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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千五百四十 絵里奈編 「いい父親じゃない人は」

九月四日。金曜日。雨のち晴れ。




『自分の『好き嫌い』や『気分』で他人を排除しようとする考え方は認められない』


これは、特定の誰かにとってだけ都合のいい考え方じゃない。何よりも、『自分自身』や『自分の大切な誰か』が、見ず知らずの他人の『好き嫌い』や『気分』によって排除されることがないようにするための考え方なんだ。


世の中には、本当に、安易に他人の生き死にを決めようとする人がいる。実はそれは、かつての僕自身や、絵里奈や、玲那や、千早ちはやちゃんや、星谷ひかりたにさんや、波多野さんや、田上たのうえさんや結人ゆうとくんも含めてのことだ。自分にとって『都合の悪い誰か』を、『不愉快な誰か』を、この世から排除したい、排除していい、そんな風に考えていたんだ。


でもその考えは、結局、自分たちに降りかかってくることになる。


玲那が事件を起こしてしまった僕たち家族や、お兄さんが事件を起こしてしまった波多野さんや、沙奈子に辛く当った千早ちゃんや、学校に『スクールカースト』と作り出そうとした星谷さんや、他人に対する攻撃性を隠そうともしなかった結人くんのことを、『不快』に感じて、『そんな奴らはこの世に必要ない』と感じて、一纏めにして排除しようとする人たちは実際にいる。


田上さんでさえ、お父さんが『地方公務員』だっていうだけで、『どうせ税金をいいように食い物にしていい生活をしてるゴミクズだから、死ねばいい』みたいなことを言う人がいるんだ。


かつて『政権交代』があった時の頃は特に酷かったって。学校でさえ、


『お前のとーちゃん『ちほーこーむいん』だってな!?。これでお前らはおしまいだぞ!!』


みたいに言われたこともあったって。


確かに、公務員全員が聖人君子だなんて僕も思ってない。だけど、少なくとも田上さんのお父さんは、家ではただゴロゴロしてるだけで子供の顔もロクに見ない家族とロクに会話もしないっていう感じで『いいお父さん』では決してないかもしれなくても仕事に対してはどこまでも誠実で、『いい勤め人』なのは間違いないと星谷さんも言ってた。


僕は、


『子供にとっていい父親でありたい』


とは思うけど、だからって、


『いい父親じゃない人は人間として駄目』


だなんて言うつもりはまったくないんだ。父親としては上手くできなくても、勤め人としては素晴らしい。っていう人がいてもいいと思う。『いい父親じゃないから排除しろ』なんてのは違うと思う。


『どうせ税金をいいように食い物にしていい生活をしてるゴミクズだから、死ねばいい』みたいなことを、公務員を親に持つ子供に対して言うような人よりは、田上さんのお父さんの方がずっと立派なんじゃないかな。


ただ、同時に、自分が『いい父親』でいられないことからくる子供との行き違いをはじめとしたあれこれについては、受け止めた方がいいと思うけどね。



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