。自分がこんな人間に育ったのはあいつらの所為ですから」


って言い放ったそうだし。


すると弁護士が、


「異議あり!。本件には関係のない話で裁判員の被疑者に対する心証を誘導しようとしています!」


って抗議したりってこともあったって。


なるほど確かに、お兄さんが、


『自分がこんな人間に育ったのはあいつらの所為ですから』


なんて口にすれば、


『親の所為にするな!』


って言われるのも当然だなって思う。だけど、だからって何の影響もなかったとは、僕は思わない。波多野さんがお兄さんにいたずらされてるのを訴えても何も対処しなかったような人たちだから。


でも、それでも、『私刑』を加えるのは違うと思う。そんなことをしなくても、『自分の子がまったく無関係な何の落ち度もない女性に乱暴した』なんて事件を起こしただけでも大変なダメージだったと思うし。


しかも、玲那の時もあったけど、同姓同名のまったく無関係な人のところにもメールとかメッセージが行ったらしい。しかも脅迫じみた。そんなのはそれこそ別の、『正義のふりをした犯罪』だよね。


そういうことが実際に起こってるのに、どうして自分たちの行いを改めようとしないんだろう……。



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