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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千五百八 絵里奈編 「お互いに自分ばかりがいい思いを」

八月三日。月曜日。晴れ。




土曜日は海。昨日の日曜日はまた、千早ちはやちゃんと大希ひろきくんがうちに来て料理を作ってた。


でも昨日は、鷲崎わしざきさんと結人ゆうとくんは、喜緑きみどりさんと食事を食べに行ってたけどね。海には一緒に行かなかった代わりらしい。


そうやって少しずつ、お互いの距離感を確かめ合いながら、お互いにどんな人間なのかを確かめながら、徐々に親しくなっていくんだ。


お互いの価値観や認識のズレも、その中で確かめていく。すり合わせを行う。そうやって譲歩できるところは譲歩して、でも譲れないところもそれぞれ提示して、それが許容範囲かどうかを見極める。


それが双方にとってどうにも埋めることのできない溝であったら、その時には残念だけど距離を置くしかない。そうすることがお互いのためなんだ。


どちらか一方がただ我慢するだけの関係は続かない。いつか破綻する。そうして破綻した事例は、それこそこの世には無数に溢れてるはずなんだ。そういう事例から学びつつ、自分たちが幸せになれる『在り方』を探っていく。


それが大人なら当たり前なんじゃないかな。『綺麗事』とか『理想論』とかじゃなくて、


『仮にも大人と言われる人同士のそれで、自分の都合だけが一方的に考慮してもらえる関係なんて、現実にはほとんど存在しない』


のは事実だよね。


自分ばっかりが好き勝手言って好き勝手してそれで上手くいくと考える方がどうかしてるんじゃないかな。


少なくとも僕たちの関係はそうだ。


お互いに自分ばかりがいい思いをして当然だとは思ってない。そんな関係が正しいとは考えてない。沙奈子でさえ、千早ちゃんでさえ、大希くんでさえ、そんなことは考えてないんだ。


そして、結人くんも分かってくれてると思う。だから喜緑さんのことを受け入れようとしてくれてるんだ。鷲崎さんのために。


たとえ不器用でも、上手く生きられなくても、オシャレで高級な暮らしはできなくても、ただただ真面目に地道に生きていくことができる彼が鷲崎さんには向いてるって、結人くんも察してくれてるんだろうな。


オシャレで高級な暮らしを求めたい人は、それを実現してくれる人を探せばいいと思う。僕たちにはそれは提供できないから、関わらないでいてくれればいい。関わろうとしたってきっと時間の無駄にしかならないから。


僕たちは僕たちで幸せを築いていく。自分の力で作り上げていくんだ。誰かに恵んでもらうんじゃなく。誰かにねだるんじゃなく。


大きなお腹を抱えて、それでも洗濯物をたたむ絵里奈の隣で、僕も自分の服をたたむ。沙奈子も玲那もそれぞれ自分の服をたたんでる。


家族で一緒にそうしてるのが、僕たちは楽しいんだ。


そういうのが楽しいと思える相手だから、こうして一緒にいられるんだ。



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