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第三十八話:禁断のゲート


2027年6月末。ワシントンD.C.のEDAアメリカ本部に戻った黒桐翔人とジェイク・ハドソンは、ヘリから降りるとすぐ管理室へと向かった。夏の夜の空気が重く、訓練場の明かりが遠くにぼんやりと灯っている。本部内の廊下は静かで、足音だけが響き合い、緊迫感を増していた。翔人は焰刃を手に持ったまま、ハドソンの後を追う。頭の中では麗亜の姿と、霜に覆われたウルトラゲートの光景がぐるぐると回っていた。


管理室に到着すると、ハドソンは革ジャンのポケットから通信機を取り出し、上層部への報告を始めた。翔人は壁に寄りかかり、拳を握り締めてその様子を見つめる。ハドソンの声は低く、いつもより硬い響きを帯びていた。


「水瀬麗亜が消えた。昨夜遅く、ウルトラゲートのエリアで最後に確認された。現場は壊滅状態で、霜の痕跡が残ってた。あいつがやったのは間違いねえだろう。そして……そのままゲートの中に入っちまった可能性が高い」


上層部の反応はすぐには返ってこなかった。沈黙が数秒続き、やがて通信機から落ち着いた声が響いた。「了解した。五大国への報告はどうする?」ハドソンは一瞬目を閉じ、深く息を吐いた。


「今すぐ共有する。これ以上隠してる場合じゃねぇ。ウルトラゲートの機密も含めて、全て話すつもりだ」


---


俺は壁に寄りかかったまま、ハドソンの言葉を聞いてた。五大国にウルトラゲートの話を共有する——やっとその時が来たのか。麗亜が一人で動かなけりゃ、こんな急展開にはならなかったかもしれない。胸が締め付けられる思いと、どこかホッとする気持ちが混じり合って、頭が整理しきれねぇ。ハドソンが通信機を手に持ったまま、俺に目を向けた。


「お前も来い、翔人。これから日本支部に直接伝える。日本にとっちゃ水瀬は大事なS級の戦力だ。」


俺は頷いて、ハドソンの横に立った。通信機の画面が切り替わり、EDA日本支部の高橋の顔が映し出される。高橋はいつもの冷静な表情で、静かにこちらを見つめてきた。


「ハドソン、翔人。何かあったな?」

ハドソンが軽く咳払いして、切り出した。

「水瀬麗亜が消えた。昨夜、ウルトラゲートのエリアで最後に目撃されて、その後ゲートの中に入った可能性が高い。現場は設備が粉々に砕かれ、霜が残ってた。あいつの仕業だろう」


高橋の目が一瞬鋭くなった。「ウルトラゲート?」と聞き返す声に、驚きと疑念が混じっている。ハドソンは肩をすくめて続けた。


「そう。ここで初めて明かすが、アメリカが管理してる特別なゲートだ。魔力爆発後に現れたもので、赤紫に青や緑が混ざった禍々しいオーラを放ってる。うちの最強のハンターをそこに派遣したが、半年以上前に消息を絶った。五大国には伏せてた機密だ」

高橋の表情は硬かった。通信機の向こうで一瞬沈黙が流れた。


「なぜ今まで黙っていた?」高橋の声は静かだが、怒りが滲んでる。ハドソンは目を逸らさず、淡々と答えた。

「大統領の判断だ。だが、水瀬が単独で動いた今、これ以上隠してるわけにはいかねぇ。五大国全てに今すぐ共有する。日本にとっても、水瀬は重要な戦力だろ? 俺たちだけでどうにかできる問題じゃなくなった」


高橋が軽く息を吐いて、目を瞑った。「分かった。こちらでも情報を整理して、他の支部に伝える。水瀬がウルトラゲートに入った可能性が高いとなると、急いで動かねばならん。翔人、ハドソン、そちらの状況を逐次報告してくれ」

「あぁ、分かったぜ」俺が答えると、ハドソンが頷いて付け加えた。

「こっちもすぐ準備を進める。ウルトラゲートの詳しいデータも送るつもりだ」


通信が切れると、俺はハドソンに目を向けた。

「師匠、麗亜は……本当にゲートの中なのか?」

ハドソンは腰にかかっているフレイムイーグルに触れながら、低く呟いた。

「霜の痕跡と壊れた設備を考えりゃ、そう考えるのが自然だ。あいつ、一人で何をやろうとしてたんだか……」

俺は拳を握り締めて、歯を食いしばった。

「何でもいい。俺は麗亜を見つけ出すよ。クロノファージが絡んでようが、何だろうが、ぶっ潰してでも取り戻す」


ハドソンは軽く笑って、俺の肩を叩いた。

「その意気だ、翔人。だが、まずは本部で作戦を立てる。大統領への報告が終わったら、すぐ動けるように準備しろ」

「あぁ、分かってる」


---


通信室を出た後、ハドソンは五大国への正式な報告手続きを進め始めた。アメリカ本部内に緊張が広がり、ハンターたちがざわつき始めていた。翔人は焰刃を手に持ったまま、訓練場へと向かう。頭の中では麗亜の静かな笑顔と、霜に覆われたウルトラゲートの光景が交錯していた。彼女が一人で何をしようとしたのか、その覚悟の重さが胸にのしかかる。


日本支部に伝えたことで、五大国の動きが始まる。クロノファージの影が再び浮かび上がるのか、それとも別の脅威が待ち受けるのか。翔人は訓練場で焰刃を構え、心の中で誓った。麗亜を必ず見つけ出す。そして、彼女が背負ったものを一緒に引き受ける。それが、バディとしての俺の覚悟だ。


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