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衝撃的な髪が伸びる日本人形

「ーーという訳でさぁ

ご飯がまた美味くてね」


「そりゃよかった

広志に家庭教師の仕事を任せてよかったみたいだな」


「ねぇ、タカミネ」


真央ちゃんは俺の服の裾を掴んで、小声で喋りかけてきた。


「なんだよ?」


「なんで総合の時間に靴下の会社に来たの?」


「え、えーと、社会科見学ってことで」



人がたくさんいる状況が苦手なのか。

真央ちゃんは縮こまっている。


ちなみに陽花ちゃんは、ご飯を食べたら寝てしまったので、陽花ちゃんの家まで輸送してあげた。



「そういや、武はなんで真央ちゃんの家庭教師なんて仕事を俺に紹介したんだよ?」


「それがな

真央とは、ちょっとした親戚なんだよ。

真央は俺のこと全然覚えてないだろうけど」


「そうなのか

でもなんで俺に任せたんだよ?」


「2人とも相性が良さそうだったからな

実際、人見知りの真央がよく懐いてるように見えるし」


「たしかに」



あれ? 真央ちゃんが覚えてないくらいに、武と真央ちゃんは会ってないんじゃないのか?

なのに俺と真央ちゃんの相性が良さそうってわかるのかな?



「まぁ、広志と真央は、ひきこもり同士だからな!」


「俺はひきこもりじゃねぇ!」


「そうだったな

たしかに週2のペースで俺の会社に遊びに来てる、暇人だったな」


「そういう、武もやることあんまりなさそうじゃん」


「ここの会社は社長が面白い人だからね。

結構、自由にさせてもらえるんだよ」


「靴下だけどな」


「あのなお前、靴下バカにし過ぎだからな!

靴下の需要舐めんなよ?

みんな3足は持ってんだろ?

日本国民がみんな3足以上持ってるってことは、この日本には3億足をゆうに超える大量の靴下が出回ってるんだぞ?

現に広志も俺があげた靴下履いてんだろが!」


「でもさっき靴下と廊下がハーモニーですっ転んだぞ!」


「なにを訳の分からないこと言ってんだよ」


「靴下って滑りやすいじゃん」


「あー、なるほど。

それなら本社の滑り止め付きの靴下をおすすめします。

床で滑らないのに、滑り止め独特の凹凸がないため違和感なく履いていられるスグレモノ!」


「靴下のことになると熱い男だなぁ

あとその靴下くれ」


「欲しいならミーアに声かけな。

ミーアが作った靴下だからな」


「そうなのか!

ミーアすげえな!」



ミーアとは、ミーア・エスポジトというイタリア出身の女の子のこと。

俺が昔、留学していたエスポジト家の長女である。

ミーアは昔、日本に留学していたらしく、えらく日本を気に入って半年前に、この『フジソックス』に入社した。

年齢は、俺と武と同じ23歳で日本語はどこかおかしい気がするが、ペラペラである。

そしてなによりも、とんでもないお調子者だ。 父親に似たんだな。



「おーい、ミーア!」


「ありゃ? タカミネだ!」


「ミーアが滑り止め付きの靴下を作ったって聞いて貰いに来たぜ!」


「相変わらず、図々しくて好きだぜタカミネ」


「俺もクソ騒がしいとこが好きだぜミーア」


「ありゃ? タカミネ? 後ろに付いてきてる、ざしきわらしはなんだぜ?」


「あー

これは俺が家庭教師をしてる真央って子だ」


「真央っていうのか! オレの友達にも真央って子がいたぜ!

真央よろしくだぜ!」


「……よろしくお願いします」


「悪いなミーア

こいつ人見知りっぽいんだ」


「それは愛おしいぜ!」


「そういえば、ミーア靴下くれ」


「そうだったなタカミネ

ちょっと上司から在庫貰ってくるぜ!」


ミーアは元気よく走っていった。

社内をスニーカーで走るOLは、あいつくらいだろう。


少し遠くからミーアの遠吠えが聞こえてくる。


「佐藤さーん、滑り止め付きの靴下の在庫くださいたぜぇ!」


「ミーアちゃん、もうちょっと静かに喋らなきゃ迷惑でしょー

ダメだよー」


「わかったぜ!!!!」


「その声もうるさいよー」


「すいませんぜ!!」


「もー」


あの、ゆるい部長こと佐藤さんも苦労してそうだな。


そしてバタバタとミーアが帰ってきた。


「タカミネ!

貰ってきたぞ!

あと真央の分も持ってきたぜ!」


「おぉ! サンキュー」



ミーアは俺に靴下を手渡した。

そして、真央ちゃんに狙いを定め、抱きついた。


「真央ぉ!!

お前可愛いなぁあああ

髪が伸びる日本人形みたいだぜぇ!!」


ミーアの日本人形のチョイスが怖いぜ



「うぁぁ、助けてタカミネぇぇー

この人怖いよぉぉ」


真央ちゃんはどうやらミーアの抱擁に喜んでいるようだ。

そっとしておこう。



「ミーア、俺ちょっとトイレ行ってくるから、真央ちゃんを任せていいか?」


「もちろんだぜ!タカミネ!」


「待ってえええ!! お願い!! タカミネ!!

タカミネぇぇぇーっ!!!!」


タメ口聞いてる罰だぜ!


「タカミネ! 真央に色んな服とか着せていいか?」


「おう! 好きにしてやってくれ!」


「うわぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!!」



トイレから帰ってきた。

そこには衝撃的な髪が伸びる日本人形が座っていた。

日本人形は、ダボダボのOLの制服を着こなしながらもワックスで髪をフランスのエッフェル塔のように逆立った状態でガチガチに止められつつ、椅子に座りながら遠くを見つめて小さな声で何かをつぶやき続けていた。


笑いを堪えながら近づいたが、真央ちゃんが小さな声で

「戦地の子供だって笑うんだ。

じゃあ、私たちはもっと笑顔でいなくちゃいけないんだ。

そしていつしか、世界中のみんなでずっと笑顔でいるんだ。」と呟いていた。


つい、涙が出てしまった。……笑いで

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