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② マル秘計画、作戦開始?

 本日、『誰得』の2回目更新です。今回も、主人公の名前は出ないという、不可思議な展開となりました。次回は…出る(?)かもしれません。

 「神のご意向ならば何でもありとは、随分自己中心的な世界ですね。私達の世界では絶対に、あり得ないことですわ。異世界である被害者の1人として、代表して申し上げましょうか。百歩譲って神のご意志だとして、此方の世界で罷り通ることだとしても、これは()()()()()()()』ですからね。」


神の存在は私自身、否定も肯定もしない。神を信じようと信じまいが、個人の自由である。但し、『召還』に関しては別だ。いくらこの世界の神だろうと、他の世界には干渉できないと思われる。例え神の代理である聖職者だとしても、自らの世界を救う人間を別世界から召喚しろと、神が単なる人間に啓示する?…それならば、神自身がなさるはずでは…?


目の前の聖職者は冷や汗を流し、ごくり…と唾を飲み込んだ。誰1人、私に異議を唱えられないようだった。『誘拐』という文句に驚き慌てふためき、青褪める者の何と多いことだろう。神が誘拐を啓示したと、流石に口に出せないようだ。


初めから分かってはいたけれど、異世界の住人を敢えて試している、私。もし少しでも罪悪感を感じるなら、正直に自らの非を認めただろうに…。未だ無言のまま、何も言わない異世界の人々。罪悪感はあるようでいて、ないのだろう。悪いとは思いつつも、この世界の為だから仕方がない。そう思っていそうだ。


 「当然ながら私の世界に、『召喚』という概念はないですし、魔法のような力など誰も持っていません。それ故に聖女召喚はあり得ないもので、誘拐されたとしか思っていません。昔から不可思議な『神隠し』とされ、残された家族は泣き寝入りしてきたのです。」

 「……………」


安易な甘い考えで、召喚し続けたのだろう。先程まで威張っていた国王も、別世界の現実的な話に、すっかり青褪め固まった。この場に居合わせる貴族達も、召還に関わる宗教関係者達も、他の観客達も皆一様に目を見開き、固まっている。


今まで()()()()()()()()()、国全体で支援していたなんて、どれだけ自らに甘くて緩い世界なのか…と、問い質したい。異世界だから無関係だと割り切り、逆の立場で考えることもなかったのだろう。


 「この世界では誘拐犯を、処罰しない…ようですね。この世界だけ、随分と都合の良い話ですね。召還は神の認める神聖なもの。そんな神様を信じる理由を、是非ともご説明くださいな。」

 「……うっ………」


痛いところを衝かれたようで、誰かが呻き声を上げる。残念ながら、これで終わらせる気は更々ない。誘拐犯を処罰するのは、異世界だろうと同じはず。そうでなければこれほど珍妙な空気に、なるはずもなく。私が納得でき得る説明を、してもらいたいものだ。


 「私の住む世界では、神様を信じるかどうかは、個人の自由なのです。だからこそ貴方方が、どんな神様を信じようと否定はしませんが、無関係な別世界の人間を巻き込み、その人の人生を壊したとすれば、既に許せる範囲を越しています。また残された家族や友人や恋人が、どれほど悲しい想いをしたのか、想像できないようですね。自らが同じ立場に立たされたら…と、()()()()()()()()こうした悲劇は、繰り返されなかったはずなのに…」


ポカンと阿保面を晒す異世界の人間に、私は怒りが抑えられない。神も国も認める聖女召喚が、他の世界では誘拐同然だと言われ、歓喜し盛り上がる国民達までも、言葉を失くすしかなかったようだ。


だからと言って、後悔したり懺悔したりするようには、見えない。その時1人の人物が壇上から降り、私の方に歩み寄る。


 「…ただ謝るだけでは、済まされないことも十分に理解しているが、我が国を代表し心から謝罪しよう。本当に申し訳ないことをした…」


国王達が歓喜する中、ただ1人何か物言いたげに、私を見つめる人がいた。今この瞬間も私から目を逸らさず、後悔を滲ませるようにして唇を嚙む、その人物は…。そして唯一、謝罪を口にした。


加害者側の王族として頭を下げ、謝罪の言葉を口にした。これがこの国の礼儀だろうけれど、日本式の謝罪しか受け入れられない。知らないと理解していても、切にそう思う。立ったまま謝られても、許す気になれないから……


 「私の国では謝罪の時、土下座して相手に誠意を見せます。それが貴方に、できますか?」

 「…どげざ?…それは…どうすれば、良いのだろうか?」


戸惑いながらも、誠意を見せようとする。わたしが見本を見せれば、周りが騒めいたというのに。()の人は、一寸の迷いもなく実行した。()の人の予期せぬ行動に、また周りの人々が固まったけれども。


 「…本当に申し訳ない。我が国の罪は、我々王族の罪でもある。許してほしいとは願わないが、せめて…其方(そなた)の気が済むまで、謝罪したいと思っている。」





 

   ****************************






 「…だ、第二王子殿下、いけません!…王子たるお人が、そのような態勢で詫びては、王族の威厳が保てません!」

 「我が国の王族の威厳など、もう既に無いも同然だ。この娘は、当然の権利を求めただけだ。それだけ大きな罪を、我が国は犯したということだ…」

 「…し、しかし…王子殿下が、為さるべきでは……」

 「では一体、誰がこうして謝罪するのだ?…其方達は謝罪する気も、なかったではないか。本心から謝罪する気もないのに、()()()()()()()()する気か?」

 「…………」


壇上から降りた王子は、私の見本通り土下座した。重鎮と思われる男性が、それを見て慌てた様子で駆け寄り、土下座した彼を立たせようとする。王子は中年男性を鋭く睨みつけ、厳しい言葉で諭した。穏やかな声でありながら、自らが最も謝罪するに相応しいとでも、正すかのように。


大勢の観客が見守る中で、日本式謝罪をする第二王子は、真摯な態度で誠意を見せてくれた。こうした状況でなければ、私も完全に許しただろう。王子自身は何も悪くないけれど、見て見ぬふりをしたのだから、彼も同罪と言える。だからこそ私は彼を、利用すると決めた。


 「貴方は自らの罪を、認めてくださいましたが、少なくとも私の国では、傍観するのも同罪に見られます。既に起きた出来事に謝罪しても、最早手遅れなのです。そして、自らの過ちを認めず謝罪しなければ、非常識で卑劣な人間だと判断されることでしょう。その点では、貴方は尊敬に値する人だと、私は思います。」

 「…貴方の意見は、尤もなことだと思う。どうか…我々に、償う機会を与えてくれないか?…これから一生を賭け、償っていけたら…と思う。」


私は頭の中で、にやりと笑む。私はずっと、()()()()()()()()()()。国王夫妻の息子で、長男ではなさそうな王子が、私に謝罪を申し入れる人物であれば、私の計画はより完璧になる。王子様には申し訳ないけれど……


…やはりこの王子様が、一番適任みたいだわ。後もう1人は当然、あの人に決定したことだし…


私は頭の中で、今後のストーリーを組み立てる。私にとってそれは、得意分野だと言えるだろうか。元々描いていたストーリーに、追加事項を補足し僅か数秒で完成させた。私の計画通りに駒を進める機会が、漸く巡ってきたわけで。これで、私のターンとなった。


 「誠実で心優しい王子様。私の些細なお願いを、聞いてくださいませ。できますならば…私の希望を、叶えてくださいませんか?」

 「…ああ。私に…できることであれば、勿論承諾しよう…」


私はできるだけ、ごく自然に微笑む。相手に警戒心を与えず、自ら進んで受け入れられるように、柔らかく自然な口調で。償う必要のある相手から、優しく微笑みながらお願いをされたら、大抵の者達は受け入れるはずだと、目論んだ。


 「それから、司祭様…にも是非とも、お願いできますか?」

 「…ふむ。王子殿下がご承諾なさったのですから、私も前向きに…検討させてもらいましょう。」


勿論、私を召喚した聖職者の罪が、最も重いと言えるのだから、聖職者の小父さんにもお願いした。敢えて何を希望するか、まだ伝えない。真剣に承諾した王子様と真逆で、王子が承諾したから仕方ないと、隠す素振りもない聖職者は、謝る気が全くないようだ。ほんと性格の悪い、クソ聖職者!


然も口調が一々、恩着せがましいったら…。『前向きに検討』だなんて、自らの非を認めないどころか、謝罪の一言もない。聖職者の職務だから当たり前、とばかりに振る舞う無知な輩なのか。一度、自ら痛い目に合うべきだ。


 「では、少しでも悪いと思ったなら、これを飲んでくださいね。」


私と一緒に召還されたマイバックから、とある物を取り出した。スーパーでよく見かける、栄養ドリンクの瓶を。2本取り出すと、彼らに1本ずつ「どうぞ」と差し出してみる。


王子様は怪訝そうに見ながらも、ちゃんと受け取ってくれたが、聖職者は受け取ろうともしない。眉を思い切り顰め、怪しげな物体だとばかりに警戒して。成人した大人で聖職者なのに、中身は小心者のようだった。聖職者の小父さん、王子様の爪の垢を煎じて飲んでみます…?


 「これは…何なのだ?…中身の正体を、教えてくれないか?」

 「これは単なる栄養ドリンクですので、是非飲んでみてください。私の国ではこれを飲めば、元気になります。まさか…私の単なる好意を、疑ってます?」


聖職者を気遣ったのか、中身は何かと王子が聞いてくる。異世界に栄養ドリンクはないらしく、元気になると説明したら、納得してもらえた。最終手段として、相手の好意を疑うのかと問えば、聖職者も気まずそうに受け取る。


私の分の栄養ドリンクを取り出し、自ら率先して飲む。さすれば彼らの警戒心も溶けて、私の後に続き飲み干した。これで後は仕上げを、待つばかりなり……


 「…美味い。これが、栄養ドリンクなのか…」

 「…これほど美味な飲み物は、生まれて初めてだ…」


如何やら2人とも、お気に召したらしい。もっと欲しそうな顔の聖職者に、笑い出しそうになるも…。さてこれですっかり、()()()()()()()()()だね…?

 召還を正当化して過ちを認めない、異世界の住人達に猛反撃する、主人公の少女というストーリーですが、ここからが本当の勝負となるようです。栄養ドリンクを飲ませてまで、何がしたいのか?…それは次回、判明する予定。



※体調不調により、更新が遅れてしまいました。今年になってから、不幸と言うべきか幸いと言うべきか、色々ありすぎて気分も低迷したことも。只今、山あり谷ありの人生真っ最中なようで、気長に更新をお待ちいただけたら、幸いです。

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