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【SS追加】《☆》さあ、婚約破棄いたしましょう


⭐︎さらっと読めるショートショートです。


「アデリーナ! 貴様とは今日で婚約破棄だ!」


 王立学園の卒業パーティーで、ルーク第一王子の声が響いた。

 皆の視線の集まる先には、キャロル・モーティ男爵令嬢を腕に絡ませたルーク第一王子が、婚約者のアデリーナ・バロウズ侯爵令嬢に対峙していた。


「はい、承りました」

 一礼して去ろうとするアデリーナに

「ま、待て! 婚約破棄の理由は貴様がキャロルを虐めたからだ!」

と、慌てて言い募るルーク。


「左様ですか」

 で? まだ何か?、という態度にキャロルが

「酷いですぅアデリーナ様……」

と、悲しそうな声で言い、胸を更にルークの腕に押し当てる。

「キャロルに謝罪しろ!」

「申し訳ございません」


 へ?

と、会場中の人間が思った。


「あ、謝ったか。貴様も己の過ちを認めたか!」

 侯爵令嬢が公衆の面前で謝罪という屈辱を受け入れた事に勝ち誇るルーク。

「過ちって言うか、何を謝罪するべきなのか分からないけど、例えばデザートを一番最後に食べるって知らない子供には、『プリンを最初に食べさせてくれなかった』というのが虐めになりますものね。キャロル様にもそんなのがあったんだろうなぁと」

「そ、そんな、軽い感じで!」

「プリン……?」


 プリンと婚約破棄って等価? と会場の人たちが頭をひねっていると

「わ、私はそんなお馬鹿じゃありませんわ!」

と、キャロルが切れた。

「ええっ? 自覚されてなかったんですか! 蜂蜜と蜜蜂の違いってわかります?」

「同じでしょう!」


 会場が凍り付いた。


「そんな事など知らなくても王妃になれる!」

と、ルークがフォローするが、いやいや、そんな事も知らないで王妃になれるわけないでしょうと全員が心の中で突っこむ。


 こりゃあ、王太子の座は第二王子に行きそうだ……、と皆がルークを見る目が冷たくなったのを察したルークは

「ア、アデリーナよ。反省したのなら貴様を側妃にしてやろう」

と言った。

「え? 嫌ですよ」

 即答するアデリーナ。


「何故だ! 私の執務を代わりにするのが好きだろう?」

 執務を代わりにさせてたのか……。

「はい。とても楽しいので本格的に学ぼうと、帝国のアカデミーの経済部門に入学する事にしました」

「アカデミー!?」


 帝国ばかりか大陸中から入学を望む者が押し寄せる最高学府だ。我が国の人間が合格した事は未だに無い。


「どういう汚い手を使って合格したのだ!」

「……ルーク様、それは帝国への侮辱になります」

「うっ……。しかし、アカデミーを受験したなど聞いてないぞ。いつそんな事を決めたのだ」

「ルーク様がキャロル様と一線を越えた時です。これは婚約破棄されるな、と思いまして」


 周囲の視線がますます冷たくなる。

 窮地になったのを自覚したルークは、側妃というアイディアは悪くないのでは、と気付いた。アカデミー卒の女を妻にした男というステイタスを得られたら、国王として箔がつく上に、執務を彼女に押し付けられるではないか。


「分かった。アカデミーの卒業まで婚姻は待とう」

「いや、もう婚約破棄してますよ?」

「ならば、再び婚約しよう」

「キャロル様はどうなさいますの」

「う……」

 ルークを睨み付けてるキャロル。これでアデリーナと再婚約などしたら、愛想をつかして去って行くだろう。

 そして、令嬢の操を奪って捨てた王子として貴族たちからそっぽを向かれてしまう。

 誰を優先したらいいのだ。


 苦悩しているルークに、アデリーナが助け舟を出した。

「分かりました。帝国から帰ったら側妃となってルーク様を支えましょう。私は執務ができたらいいので、婚約はキャロル様となさって、正妃にお迎えください」

「良いのか!」

「ええ。但し、ちゃんと国王陛下の立ち会いの下で契約書を作成してくださいね」

「分かった!」

「ありがとう、アデリーナ様!」


 おかしな断罪劇は、婚約破棄を言い出した二人の喜びの声で終わった。









 それから間もなく、アデリーナは国王陛下立ち会いで作成された契約書を持って帝国へ旅立った。


 アカデミーに入学して優秀な成績で卒業。そのままロイヤルコース、学士コース、修士コースと進み、第二王子が国王となった母国にアデリーナが帰国したのは15年後だった。帝国で学んだ知識と実践で得た多数の人脈、そして夫と子供たちと共に。


 キャロルの家に婿入りしてたルークが契約違反だと騒いだが、

「契約書には、何年後に帰国すると書いていませんでしたでしょう? 国王陛下にも、気が済むまで学んでこいと言われましたわ。それに、私が他の人と結婚してはいけない、なんて契約もしてません」

と、不思議そうに返された。

「父上め……」

 きっと、「帰国しろ」と出した手紙も握り潰したのだろう。


「でも、お互い好きな人と結婚できて良かったですわね」

と、楽しそうに笑うアデリーナに、いや、おかげで王位が……とは言えないルークだった。



 その後アデリーナと夫は国王に重用され、張り切って国のために働いたのだった。


         原案 書庫裏真朱麻呂様


「そう言えば、以前アデリーナ様に蜂蜜と蜜蜂の違いを聞かれた事がありましたわ」


 王宮の私のプライベートルームで、紅茶に蜂蜜を入れてもらったキャロルはアデリーナを思い出したようだ。

「蜜蜂って、蜂の事でしたのよ! あの怖い虫がまさか蜂蜜を作っていたなんて! ルーク様、知ってました?」

 

 そんなキャロルに聞いてみることにした。

「乳牛と牛乳の違いは分かる?」

「分かりますわ! 紅茶に乳牛を入れるとミルクティーになりますの!」

「じゃあ、嫁入りと婿入りの違いは?」

「同じです」

「いや」

「お嫁さんが私で、お婿さんがルーク様なら、どちらでも同じです」

「………」


 弟が王太子になった。

 頼みの綱のアデリーナからは何の連絡も無い。

 父から、キャロルの家に婿に行けと言われた。まるで厄介払いみたいだ、と思っていたのだが。


「ルーク様は、お嫁さんが私だけじゃダメですか?」

「いや……十分だ」


 アデリーナがいなくては国王になれないのなら、初めから私には荷が重かったのだろう。


「男爵家に婿入りしたら、キャロルが紅茶にたくさん蜂蜜を入れられるよう、頑張って働くよ」

「乳牛もですよ!」

「あ……ああ」



 それは勘弁してくれ。



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2024年11月17日 日間総合ランキング 15位

ありがとうございました(≧▽≦)

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