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陽花の左手

「結構、走り幅跳びって難しいです」



陽花ちゃんが喋っているが、陽花ちゃんの手が気になって、なにを喋っているのか頭に入ってこない。


走り幅跳びのフォームについて伝えたいのに言葉が見つからない。

もう手本を見せてしまおう。


「とりあえず、俺がお手本で跳んでみるから見ててみ」


「わかりました!」


おおよそ15歩を逆算して助走開始の位置へ下がる。


「跳ぶよー!」


「はーい!」


助走を始める。

頭の中で歩数を計算しながら走り出す。

1.2.3.4.5.1.2.3.4.5.1.2.3.4.5!!!

できる限りの脚力を地面にぶつけ、宙へ跳ぶ。

思ったよりも力が出ないもので自分的には低めの跳躍だった。


ーーザザッ



「うおっ、すごっ」


でたーっ、真央ちゃんのおっさんのような驚き方


「うわぁーすごーい!」


陽花ちゃんは年相応で誠に可愛いですねー


「大体6m半超えたくらいか……」


現役時代に比べると1m半程跳べなくなっていた。

結構、ショックである。


「まぁ、こうやって跳べばかなり跳べると思うよ」


「タカミネ凄すぎ」


……ん?


「そんなことないよ、現役は8mくらい跳んでたし」


「タカミネやべぇ……」


……あれ? 真央ちゃん俺のこと呼び捨てしてね?

……まぁいい、俺は大人だから気にしない。 ……明日から雑な扱いしてやろ。



「俺は利き足とか気にせずやってるけど、跳びやすい方の足で跳べるように考えてやった方がいいよ。

陽花ちゃんもっかいやってみ」


「わかりました! もう一回やってみます!」



その後、陽花ちゃんは少しずつ跳ぶ距離が伸びていったが2m手前くらいが限界にだった。



「疲れてきたでしょ、ちょっと休みな」


「はぁーはぁーふぅー、はい、ふぅーふぅー」


「あ、そういえば真央ちゃんまだ跳んでないじゃん」


「あ、バレた」


「サボろうとしてやがったな」


「まぁまぁ、跳ぶから」


そう言いながら真央ちゃんは、適当な位置で走る準備を始める。

軽く、その場でぴょんぴょんと跳び、アップをする。


アップだけ、いっちょまえにやりやがって


真央ちゃんは走り出す。

っ!? 結構速い!!

フォームは汚いけど速い!!

はたから見たら踊ってるようにしか見えない!!


そして跳ぶーーーザザッ


おおよそ4m!!


「スゲェ……」


小学生の頃の俺より跳んでやがる……


「真央ちゃん、区大会で優勝したことあるもんね」


「都大会はサボっちゃったけどね」


「サボったのかよ。

まぁ、俺も大会は嫌いで1回も出なかったけどさ」


「タカミネなら全国行けたんじゃないの?」


……やっぱりこいつ、さりげなく呼び捨てしてやがる。

だが俺は大きな男だから気にしない。

あとで覚えてやがれ、嫌がらせしてやる。



「顧問に全国でトップ3に入れるかもって言われてた気がするけどな。

でも行きたくないもんは行きたくないし」


「……そうだよね」


真央ちゃんの言葉には元気がなかった。


なんとなく気まずいので話を切りかえる。


「あ、もう4時間目終わりの時間だわ」


「そうだね、ご飯にしようか」


……こいつ、いつのまにかタメ口になってやがる。




というわけでご飯なのだが、陽花ちゃんも交えて浅間家で食べることになった。

「いつも1人だからご飯は自分で作ってるよ」というので真央ちゃんが作ってくれることになった。

ご飯が出来るまで真央ちゃんの部屋で陽花ちゃんと待つことになった。



「高峰さんは、なんで真央ちゃんの家庭教師をやってるんですか?」


「うーん、なんでだろう……

なんでだか、よくわかんないんだけど友達に真央ちゃんの家庭教師の仕事を紹介されたんだよね」


「へぇ、そうなんですか」



陽花ちゃんは、期待していた回答が帰ってこなかったような様子である。

たぶん陽花ちゃんは、俺と真央ちゃんになんらかの親類的関係があると思って、それを聞きたかったのだろう。

おそらく俺は、いとこか何かだと思われていたんだろう。



「陽花ちゃんは真央ちゃんと、どれくらい前から仲いいの?」


陽花ちゃんが若干、不満そうな雰囲気を出していたので、逆に質問をしてみた。


「産まれたときからです。

家が隣なんでずーっと仲がいいです。

お姉ちゃんみたいな感じです。」


あら、仲睦まじいこと


「俺も、真央ちゃんの家庭教師を紹介してくれた人は兄弟っていうか双子ってくらい昔から仲良いんだよ」


「へぇ、その人、なんて名前なんですか?」


「藤田 武って言うんだ」


「うーん、どこかで聞いたことある気がします……」


「まぁ、どこにでもいる感じの名前だもんな」


「そうですね」



ーーガチャ


「できたよー」


真央ちゃんが昼ごはんを作り終えたようだ。


「「はーい」」


陽花ちゃんと軽くハモった。


「卵焼きと生姜焼きと味噌汁作ったから」


こいつ家庭持ってるんじゃないか、と思うようなラインナップだが、もちろん嫌いな物はないし、むしろ全部好物だ。



1階に下り、少し廊下を歩いてドアを開ける。


そこにはリビングがあり、向かいにはキッチンがあった。

リビングのテーブルには白飯と卵焼きと生姜焼きと味噌汁が並んでいる。


「よっしゃ!

いただきます!」



ご飯は、なかなかに美味しかった。

陽花ちゃんとも、それなりに仲良くなれて良かった。

だけど、陽花ちゃんの手は何故か気になってしまう。

別に、生まれつきかもしれないし、ちょっとした事故かもしれない。

しかし、何かに手が気になるように煽っている気がしてならない。

陽花ちゃんが手をかばっているせいで、俺が気になってしまうのかもしれない。 むしろ陽花ちゃんが気にしすぎないせいで、俺の目に入ってきやすかったのかもしれない。

たぶんそんなことなんだろう。



あ、5時間目と6時間目の総合のこと何も考えてないわ……

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