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⑥ 招かれざる客、立場逆転

 『誰得だれとく』6話、更新しました。今後は異世界ではなく、現代世界がメインとなる予定です。

 「お2人には是非とも、わたくしと同じ体験をしていただきたく、わたくし達が暮らす世界に逆召喚致しましたのよ。そして、貴方方の世界の人々には、家族が召喚されるという形で、反省できる機会を与えたのです。要するに、人質になっていただきました。」


こうした手段を取るのは、私にとって最終手段でもあった。しかし、異世界の王族や貴族を筆頭に、神に仕える聖職者までもが、単なる儀式の1つとして異世界召還を、安易に捉えていた。神聖な儀式で善い行いだと、決めつけて。神から信頼を得れば、何をしてもいい訳ではない。


 「……な,何と…罰当たりな!…国の代表である王族と、神に仕える聖職者を人質扱いするとは、断じて…見過ごすわけに、参りませんっ!」


グレイソン小父さんは憤慨したのか、鼻息荒い口調で私を悪者扱いした。抑々先に召還されたので、私も報復したのだ。()()()()()()()()変えねば、召還の重さに対する思考は変わらない。そこまでの道のりも、長くなりそうだ。


 「小父さん、貴方…うつけ者(バカ)なの?…貴方自身が先に、私の大切な従姉妹(いとこ)を召喚したのよ!…従姉妹の気持ちも考えず、貴方が突然強引に召喚したくせに、貴方自身が被害者ぶるおつもり?…これは何処の誰が見たとしても、私の従姉妹(ゆあ)が一番の被害者だわ。そして、その召還で大切な人を失ったはずの、彼女の家族や私達親戚も被害者だと、認定されるはず。貴方は被害者ではなく、加害者側の1人よ!」

 「…うっ…………」


グレイソン小父(おじ)さんの剣幕に、私は溜息を()く。暫しの沈黙を破ったのは、有梨那お姉様だ。「あんた、バカ?」と目で告げ、彼以上に怒りを露わにしている。


実際に口にも出しつつ、思い切り見下していた。これほど怒り狂ったお姉様を見たのは、私も…初めてかしらね。まるで『鬼 の 形相(ぎょうそう) 』が相応しいくらい、それに近いものを一瞬見た気がする。余程恐ろしく感じたらしく、グレイソン小父さんもすっかり大人しくなる。


 「…そうだな、貴方の指摘通りだろう。今まで召喚されてきた者が、自分の世界に帰りたがったり、例え訴えなかったりしても、少なくとも帰す努力は必要であると、私は思っている。『帰りたい。自分のいた世界に帰して…』と、号泣する者もいたという国の記録も、残っていたからな…」


自分が同じ立場に立った時、どういう行動を取るべきか。それによって、その人物の人間性が分かると言うが、そういう意味ではグレイソン小父さんは、身勝手な理屈を貫き反省も顧みない、そういう自分本位な異世界人と言えそうだ。


それに対して王子様は、私達側の気持ちに寄り添う形で、同意した。あっさりと自分達の無知を認めた上で、秘匿とされるべき過去の記録を、暴露する。元の世界に帰す気は初めから皆無だ、と知りつつ召還し続けた。それを認めた彼は、弱者の心を知る人だと思う。私の勘は当たったようね。


私とお姉様は、無言で頷く。急に異世界に連れて来られ、不安にならない方がおかしいよ。何か事情でもない限り、家に帰りたいはず。泣き叫んだ人がいても、何もおかしくはないだろう。寧ろすんなり受け入れると思うならば、虫が良過ぎると言えるだろうか。


死ぬぐらいであれば、諦めて異世界で暮らすだろうが、死んで転生したわけでなければ、その意味するところは変わる。帰れるはずなのに帰れない。それがどれほどの苦しみで、どれだけ悲痛な叫びかは、想像よりも遥かに辛いことである。


 「一度召喚されたら、元の世界に帰れない。それがどれほど残酷で、死の宣告以上の苦しみか、()()()()()()()()()理解できないことです。だからこそわたくしは絶対に、帰るつもりでした。人質は…予想外のことでしたが…」

 「………」

 「もし国王が謝罪していれば、起きかったことだと?」

 「そうは申しませんが、深刻であると判断致しました。」


グレイソン小父さんはあまり賢くなさそうだが、セス王子様は私が最終的に言いたいことを、的確に把握して理解していらっしゃるのだろう。他人を思いやることのできる、賢明な王子様であるようだ。あの異世界にいた王族の中で、ただ1人過去の過ちを後悔して懺悔し、未来を見据えることの可能な人。


 「…そうか。もしかして君は、我々を()()()()()()()と、いうこと…か?」

 「……っ!?……」


唇を噛み締めていた小父さんは、王子様の言葉にハッとして、顔を上げる。期待するように私を見るも、私は丸っと無視した。(王子様に)期待したいのは、私の方なんですけれど…ね?


彼らはまだ、知らないのだ。私がどういう家柄の娘で、どうやって逆召喚をしたのかを。異世界をどう罰したいかを。





 

   ****************************






 過去にばかり縛られず、未知の力だけに頼らず、自ら考え行動することは、現代の私達には当たり前のこと。だけど…あの異世界の人々は、過去の栄光に未だ縋っている。未知の力を神の力と過信し、自らの力で努力しようとしない。人間本来の力を出して、未来を切り開こうとも思わない。


 「はい。貴方達を元の世界に帰すだけならば、可能なことでしょう。但し…成功するかどうかは、完全には保証できません。ですから、絶対に帰れるとは申し上げませんことよ。何らかの歪みでも生じれば、失敗するかもしれませんもの。それでもわたくしは、自信を持っておりますわ。」

 「…………」

 「…そうか。やはり…別の世界に行くのは、難しいのだな…」


成功するか失敗するかは、神のみぞ知ることだ。一度成功したとしても一度きり限りで、その後もできるとは限らない。様々なリスク対策を講じ、失敗するリスクを極力減らす、努力をした。


何度も召喚行為ができない以上、危険なリスクがあると知りながらも、たった一度の機会に賭ける。王子様達が異世界に帰るチャンスも、一度しかないのだ。その方が危険なリスクも激減し、成功の可能性も高くなる。私はそう確信するからこそ、自ら自身を信じ皆に()()()()()()()()()


 「はい、その通りですわ。異世界同士を転移するのは、元々簡単な所業ではございません。本来は異世界同士を渡ることなど、禁忌とされるべき課題かと思われます。ちょっとした思い上がりや失敗で、召還された人間が異世界の狭間に、置き去りにされることも有り得るでしょう、から…」


人為的な行動には必ず、結果と成果が付き纏う。人間が召喚する以上は、神の采配だとしても魔法だとしても、神自身が行う召喚とは別物だ。今までは偶々、召喚の儀式が成功した。何度も繰り返すうち、危険なリスクが増えていたら…。その時になって彼らは、どう責任を取る?…それとも責任を取らず、放棄する気?


不可思議な力を持つ異世界に対抗する為、魔法を持たない世界の私達は、科学が齎す結果と成果を利用した。決して簡単な道ではあらず、何度も何度も進退を繰り返し、何代にも渡って実験してきた。


 「「……っ!!……」」


私の告げた『リスク』に、青褪めた王子様達である。小父さんは顔色を失くすほど白くなり、今にも倒れそうだった。リスクも知らぬまま、召還し続けていたのだろうと思えば、呆れてしまう。


 「空間に閉じ込められる可能性を、今まで考えなかったのですね?…そんな状況下で今までよくも『神の思し召し』だと、申せたことですわ。 異世界人(わたくしたち) がどうなろうとも、無関係でしたのね?」

 「「…………」」


今まで運が良かっただけで、失敗するリスクがあったと、漸く知ったのか。今までは反省する気が皆無だった、グレイソン小父さんが()()()()()()()()()()、瞬間であろうか。今までの信仰が、全て崩れ去ったかの如く。


召喚の儀式がどれほど危険か顧みず、別世界の人間の 生命(いのち) を軽く見た。だけどそれが自分の身に起きたことで、自分が空間に取り残されたら…と、考えたのなら。恐怖心から小父さんの身体が自然と、小刻みにプルプル震え出す。王子様もまた、冷や汗を掻いているようだ。


 「…そのような危険を冒したと知らず、結局は私自身が何も…分かっていなかったのだな。本当に許されぬことをした…」


セス王子様は震える声で、頭を畳に着け謝罪した。彼が王族だとしても、彼1人の意見が通るはずもない。だからと言って、彼に何の罪がない訳でもなく、同情はできないししたくない。見て見ぬふりをするのもまた、彼らと同罪だからだ。


王子様が今にも泣きそうな顔で謝罪する中、無言を貫き続けた小父さんが、意を決したように口を開いた。


 「……長年の間私は、召喚が正しい儀式だと信じてきた。カシオン教の偉大な大司教様は、今では神のお告げを聞く、唯一のお方だ。大司教様は私にとって、実の親のようなお方でもあり、国王並び国の民の全信頼を、得ておられた。そんなお方だからこそ、彼の教えを盲信した。しかし、その教えが間違いだったと、否定もしたくはなかった…」

 「カシオン教には信仰の要となるお方が、他にいらしたのね…」


重い口を開いた小父さんの告白は、自らの意志とは別のものが働いたと、断言していた。それが真実だとするならば、タリオン国の信仰の中には、根深い闇もあると思われる。神の声が聞こえることも、真実かどうかさえ判断できない。


 「…誰もが大司教様を、全面的に信じてきた。…いや、今もそうだ。神の声を聞く大司教様は、召還の儀式を神からの思し召しとされ、我が国ではそれを只管信じ込んでいた。今更…取り返しがつかないと、己の疑い迷う心を宥め賺しながらも、元の世界に帰してやれないと知りつつ、我が国の大切な儀式だと言い訳し、ずっと()()()()()()()()()いたのだろう…」


小父さんはギュッと目を瞑り、声を震わせるながら言葉を紡ぐ。本音では小父さんも心の何処かで、疑問を持ちながらも国や民の為だと、自身をも騙してきたのか。遅らせながらの後悔に、涙をほろほろ流し。


 「…召喚がそれほど危ないとは、聞かされていなかった。本当に私は、何て取り返しのつかぬことを…」

 主要登場人物の一部は、まだ未登場ではありますが、取り合えず主人公と異世界人達の正体は、判明しました。何故か言葉(日本語)が通じる理由(?)も、そのうち書けたらと思います。決して、()()()()()()()()()だけではない…?


グレイソン司教も、やっと反省する姿を見せ始めましたが、セス王子様のような人徳者とは言えない人物のようです。今後彼らは暫くの間、日本に滞在することになりそうなので、どういう風に償うことになるのか、そこが重点になるかと。



※主人公のナレーション語りは砕けた言葉使いで、会話時はお嬢様言葉です。

※基本的に振り仮名のある文字は、その時点のみその読み方となりますが、振り仮名のない部分は、普通に呼んでもらって構いません。主人公の名前は、振り仮名のある部分(会話の中)のみ、『ゆあ』読みとなります。

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