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第二十四話:S級ゲートの戦嵐


2027年2月中旬、ワシントンD.C.のEDAアメリカ本部は静かな朝を迎えていた。黒桐翔人は相部屋のベッドから跳ね起き、窓の外に広がる異国の街並みを睨んだ。水瀬麗亜が隣のベッドで静かに起き上がり、無表情のまま身支度を整える。休息日が終わり、S級ゲートへの出撃が待っていた。日本から呼ばれた理由がこの一戦にあると知り、翔人の血が滾った。

「今日が本番か。さっさと倒して日本に帰ろうぜ」

水瀬が鋭い瞳で応じた。

「うん、でも油断は禁物だよ」


会議室に集まったのは、翔人と水瀬、そしてアメリカの精鋭たちだ。ジェイク・ハドソンが革ジャンを羽織り、フレイムイーグルを腰にしまいながらニヤリと笑う。

「お前ら、準備はいいな? 今日のS級ゲートはただのテストじゃねぇ。お前らの実力、しっかり見せてもらうぜ」

彼は戦闘に参加せず、後方で観察役に徹するつもりだ。S級3人も揃う。マーカス・ジャクソンは無言で拳を鳴らし、リサ・カーターが腕を軽く回し、ビクター・リードが静かに目を光らせていた。

「S級か……どれだけやべぇんだ?」

翔人が呟くと、ハドソンが肩をすくめた。

「やべぇなんてもんじゃねぇよ、坊主。クロノファージの奴らが潜んでる可能性がある。行くぜ、マサチューセッツ州だ!」


専用ヘリで現場へ向かう。マサチューセッツ州の森に現れたS級ゲートは、禍々しい赤黒い光を放ち、周囲の木々を枯らしていた。ヘリが着陸し、ハドソンは後方に下がり、フレイムイーグルを手に観察態勢を取る。翔人は焰刃を帯に差し込み、地面に飛び降りた。ゲートから溢れ出すのは、Aランクの装甲巨人型9体と、同じくAランクのクロノファージ末端個体4体——黒いローブに仮面、異界語を呟く人型だ。

「ガルナ・ゾルディス……クルマ・ヴェク……」

「来たぜ!」

翔人は即座に「戦闘集中」を発動。呼吸を整え、心臓に魔力と熱を集中。一気に解放し、全身が熱く脈打つ。筋力が上がり、視界がクリアになり、焰刃が微かに震えた。

「『霧影迅』!」

水を纏った足で加速し、巨人型の膝を狙う。焰刃が甲殻に突き刺さるが、硬さに弾かれ、刃先が僅かに欠ける。浅い傷しか残せず、巨人が咆哮を上げてハンマーを振り下ろす。

「くそっ、弾かれたか!」

咄嗟に跳び下がり、ハンマーが地面を叩き割る衝撃波で雪煙が舞う。翔人は焰刃を構え直し、息を整えた。


アメリカS級チームが同時に動く。マーカス、リサ、ビクターが一斉に「戦闘集中」を発動。3人の魔力が爆発的に高まり、空気が歪む。マーカスが巨体を鋼のように固め、巨人のハンマーを拳で受け止め、そのまま膝蹴りで甲殻を砕く。破砕音が森に響き、巨人が膝をつく。リサが嵐のような風を纏い、一瞬で巨人2体を切り裂く。両手に握られた短剣が風を纏い、甲殻を紙のように裂き、血と肉片が雪に飛び散る。ビクターが影から飛び出し、動体視力を極限まで高め、巨人の首を瞬時に切り落とす。焰刃より細いナイフが首筋を滑り、鮮血が噴き出す。Aランク9体が一瞬で蹴散らされ、森に静寂が訪れた。

「すげぇ……こいつら、完璧に使いこなしてやがる!」

ハドソンが後方から声を張り上げた。

「さすがだぜアメリカン! 次はお前らの番だ、坊主!」


末端個体4体が一斉に黒い波動を放ち、地面が裂ける。

「ゾルディス・タルナ!」

波動が四方から迫り、翔人は跳び下がるが、肩をかすめて血が噴き出す。焰刃を構え直し、「戦闘集中」を再発動。魔力が減る中、心臓が熱く脈打つ。

「『焔水連刃』!」

焰刃から放たれた炎と水の連続斬りが末端個体1体を襲う。黒いバリアが一瞬揺らぎ、水瀬が援護に回る。

「ここは私に任せて!」

彼女の鋭く静かな声が響き、「氷刃乱舞」を放つ。鋭い氷の刃が末端個体のバリアを連射で叩き、バリアが砕ける。翔人の斬撃がローブを切り裂き、焰刃が仮面を貫いて黒い血が噴き出し、1体が倒れた。

「1体目だ!」


別の末端個体が剣を抜き、異界語を呟く。

「クルナ・ヴェクディス!」

波動が広がり、地面が歪む。翔人が「蒼炎衝」で応戦し、炎と水の螺旋がバリアにぶつかる。水瀬が「凍壁の守護」を展開し、氷の盾で波動を防ぎつつ、「氷刃乱舞」で追撃。バリアが揺らぎ、2体目が膝をつく。翔人が焰刃を振り下ろし、首を落とす。黒い血が雪に染まり、2体目が倒れた。

「よし、2体目だ! 俺はまだいける!」

だが、魔力が急速に減り、息が切れる。焰刃を握る手が震え、視界が一瞬揺らいだ。


残る2体の末端個体が波動を増幅し、森全体が歪み始める。

「ゾルディス……ヴェク!」

ゲートがさらに光を増し、新たな魔物が溢れ出す。Aランクの装甲巨人型18体が追加され、森が戦場と化した。マーカスが巨人に突進し、拳で甲殻を砕く。リサが風を纏い、3体を瞬時に切り裂く。ビクターが影から奇襲で2体の首を落とす。だが、巨人の数が多く、末端個体の波動も止まらない。

「くそっ、数の暴力って感じだな」

翔人が焰刃を手に息を整え、「戦闘集中」を再発動。魔力が減る中、心臓が熱く脈打つ。焰刃を振り上げ、巨人の膝を狙う。刃が甲殻を削り、巨人が膝をつくが、ハンマーが振り下ろされ、咄嗟に跳び下がる。衝撃波で雪が舞い、視界が一瞬白くなった。


水瀬が「氷嵐の制圧」を放ち、広範囲に氷の嵐を巻き起こして巨人を牽制する。

「黒桐、ここからは持久戦だよ!」

彼女の声に冷静な刃の響きが宿り、氷の嵐が巨人の動きを鈍らせる。翔人が「焔水連刃」で応戦し、焰刃が巨人の腕を切り裂く。血が噴き出し、巨人が倒れるが、末端個体が新たな波動を放つ。

「ガルナ・タルナ!」

波動が広がり、翔人と水瀬が吹き飛ばされる。雪に叩きつけられ、翔人の焰刃が手から滑り落ちた。

「くそっ、まだだ!」

焰刃を拾い上げ、再び構える。魔力が底をつきかけ、息が荒くなる。末端個体2体が剣を構え、波動を重ねて放つ。森が震え、巨人の残りが一斉に襲いかかってきた。


アメリカS級3人が再び動き、マーカスが巨人の群れに突進、リサが嵐で応戦、ビクターが影から奇襲をかける。だが、末端個体の波動が止まらず、ハドソンはフレイムイーグルを手に静かに見つめていた。

「いいぜ、坊主。お前らの魂、見せてもらおうか!」

戦塵が舞う中、翔人は焰刃を、水瀬は「氷の加護」を纏い戦い続ける。翔人が末端個体を睨み、息を整えた。

「クロノファージ……全員残らずぶっ殺してやる!」

雪と血にまみれた森で、熱と氷が嵐と戦嵐を繰り広げる。S級ゲートの脅威は、まだ終わりを見せなかった。


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