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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千五百六 絵里奈編 「手間を惜しんだのは」

八月一日。土曜日。晴れ。




梅雨も明けて、予定通り、妊娠中の絵里奈と、絵里奈の付き添いとして残る玲那を除いたみんなで海に行く。


絵里奈と玲那が一緒じゃないのは残念でも、去年までとは違っておめでたい理由だからね。気兼ねなく楽しめる。


本当はもう少し曇っててくれた方が楽だったんだけど、こればっかりは仕方ない。


メンバーは、星谷ひかりたにさん、千早ちはやちゃん、大希ひろきくん、イチコさん、波多野さん、田上たのうえさん、沙奈子、僕といういつもの顔ぶれに加えて、


「お邪魔してしまってすいません!」


「……」


鷲崎わしざきさんと結人ゆうとくんも一緒だった。


去年は鷲崎さんが『みんなで海、行かない?』って誘っても『めんどくせぇ……』の一言で一蹴した結人くんが、今年は、


「まあ……いいけどよ……」


と承諾してくれたって。


鷲崎さんも、一瞬、信じられなくて、


「え!?。ホントにいいの……!?」


みたいに聞き返してしまったらしい。すると結人くんは、


「なんだよ。疑うんなら行かなくていいんだぜ……」


って言うから、


「ううん!。行く行く!、結人と一緒に行きたい!!」


鷲崎さんは満面の笑顔になったそうだ。


彼女にとっては、信じられないくらい嬉しいことだったって。あれほど大人を憎んで他人を憎んで、本来なら『他人と一緒にどこかに出掛ける』なんてのは有り得ないことのはずだった彼が、こうして僕たちと一緒に海に行ってもいいと思ってくれた。六年生の時は、少々強引に鷲崎さんが押し切った形だったそうだからね、


それが僕にとっても嬉しい。


本当なら、喜緑きみどりさんと一緒に出掛けるというのが筋なのかもしれないけど、今はまだ、彼にとってもそうだし、当の喜緑さんにとっても結人くんと一緒にというのはハードルが高いんだろうな。その前にこうやって僕たちと一緒に出掛けて、徐々に慣らしていくという段階が必要なんだと思う。


焦っちゃ駄目だ。ドラマみたいに、何かのイベントがあったらそれをきっかけにして一気にとはいかない。現実でドラマとかみたいに上手くいくことを期待するから余計に拗れるんだと思う。ドラマとかの展開は、あくまで見てて面白いように脚色されたものでしかない。何度も同じことを繰り返して徐々に慣らしていくという段階は冗長で退屈と、見てる側からは感じ取れてしまうらしいから、敢えてその描写を省いてると、玲那も言ってたし、僕もそう思う。


だから僕たちは、他人が見たらじれったくて苛々してしまうほどその時その時で状況を確認しつつ、慎重にゆっくりと話を進めるんだ。だからこそ、沙奈子との関係も上手くいったんだと思う。


それをまた、繰り返すんだ。必要なら、何度でも、何度でも。その手間を『面倒臭い!』って言って嫌うのは勝手だけど、それで上手くいかなかったからって相手の所為にするのはおかしいんじゃないかな。


手間を惜しんだのは自分なんだから。



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