できあいの絆
あのとき
絆という言葉が
セミの鳴き声のように
連日響き渡った
絆、繋がっている
尊いはずのこの言葉が
連呼されるたびに
軽く軽くなって
ふわふわ宙を舞っていた
絆、と言えば売れるから
絆、と言えば見てくれるから
安直な思惑が絆の後ろで
揉み手をしている
宙を舞ったのはできあいの絆と
莫大な善意
絆とは
元来平等なるべき人間を
理由なく束縛し、
分け隔てするもの
辞書はそう教えている
私たちは絆で結ばれています
は
「私たちは理由なく束縛し
分け隔てをしています」
となる
ならばもう絆を叫ぶのはやめよう
家族の絆、も
親子の絆、も
兄弟の絆、も
声高に絆を叫ばなくても
繋がりは感じるもの
感じられるもの、なのだから