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第二十三話:新大陸の戦塵


2027年2月初旬、ワシントンD.C.近郊のダレス国際空港に専用機が着陸した。黒桐翔人は機内から降り立ち、冷たい風と異国の空気に目を細めた。水瀬麗亜が隣に立ち、静かに周囲を見渡す。長いフライトを終え、足を踏み入れたアメリカの大地に、翔人の胸が熱く高鳴る。

「着いたぜ……ここがアメリカか」


空港のターミナルに足を踏み入れると、予想を超える豪華な出迎えが待っていた。EDAアメリカ本部の重鎮たちが並び、黒いスーツに身を包んだ男たちがずらりと立っている。その中央に立つのは、ジェイク・ハドソン——アメリカのSS級ハンターだ。革ジャンにサングラス、腰に特製銃「フレイムイーグル」を下げた姿は、S級を超えた貫禄を放つ。隣には通訳の女性——ショートカットの金髪で、キビキビした動きのエージェント、サラ・ミラーが立っていた。

「Welcome to America, Kurogiri and Minase! I’m Jake Hudson, top dog here—SS-rank and damn proud of it. Glad to have you on board!」

ハドソンが陽気に手を振るが、翔人は英語が分からず首をかしげる。サラが日本語で続ける。

「アメリカへようこそ、黒桐さん、水瀬さん。私は通訳のサラ・ミラーです。ジェイク・ハドソン、こちらのSS級トップで、大統領の親族でもあります。あなたたちを迎えられて嬉しいと仰ってます」

翔人がニヤリと笑う。

「へぇ、SS級で大統領の親族かよ。すげぇな。よろしくな、ハドソン」

水瀬が英語で返す。

「Nice to meet you, Hudson-san. We’ll cooperate if our strength is needed.」

彼女のそこそこ流暢な英語に、ハドソンが目を丸くし、サラが通訳する。

「よろしくお願いします、ハドソンさん。私たちの力が必要なら協力します、と仰ってます。彼女、英語が話せるんですね」とサラが驚く。翔人も少し驚いたが、水瀬が冷静に言う。

「少しだけね。任務で必要だから覚えたよ」


専用車でEDAアメリカ本部へ向かう途中、翔人は窓の外を眺めた。高層ビルが立ち並び、異国の喧騒が新鮮だ。車内でハドソンが陽気に話し続けるが、サラの通訳なしじゃさっぱり分からない。

「水瀬、アメリカってこんな感じなのか?」

「初めてだからわからない。でも、日本より騒がしいね」

少し困惑している水瀬に翔人は苦笑した。


本部に到着すると、巨大な近代的なビルがそびえ立つ。内部は無機質で、モニターや装備が整然と並ぶ。ハドソンが会議室に案内し、重鎮たちと顔を合わせた。S級ハンターが3人——背の高い黒人男性、ショートヘアの女性、瘦せた中年の男——が並ぶ。

「These are our S-ranks: Marcus ‘Iron Wall’ Jackson, Lisa ‘Stormbreaker’ Carter, and Victor ‘Shadow Fang’ Reed. I’m the SS-rank above ‘em. You two make it five strong!」

サラが通訳する。

「こちらがS級です。マーカス・ジャクソン、通称『鉄壁』、リサ・カーター、通称『嵐砕き』、ビクター・リード、通称『影牙』。ハドソンはその上のSS級です。あなたたちで5人になります、と仰ってます」

翔人が目を輝かせる。

「SS級ってすげぇな。俺も負けてられねえ」

水瀬が英語で返す。

「Pleased to meet you all. We’ll do our part.」

「皆さん、よろしくお願いします。私たちの役割を果たしますよ、と仰ってます」とサラが補足訳する。ハドソンが笑う。

「I like your fire, kid! Let’s get you settled in!」

「君の熱さが気に入ったぜ、坊主! 部屋に案内するよ、と仰ってます」とサラが訳す。


本部内の居住区に案内され、翔人と水瀬は相部屋に割り当てられた。シンプルな部屋にベッドが二つ、机とクローゼットが並ぶ。翔人が荷物を放り投げてベッドに腰掛ける。

「相部屋かよ……まぁ、水瀬がいいならいいんだけど」

「君となら大丈夫だよ。私も信頼してるから」

心なしか今日の水瀬はいつも以上に優しく感じた。

ハドソンがドアから顔を出し、サラが通訳する。

「Get some rest tonight, folks. Tomorrow’s a big day!」

「今夜はゆっくり休んでください。明日から忙しくなりますよ、と仰ってます」


その夜、翔人はベッドで横になり、目を閉じた。日本での日々が頭をよぎる。水瀬は部屋の隅で資料を読み、英語のメモを書き込んでいた。彼女が立ち上がり、部屋を出た瞬間、廊下からアメリカンチームの会話が漏れ聞こえた。水瀬が耳を澄ます。

「Hey, heard anything from the boss lately?」

「Nope. Last we knew, she’s been soloing that Ultra Gate for six months now. No word since.」

「Man, if she doesn’t come back, we’re screwed against these Chronophage freaks.」

水瀬が部屋に戻り、翔人に小声で言う。

「黒桐、今、面白い話を聞いたよ。アメリカにはもう一人SSS級ハンターがいるみたい。『ウルトラゲート』って場所に単身で挑んで、半年間戻ってないんだって」

翔人が目を丸くする。

「え、なにそれ。ハドソンよりも強い人がいるってことか?てか、ウルトラゲートって何だ?」

「分からない。でも、クロノファージに関係してるかもしれないね。私たちも調べられることは調べてみよう」


翌日から、翔人と水瀬は現地A級ハンターとゲート処理に回った。初日はバージニア州のA級ゲート。森に現れたゲートから、Aランクの強化狼型魔物3体——通常より硬く速い——とCランクの装甲蜘蛛型10体が溢れ出す。現地のA級ハンター——大柄な男ジョンと小柄な女性ケイト——が援護に回る。

「Let’s clean this up quick!」

ジョンが叫び、ライフルで蜘蛛を一掃。装甲が硬く弾丸が跳ね返るが、彼の連射が動きを止め、ケイトが電撃でまとめて焼き払う。翔人が突進した。

「『霧影迅』!」

水で加速し、狼の喉を焰刃で切り裂こうとするが、硬い毛皮に弾かれ浅い傷しか残せねぇ。

「くそっ、!」

水瀬が氷の刃で蜘蛛を援護し、冷静に指示する。

「黒桐、狼の動きが速いよ。左から狙って」

「分かってる! 『蒼炎衝』!」

炎と水の螺旋が狼を貫くが、完全には倒れない。すると、ジョンがライフルを捨て、ナイフで狼の首を一閃。ケイトが電撃で残りの2体を瞬時に焼き払う。ゲートが消え、翔人が息を吐く。

「すげぇ速さだな……アメリカのA級、やるじゃん」

ジョンが笑う。

「You’re fast too, kid! But leave the big ones to us!」

「君も速いね、坊主! でもデカいのは俺たちに任せろ、と仰ってます」とサラが訳す。


その週、翔人と水瀬はA級ゲートを次々と回った。メリーランド州で装甲巨人型、ペンシルバニア州で飛行人型魔物と戦い、現地ハンターの速攻に圧倒される。S級3人も顔を見せ、マーカスが鉄壁の防御で魔物を抑え、リサが嵐のような攻撃で一掃、ビクターが影から奇襲で仕留める。ハドソンは銃をぶっ放し、SS級の貫禄を見せつけた。

「すげぇ……これがアメリカの力か」

「私たちも負けてられないでしょ」と水瀬が呟く。


1週間が終わり、本部に戻った夜、ハドソンが声をかけた。

「You two held up damn well! Tomorrow’s rest day, but next up’s an S-rank gate. Ready to step up?」

「君たち、よくやってくれた! 明日は休息日だ。次はS級ゲートだぜ。準備できてるか?と仰ってます」とサラが訳す。翔人がニヤリと笑う。

「待ってましたって感じだ。焰刃の出番だな」

水瀬が頷く。

「了解。全力でいこう」

アメリカの地で、翔人と水瀬の戦いが本格化する前夜、クロノファージの影が迫る中、熱と氷のコンビが新大陸で一息ついた。


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