第一話 霧と少女と少年
霧がかかる所には鬼が出る・・・そう言われ続けて来た・・・・。
だったら霧は全体にかかるもの、村や町にも、勿論少し霧がかかる。だが、鬼は入ってこれないそれには理由があった。鬼がいつの日か現れた時・・・人々は隠れ暮らしていた。だがある日、一人の女性がひとつの光を町と言う町・・・いいや、世界の住む者にたくしたのだ。
それは町や村を包む壁の役割を作り霧から町たちを守ってくれるようになった。
だが女性に助けてもらったのにもかかわらず、その女性を避けるようになった・・・女性は最後まで力を尽くして姿を消した・・・町という町に光を残して――これは世界の言い伝え
その代わり新たに生まれたのが『鬼巫女』という人物だった。
遠くで何かの声が轟く・・・それは、角笛のようなほら貝のような響き方だが、凄くガラガラした感じの音である。それは遠く遠くまで響くとこだまとしてまた反響する。
町や村の人々はその音を聞くと慌てて自分の家へとかけ戻る。
「くわばらくわばら・・・鬼が来たらかなわんわ・・・鬼の所には絶対、『鬼巫女』も現れるからのう」
「ああ、まだ作物を全部取り終わっとらんに・・・」
人々は口々に色々な事を言うと戸をピシャリと閉めてしまう。
静かな霧のかかる この世界・・・霧が晴れることはめったにない。
そんな霧が濃い森の中、赤いしちぶだけの服が目立つ幼さを少しだが残した16くらいの少女が歩いていた。髪は真っ黒で肩より長く腰より短く、肌も白く健康そうには絶対に見えないような感じで赤い服は和風の形を模った感じになっており、見た目は和服・・・だが、よくよく見るとワンピースのような服であった。そして、その後ろからは少し頼りなさそうな二つ年上の少年が追いかけてくる。少年は髪が茶色くそこらへんで見る本当に変哲もない少年、身長は少女より少し高いだろう。この二人は荷物を持っているところからして旅人のようだ。だが、少女の方は横掛けの鞄をして楽な格好・・・・多分彼らにとってはただ旅をしているつもりだろうけど、少年の方が大きなリュックをせおっている為、荷物持ちにも見えなくもなかったりもする。
「休もうぜぇ樺凛」
少年は息を荒くしながら少女に言った。
「雷は、もう疲れてしまったのかしら?」
樺凛と呼ばれた少女は無表情で淡々と言葉を少年にぶつける。
「・・・・あのさ、疲れないわけ?」
雷と呼ばれた少年も負けじと言葉をぶつける。だがその言葉は樺凛の前ではむなしく消えてしまう、なぜなら雷の事を放って置き歩いていってしまっているからだ。
「む、無視かよ・・・こらー!」
「黙って付いてきて・・・・多分いる」
走って追いかけてくる雷と目を合わせずそう言うと今まで以上に真剣な表情に変わった。
「ここにもいるのか?」
雷も辺りを見渡しながらそう呟いた。
樺凛はしばらく辺りの気配を感じ取ろうとしていたが、また歩き始めた。雷もその後ろを追いかけていく。
「いたのか?いなかったのか?」
「居ない訳じゃない・・・でも、近い事は確かよ?」
彼の質問に樺凛答えた。
霧で前が見えない道をテクテクと歩いていくと、少しぼやけているが何かが見えてきた。それは、どこかの村の明かりのようだった。
「よっしゃ!樺凛、村が見えてきたぜ?」
「ええ・・・そうみたい」
また無表情で返事をすると村へ向かって歩き始めた。
「うわぁ・・・相変わらず町もそうだけど村も静かだな・・・」
村の中に入った二人
嫌気をさすように雷はそんな事を言った。
「霧が濃すぎる・・・それに人の気配もないみたいね」
「えっ!?」
一軒の家の戸を開けるとそこはもう使われていなくボロボロだった。霧のせいで見えなかったがどうやら廃墟と言っていい村のようだ・・・。
「襲われた・・・?どうして・・・」
雷は不思議そうな顔をしたが、樺凛が淡々と答える。
「多分、予想外の出来事だったんだわ。たとえば村で鬼が『生まれた』とか」
「・・・」
「例えばだけどね・・・」
そう言うと村を歩き始めた。
人っ子一人見当たらない、血やら後がない所からして村の人達は逃げたもよう。
全く気配がないのを確認した樺凜はある場所に向かう、そこは神を祭るような場所…ここは村なので神社と言うことにしておこう。ボロボロの神社の中を覗くとそこには埃と蜘蛛の巣が目立った。どうやら結構昔にこの村は果てたようだ。だが樺凜はそんな事はどうでもいいようだ、何かをキョロキョロと見渡して捜している。後ろから雷が追い付いたのか樺凜の横に立った。
「どうした?」
「私が前に話してたのを探してるの」
辺りを見渡していた樺凛は何処かに目線を止めるとその場所に向かって歩き始めた。
樺凛が近づいて止まった場所の床には何かが溶け落ちたような(焦げ目かもしれない)跡があった。
「・・・そっか」
何を納得したのかそう彼女は頷いた。
雷も覗き込む
「・・・これ?言い伝えの『光』って」
「うん、きっと・・・」
「でも何で・・・?」
雷はせおっていた荷物を床に置くとその跡をマジマジ眺めた。
「それは、村の人が村と光を見捨てたから・・・光は運ぼうと思えば運べた何処かへ移動する時には村や町と同じく壁を作ってくれる、その筈なのに・・・」
少し悲しそうな表情をしたように雷は感じて声をかけようとしたが樺凛がその跡に手をかざし何かをし始めた。雷には何をしたのか分からなかったが樺凛が手をおさめると神社の外へと足を運んだ。それを雷も追いかけた。
「お、おい!何したんだよ」
「別に・・・『散らばった』のを集め寄せただけ―もしかしたら、明日いいものが見れるかもしれないわよ?」
樺凛は悪戯を企む子供っぽい表情をした。
「・・・(うわぁ〜、樺凛がこの表情する時って何か作るか何かしでかすつもりだ)」
雷は、呆れたような表情をして小さなため息を付いた。
まだ分からない事が多いと思いますが、じょじょに書いていくつもりです。




