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間話:剣王の覇道③

 

 2025年12月、ロシアの荒野。

 硝煙と血が戦場を覆う中、ミラ・シュヴァルツリリーがアメリカ連合の前線を壊滅させていく。


 戦車が爆発し、覚醒者が倒れるその時、地平線にダークブラウンのレザージャケットとカウボーイハットが現れた。

 ジェイク・ハドソンだ。

 彼は肩の傷を押さえながら豪快に笑い、その手には『フレイムイーグル』が輝いていた。赤い本体に金色の装飾が炎のように渦巻き、まるで熱を帯びたような異様な迫力を放っていた。


「おいおい、女剣士。お前が誰かは知らねぇが、この俺様が相手だぜ」



 ミラは青い目を鋭く光らせ、剣を構えた。


「その自信、打ち砕いてやろう」


 戦場に緊張が走り、二人の戦いが火蓋を切った。


 彼はイーグルアイで視界を研ぎ澄ませ、「フレイムショット」を放つ。焰弾が高速連射され、赤い炎が砂塵を焼き払う。

 ミラは異次元格納から「魔剣・夜闇(ナハトドゥンケル)」を引き抜く。


夜闇の守護(ナハトシュッツ)


 黒い刃から闇が広がり、焰を飲み込む。

 炎が消え、舌打ちが漏れる。


「どこから剣を出しやがった...?」


 彼は一瞬目を丸くしたが、すぐさま「フレイムダッシュ」を発動。焰の軌跡を残しながら側面へ回り込む


「お次はこれだぜ、『炎嵐弾』!」


 ハドソンが銃を構え直すと、炎が渦を巻いてミラを包み込む勢いで迫る。

 彼女は「聖剣・黎明(モルゲンデンメルング)」を握り直し、一閃


光翔の切刻(リヒトシュニット)!」


 眩い光が炸裂し、炎の渦を切り裂くと、その余波がハドソンを直撃。レザージャケットの裾が焦げ、彼が肩を押さえて苦笑した


「やるじゃねぇか!」


 ハドソンが「バーニングリロード」でフレイムイーグルをチャージ。

 銃口から焰が溢れ、次の攻撃の準備を整える


「一気に畳み掛けるぜ! 『インフェルノバースト』!」


 焰弾の集中砲火が地面を抉り、砂塵が舞う。

 ミラは異次元格納から「蒼嵐(ブラシュトゥルム )」を手にし、青い刃が風を纏う。


舞空の波風(ヴィントヴェレ)!」


 風と水が渦巻き、遠距離の焰を散らす。霧散した炎に目を見張り、「厄介な技だな...」と呟く。


 ミラは隙を見逃さず、「魔剣・夜闇」を手に突進


夜闇の束縛(ナハトフェッセル)


 闇がハドソンの足元を絡め取り、彼の動きを封じる。焰が弱まり、ハドソンが歯を食いしばった


「ちっ、動けねぇ...」


 だが、彼は諦めず「フレイムダッシュ」で強引に脱出。焰の軌跡が闇を焼き、距離を取った。



 ハドソンは息を整え、口元が吊り上がる。


「おもしれぇ。お前なら全力をぶつけても大丈夫そうだな」


 彼はフレイムイーグルを両手で構え、全魔力を込めた


「いくぜ、フレイム・ノヴァ!!!」


 銃口から放たれた炎弾が一瞬で膨張し、新星のように輝く炎の球体を形成し、ミラを飲み込もうとする。戦場が灼熱に包まれ、アメリカ軍の兵士すら後退した。


 その威力を十分に確認した彼女は目を閉じ、深呼吸。


無別の吸舞(ザウクタンツ)!」


「魔剣・夜闇」が渦を巻き、灼熱を吸収。焰が闇に消え、熱が冷める。

 ハドソンはその光景をみて絶句した。


 ミラは「聖剣・黎明」を握り直し、一気に間合いを詰める。


「私の剣は、私自身だ——黎明の裁き(モルゲンゲリヒト)!」


 彼女の重い一撃が肩を貫き、「フレイムイーグル」が地面に転がる。


「....完敗だ」


 焰が消え、戦場に静寂が戻った。ミラは剣を下ろし、静かに言った



「もはや誰も私の相手ではない」



 ハドソンが肩を押さえつつ立ち上がり、苦笑した。


「あんた、化け物だな。でも、気に入ったぜ。俺達の負けだ」


 彼の敗北と共に、アメリカ連合の前線が崩壊。彼女の圧倒的な力が戦場を制した瞬間だった。




 アメリカ連合はついに降伏を宣言し、2025年12月末、世界大戦は終結した。

 ミラ・シュヴァルツリリー一人の力で、ドイツが強国へと押し上げられた瞬間だった。


 アメリカ、ロシア、日本、ドイツ、中国が世界五大国として浮上し、新しい秩序が生まれた。




 戦争終結後、即座に地球防衛機関(EDA)の発足が決まった。主要五カ国が協力し、ゲートと覚醒者の管理を目的とする組織だ。

 ミラはドイツ支部のリーダーに指名された。

 一方、アメリカはEDAの本部を自国に設置することを強く主張。交渉の場で、ドイツの高官が苛立ちを隠さず声を上げた


「なぜアメリカでなければならないんだ?」


 アメリカの大統領は降伏したのにも関わらず、やけに高圧的だった


「我々のインフラと資源が最適だ。文句は言わせない」


 交渉の末、アメリカに本部が置かれることになった。ミラは剣を手に苦笑した


「まあいいさ。私には剣があれば十分だ」




 EDA発足の会議に、リンネ・セレンディアも姿を見せた。異界のエルフ村出身の戦士だ。長い銀髪を風に揺らし、彼女はカタリーナを静かに見つめた


「剣王、ミラ。噂以上の力だね」


 ミラが剣を手に軽く笑った


「異界で生き抜いた証さ」


 リンネが微笑み、頷いた


「貴女の剣は、確かに世界を変えた」


 二人の間に静かな絆が生まれた瞬間だった。





 そして日本支部の設立が決まった。

 2025年12月のトーナメント後、水瀬麗亜が学校から消えた時期と重なる。彼女は日本支部に加入するため、政府の指示で動いていたのだ。


 日本支部の会議室、2026年春。黒い髪に青いメッシュが映える少女が立ち上がった。

 華奢な体つきに、儚げで目を奪うような美しさがある。だが、その表情は無機質で冷たい


「水瀬です、よろしく」


 その声が響き、日本支部がこれから動き出す気配を漂わせた。



 EDAの会議で日本支部の新たなメンバーの報告を受けたミラは、水瀬の資料に「S級ハンター」の肩書を見つけた。

 世界にはまだ会ったことのない頼れる味方がいる。

 それを知り、内心で安堵した彼女だが、同時に闘志を燃やす。剣を握り直し、固い決意を胸に刻む。


 EDAドイツ支部のリーダーとして、異界の脅威を取り除き、世界を平和へと導いていく使命を再確認した。




 戦争は終わり、ゲートの脅威は新たな形を取って世界に残った。ミラ・シュヴァルツリリーは剣王として、異界での6年と地球での戦いを胸に刻み込んだ。


 何千何万回と剣を振るい、自分を信じてきた努力が、彼女をここまで導いたのだ


「私の力は人々を守るためにある」


 彼女の剣が静かに光り、世界を守る新たな戦いの幕が上がった。リベリオン・コードの物語は、終わりではなく、始まりを迎えたのだ。


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