漫画家、気付いたら異世界でした
今、私は格闘中である。
え? 何とだって?
それは……
「ふぬううううううううっ!!! 締切まで後3時間!!!」
「せ、先生! 背景こっちどうすれば?!」
「ああっーーーーー! パソコンがあああ ふりいいいずううううっ」
「が、頑張るのよ! これは私達の血となり肉となりついでに懐を潤す物になるの! あっ、そこの背景は時間無いから花とか適当に! フリーズパソコンは早急に立て直しよおおおっ!!!」
「「はいいいいいぃっ」」
「ふ… ふふふ…。この40p漫画でぐへへ…」
「「先生!! そこで壊れないでええええっ」」
後、3時間後に迫った締め切りとである…。
「「お疲れ様でしたー……」」
「おつかれぇ……。ゆっくり帰って休んでねぇ…。 次はまた一週間にぃぃっ」
「「はあぁいい……」」
レギュラーアシスタントである二人のヨロヨロとした動作で自宅へと帰還する背中を更にボロボロとなった先生こと私、君塚都苗PN:トーナは激戦区だった部屋を呆然とみやった…。
「……うん…。お風呂入って、思いっきり寝てから考えよう…」
部屋は紙くずやら、飲み物のパックやらが散乱していました。
ほぼ完徹の現状で頭は働かぬ。
そして軽くお風呂に入って(途中で気絶仕掛けた)万年床になってる布団に入った所までは覚えてる。
うん。
もう、意識が吹っ飛びそうだったけど、そこまでは覚えてる。
けどね。
起きたら違う場所ってどう言うこった?!!
「うぐっ…。眩しい…」
最初はカーテンを閉め忘れたか? と思った。
けど、暗い方がやる気が出る! と言った趣旨の元、仕事の間は不健康極まりないけれど太陽を浴びない為に雨戸でもって完全に外の明かりを遮断。
その雨戸を開けずにベッドに入り込んだから筈だから太陽光を浴びる筈もない。ついでに電気も完全に消して、電話や携帯の電源すら落とした!
そんな状態だったから陽の光を浴びる事等有り得ぬ…。
そして目を開いたら眩しい太陽が二つ(・・)。
・・・・
・・・・・・
・・・・・・・・
え?
ここ、ドコデスカ?
と、悩んでいたのは少し前。
現実逃避ばかりしてらせぬ!
漫画家なんてやってりゃあアクシデントなんて日常茶飯事!
早速状況把握に努めます。
ここは森。…空気が異様に澄んでいて、心地良い風とさんさんと降り注ぐ太陽。
丁度いい気候からして春になったばかりみたい。
そして見た事もない草や木。それに頭上に存在する二つの太陽が私の認識を一層強め、頭でも直ぐに此処が地球ではないと言う現実に直面する。
「えー……マジですか…」
最近の流行りの異世界に~系の小説を書いている売れっ子小説家(親友)からその手の設定が今流行りらしいので、私も暇があったらちょくちょく見る様にしてた。うん。
確かに面白いと言えば面白いよね。
けど、まさか自分の身に起ころうとは思ってなかったYO!
「んーと…。取り敢えず持ち物の確認…」
そう。取り敢えず持ち物確認だ。…ぶっちゃけ風呂上がりのまま寝たから寝巻きじゃね? それに裸足だろ? …詰んだ!! 役に立つもん持ってねえええええっ。
…と、確認してみたら、何故かご丁寧に服装チェンジの上にカバンが一つ。
「あれ? ナンデスカ、この服装…」
服装:外に出る時に偽装する服装。これだったら一般人に紛れるよ!(日本限定)
「偽装服!! 暫く着てなかったからム○ューダの香りがすっげーなっ! …まあ服装の心配は無いわね…。ちゃんと靴まで履いてるし…。で、カバンの中身は…」
中身:擬態変身用化粧(目の下のクマも隠せる)・携帯・シャーペン・スケッチブック・ペン先・ペン軸・インク・墨汁・定規……。
ってえええええ。化粧と携帯はわかるけど! そこから先が全部職業関連だよ!! しかも久々にアナロググッズ満載だった…。
昔はかなり出回ってて、今はこれらの単価高いんだよねぇ…。
PCが今や主流何だけど、アナログ派はそれこそ大物先生でないとやってけない物になってます。
私? 私はもちろんPCです。生まれた時には既になんでもネットの時代だったしね。
「…取り敢えず……。何か役に立つもんは無さそう……」
カバンの中身は元居た場所だったら興奮出来る所持品だったんだけど…。
サバイバル出来そうなもんが無い!!
そんな私のとる行動は一つ!
「…寝るか……」
人、それを現実逃避とも言う。
いや、もう何か眠いんだよ。太陽の傾き加減からしてまだ朝も早い。
よって
おやすみなさいー。疲れが残ってるの。マジで。もっかい寝たらこれは夢かもしれないし、じゃないかもしれない。
けれどそれはそれ。
まずは大事な睡眠です。
これはこの世界になんの因果かやって来た一人の漫画家の異世界生活記録である…。