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間話:デート!①


4月中旬のワシントンD.C.は、春の陽気が街を優しく包み、EDAアメリカ本部の訓練場もいつもより静かだった。ジェイク・ハドソンとの過酷な1ヶ月特訓を終えた黒桐翔人は、相部屋の窓際に腰かけ、焰刃を手に持って丁寧に磨いていた。刃に映る光を見つめながら、どこかホッとした表情を浮かべている。隣のベッドでは、水瀬麗亜がアメリカのゲートに関する資料を広げ、静かにページをめくっていた。二人は休息日を迎え、普段の戦闘や訓練の緊張からようやく解放されていた。


翔人が焰刃を布で拭きながら、ふと口を開いた。

「なぁ、水瀬。久しぶりに休日らしい休日だな。この前まで毎日ハドソンに絞られてたのが夢みたいだ」

水瀬が資料から目を上げ、穏やかな声で応えた。

「うん、黒桐の頑張りは遠くからでも分かったよ。ハドソンとの特訓、かなり成果上げたみたいだね」

翔人がニッと笑って焰刃を軽く振った。

「師匠のおかげだよ。ハドソンがいなかったら、俺、今でもウジウジしてたかもしれないぜ」


水瀬がベッドに座り直し、翔人の横顔を見た。ハドソンとの特訓で「戦闘集中・焔」を会得し、魔力制御を一段階上げた翔人。その成長を近くで見てきた彼女は、ふと気になっていたことを口にした。

「ねぇ、黒桐。どうしてそんなに頑張れるの? 君の原動力って、何なんだろう」

突然の質問に、翔人が目を丸くして焰刃を置いた。

「お前、急に何だよ?」

水瀬が首を振って、少し照れくさそうに続けた。

「いや、ずっと気になってただけ。黒桐の強さって、どこから来てるのかなってさ」


翔人はベッド脇のバッグに手を伸ばし、手紙の入った封筒を取り出した。それを水瀬に差し出しながら言った。

「これ、前にも見せたことあったよな。俺には遥って幼馴染がいてさ。あいつからもらった手紙読むと、負けらんねぇって気持ちになるんだよ」

水瀬が封筒を手に取らず、じっと見つめた。

「遥……女の子だよね?」

翔人が軽く笑って頷いた。

「まぁ、そうだよ。子供の頃からずっと一緒に遊んでた幼馴染だ。女の子ってより、家族みたいな大切な存在なんだ」


水瀬が少し目を細めた。翔人が「女の子ってより」と言うのを聞いて、胸の奥に小さな波が立った気がした。彼女は立ち上がり、窓の外に広がる春の街並みを眺めた。

「そっか。でも、黒桐ってそういうとこあるよね。頑張る理由がちゃんとあってさ……もっと君のこと、知りたいな」

翔人が首をかしげて聞き返した。

「もっと知りたいって、それはどういう意味だよ?」

水瀬が振り返り、真っ直ぐに翔人の目を見た。

「うん。ねぇ、黒桐。明日さ、デートしない?」


---


翌朝、部屋の空気がいつもと違っていた。翔人は鏡の前で髪を整え、焰刃をベッドの横に置いたまま、水瀬を待っていた。ドアが開き、水瀬が軽いシャツにデニムというラフな姿で現れると、翔人が思わず息を呑んだ。

「お前、いつもと全然雰囲気違うな……」

水瀬が小さく笑って肩をすくめた。

「そう? たまにはこういうのもいいでしょ。さぁ、行こう」

先に歩き出した水瀬に、翔人が慌てて追いかけた。

「待てよ! どこ行くつもりなんだ?」

「街に出よう。美味しいもの食べて、散歩でもしようと思って」

翔人の胸が初めてのデートに高鳴った。

「デートっぽいな! いいぜ、楽しもうぜ!」


本部を出て街への道を歩きながら、翔人は水瀬の横に並んだ。春の風が二人の間を通り抜け、胸がドキドキしているのが自分でも分かった。

(水瀬が俺をデートに誘うなんて……もしかして、俺のこと好きなんじゃないのか?)

一方、水瀬は翔人の少し緊張した横顔をチラリと見て、静かに思った。

(黒桐の原動力の秘密、もっと解き明かしたい。私もあんな風に強くなれるかな)

春の日差しの中、二人の距離が少しずつ近づき、デートの幕が穏やかに上がった。


---


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