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第二十九話:焔を継ぐ者


3月初旬のワシントンD.C.は、雪が溶け始め、春の兆しが微かに感じられる朝だった。早朝から自主トレをしていた黒桐翔人は地下訓練場の端で汗を拭って息を整えた。クロノファージの幹部戦から数日、あの日の悔しさがまだ胸に残っていた。ジェイク・ハドソンが革ジャケットを脱ぎ、腰に自慢の銃をに差したまま近づいてきた。

「坊主、いつまで落ち込んでんだ? 今日から俺と特訓だぜ。EADを強くするためにも、お前がもっと使えるハンターにならなきゃな」

翔人が焰刃を手に持つと、目を上げた。

「俺にそれだけの価値はあるのか?」

「ウジウジうるせぇな。いいから始めようぜ!」


特訓は朝から夕暮れまで、ハドソンの指導で始まった。初日は「戦闘集中」の見直しだ。ハドソンがフレイムイーグル構えると、軽く足を動かしながら言った。

「坊主、お前の『戦闘集中』が5分しか持たねぇのは魔力の使い方が荒いからだ。原理を教えてやる。体内に散らばる魔力を心臓に集中させて、爆発的な身体能力を引き出す——ここまではお前もやってるな?」

翔人が頷いた。

「あぁ、それでドライブモードに切り替えてる」

「その通り。で、俺はその魔力に炎のエネルギーを上乗せして、さらに強化してる。お前も火属性の使い手だろ? 」

「炎のエネルギー? そんなことができるのか?」

「まずは魔力を感じろ。心臓に集める際、内に秘められた炎を意識しろ。俺は『イーグルアイ』と言って目だけに適用してる。」


ハドソンが「イーグルアイ」を発動すると、緑の瞳が焰のように輝き、「フレイムショット」を放った。フレイムイーグルから焰弾が標的を正確に貫き、焰が残響を残した。

「魔力に火を混ぜて、一点に集中させる。簡単だろ? 爆発的な威力を生むぜ」

翔人が焰刃を手に持つと、目を閉じて魔力を集めた。心臓が熱くなり、全身がドライブモードに切り替わる。炎の熱を意識すると、焰刃から赤い炎が迸った。

「これか!? 『戦闘集中』」

焰刃が輝き、斬撃に炎が混ざったが、制御が甘く、焰が乱れてしまう。莫大な魔力を一瞬で消費した気がした。

「くそっ、なんか出たけど、すぐに消えちまった……」

ハドソンが豪快に笑った。

「いい感じだぜ、坊主。伸び代はデカいぞ。まだ未完成だが、方向性は掴んだ。地味だが毎日続けようぜ」


その日から1ヶ月、ハドソンと翔人の特訓が続いた。朝は魔力制御を学び、昼は模擬戦、夜は飯を食いながら語り合った。ハドソンは忙しい中、時間を作って付き合った。ある日、マーカス、リサ、ビクターが模擬戦に加わり、翔人を鍛えた。マーカスが拳を構え、豪快に突進してきた。

「お前、俺の拳を止められるか?」

翔人が「戦闘集中」を発動し、焰刃で受け止めるが、炎が散って押された。リサが風を纏い、短剣で横から切り込んだ。

「動きが雑だよ、黒桐!」

ビクターが影からナイフを投げ、焰刃で弾くが、足がもつれて転んだ。ハドソンが笑った。

「坊主、まだまだだな。けど、昨日よりはマシだぜ」


夜、ハドソンと翔人は食堂でステーキを食った。ハドソンがナイフで肉を切りながら言った。

「お前が強くなれば、EAD全体の戦力としては大幅に強化されることになる。実は、日本支部からお前の龍化についての資料が来ててな。目を通してみたが、あんな話は聞いたことがない。だが、自分の力を制御できないってのは大問題だ。そんな不確かな力に頼るな。お前はそんなに弱くないはずだぜ」

翔人がステーキを口に運び、目を輝かせた。

「師匠、マジでかっけぇぜ。紅葉と気が合いそうだぜ。アイツも熱いタイプだからさ」

ハドソンが満足げに笑った。

「紅葉ってのは鬼の末裔か? いつか会ってみたいぜ。俺とお前で鍛えた力、見せつけてやろう」

翔人はハドソンを師匠として慕うようになり、1ヶ月で魔力制御と火属性を深く学んだ。技の威力と敏捷性が上がり、あの技を「戦闘集中・焔」と命名した。


一方、水瀬は翔人の頑張りを気にかけつつ、別の動きを見せていた。本部の資料室で、アメリカのSSS級情報を探っていた。深夜、薄暗い部屋でファイルを手に持ち、呟いた。

「SSS級……やっぱりハドソンは何か隠してる」

資料には「未知のゲート」についてと「SSS級」の記録が書かれており、彼女の探求心を刺激した。


訓練場の端で、翔人とハドソンは語り合った。

「師匠、1ヶ月でだいぶ変わったぜ。今ならA級ゲートも1人で攻略できそうだ。」

ハドソンが肩を叩いた。

「その意気だ、翔人。見違えたぜ」

ハドソンとの特訓の日々は終わりを迎えたが、2人の絆、そしてSSS級の存在はこれからの物語を大きく動かすことになる。


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