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第四十四話:師弟


2027年7月、早朝。ワシントンD.C.の大統領府地下会議室。冷たいコンクリートの壁に囲まれた部屋は、薄暗い照明が重苦しい空気を一層濃くしていた。長テーブルの中央に座るアレクサンダー・クロフトは、スーツの襟を緩め、鋭い視線で周囲を見据える。隣に立つジェイク・ハドソンは、血と埃で汚れた革ジャンに焰イーグルを下げ、疲労と緊張が顔に滲む。テーブルの端では、黒桐翔人が包帯に覆われた体で座り、目を覚ましたばかりの混乱が表情に残っていた。


アレクが通信機をテーブルに叩きつけるように置き、低く唸る声が響く。

「ハドソン、もう言い訳は聞きたくない。お前がコイツを処理しなかったから龍化は起きた。落とし前をつけてもらう」

部屋の空気が凍りつく。翔人が困惑した顔で口を開くが、ハドソンが先に動いた。焰イーグルを手に握り、アレクを睨みつける。





「しかたねぇな、アレク。お前を今ここで始末すりゃ全て終わる話だろ?」


空気が一変する。アレクが冷笑を浮かべ、手を振ると、部屋の隅に紫と黒のゲートが開いた。異界の瘴気が溢れ、二人の人影が現れる。魔剣を握るシルヴァナと、炎と水を纏ったラグナス——神聖覇連合のS級戦士だ。アレクが低く告げる。

「俺は覚醒者ではないが、異界から奴らを呼び出せる。お前がその気なら、試してみろよ」


シルヴァナが無言で魔剣を振り、ラグナスが水と火の奔流を放つ。ハドソンは焰イーグルを構え、「フレイムショット」で応戦。焰弾が奔流を貫き、シルヴァナの剣を弾くが、二人の連携に押される。翔人が立ち上がり叫ぶ。

「何!? いきなりなんなんだよ!」

ハドソンが振り返り、焦りながらも返事する。

「翔人、逃げるぜ! こいつらに構ってる暇はねぇ」


ハドソンは「フレイムダッシュ」で動き、翔人の腕を掴んでゲートを飛び越える。ラグナスの水流がハドソンを追うが、「インフェルノバースト」で迎撃し、爆炎が部屋を包む。アレクが静かに見守る中、二人は混乱を抜け出し、大統領府の外へ脱出。ハドソンは息を切らしつつ、翔人を連れて夜の街を走る。


どのくらい歩いただろうか。行き着いたのはウルトラゲートのエリアだ。赤紫の光が揺らめくゲートの前で、ハドソンは翔人に向き合って言った。

「翔人、行くんだろ。水瀬が待ってるぜ?」

翔人が目を丸くする。

「師匠、一緒に——」

「ケジメをつけなきゃならねぇ。一旦逃げてきたのはこのためだ。まぁ、真面目に帰ったら本当に殺されるかもしれねぇけどな」


ハドソンの声に僅かな震えが混じる。翔人が食い下がる。

「そんなことが許されるわけねぇよ、なら俺も戻って——」

「いいや、お前は行くんだ。水瀬を助けたいんだろ? その気持ちを優先しろ。俺のことは気にするな」

ハドソンが笑い、肩を叩く。

「行ってこい、翔人。お前ならやれるはずだぜ」


翔人は焰刃を握り、ハドソンの方を振り返る。ハドソンの覚悟と翔人の罪悪感が交錯するが、麗亜への強い意志が胸を燃やす。

「分かった。師匠、また生きて必ず会おう」

ゲートの光に飛び込む翔人。ハドソンは一人立ち尽くし、夜空を見上げた。


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