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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千五百四十二 絵里奈編 「ミスをする生き物である以上は」

九月六日。日曜日。曇りのち雨。




すごい大変な台風が、また日本に近付いてるらしい。


最初の予測では近畿を直撃するような話もあったけど、結局、九州の方に向かうみたいだ。


本当にこうして立て続けにっていうのは、元々、台風の通り道になりやすいとはいえ、心苦しささえ感じてしまうな。大きな被害にならなければいいんだけど……。




世の中ではそんなこともありつつ、僕たちは淡々と毎日を過ごす。台風については、直撃はしなくても大雨が降ったりするかもしれないから、非常持ち出し袋とかの確認はしておく。


朝、みんなで朝食をとりながらニュースを見てたら、また、子供が被害を受けた事件のニュースが。


沙奈子を見ると、やっぱりすごく冷たい目でテレビを見てた。


事情を知らない人は、


『犯罪に対して憤ることの何が悪い?』


って考えるかもしれないけど、玲那の事件や波多野さんのお兄さんの事件を受けて僕たちや波多野さんが経験したことこそ、


『犯罪に対して憤る正義の人』


がしたことなんだよ。


犯罪に対して憤ること自体は悪くないと思う。だけどそれは、自分を諫めたり同じ過ちを起こさないように気を付けたり、自分の身近な人が同じ過ちを犯しそうになったとしたらそれを未然に防ぐために何ができるかを考えたりって形で活かすべきだと僕は感じた。


だって、まったく無関係な他人には、そこで本当は何があったのかなんて分かるはずないから。玲那でさえ、彼女がどんな目に遭ってきたのか知ろうともしない人たちに滅茶苦茶に攻撃された。


波多野さんの家庭なんて、完全に壊された。山仁やまひとさんは、人生そのものまで壊された。


『犯罪に対して憤る正義の人』


にね。


そしてその人達は、


『原因を作った方が悪い』


と言って『他人の所為』にして、波多野さんの家庭まで壊したことを悪びれさえしない。それどころか、


『自分の家庭さえ守れない父親が悪い!』


とか言うんだ。自分たちのしたことを省みることもなく、ね。


僕は、沙奈子に、そして生まれてくる子に、そんな人にはなってほしくない。


何度も言うけど、犯罪に憤るのはいい。それは当然の感情だと思う。でも、だからって『私刑』を加えていいわけじゃない。


ちゃんとそれをわきまえられるようにならなくちゃ、


『理由さえあれば他人をいくらでも攻撃していい』


って人になってしまう可能性が高い。


星谷ひかりたにさんも波多野さんも田上たのうえさんもそれがどんな結果を生むか目の当たりにしたから、『それじゃだめだ』って思ってるんだ。


痴漢とかを目にするとキレてしまうこともある波多野さんだって、そんな自分でいいとは思ってないんだ。


だってそれはいつか、取り返しのつかない事態を招く危険性があるからね。


人間が、ミスをする生き物である以上は。



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