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美食家のフェンネルティー(5)

 断食三日目。


 最終日、何とかたどり着いた。二日目は下痢やニキビで大変だったが、三日目になると、慣れてきた。


 ニキビも落ち着き、頬も少しツルツルとしてきた。それにコリンアが言っているように、頭も冴え、最終日の神学の座学もスポンジのように知識が入ってくる。


 レーネの神学を聞きながら、本当に満たしたいものは、まだ分からないと思う。それでも、不思議と食欲も落ち着いてきた。フェンネルティーの効能だろうか。


「よし、これで断食道場の座学も全て終了だ。今まで大変だった。ご苦労だった」


 レーネは珍しく頭をさげ、お礼も述べていたが。


「頑張った伯爵夫人とコリンナには最後、お楽しみの回復食がある。食堂で待っていてくれ」


 コシャルロッテはワクワクしつつ、コリンナと一緒に食堂で待った。


 今までがスープとお茶しか飲めなかった。食欲が落ち着いているとはいえ、今はこの回復食が楽しみ。ワクワクし、シャルロッテの頬も緩む。


「ねえ、コリンナ。回復食って何かしら。とても楽しみよ」

「私もですよ! 今は何でもご馳走です!」


 普段クールなコリンナだったが、今は子供のように無邪気だ。


 そうこうしているうちにレーネがお盆を抱えてたってきた。まずは食前にフェンネルティー。それからお祈りをし、スープ、温野菜、パンが続くという。


「久しぶりの食事、是非楽しんで」


 レーネは次々と皿を運び、食堂のテーブルは華やかだ。


 豆のスープは綺麗なグリーン。温野菜もブロッコリーやにんじんの色が眩しい。スペルト小麦のパンの黒さも頼もしく見えるほど。


「あれ、コリンナ。食べ物ってこんな鮮やかでした?」


 シャルロッテは首を傾げる。王都で食べたどんな美食よりも華やかに見えるのだが。


「そうね。なんか本当に視界が澄んできたというか」


 コリンナも首を傾げていた。野菜も全部修道院で作られたものらしいが。修道院は基本的に全部自給自足らしく、野菜も作っているらしい。


 スープは断食中も飲んでいたので、さほど感動しなかった。


 しかし、温野菜のにんじんを食べると目から鱗が落ちたよう。


「あれ、にんじんってこんな甘かった?」


 野菜に甘味や旨みがしっかりと伝わってきた。太陽の光や土の栄養も簡単にイメージできるほど。断食前は何を食べてもなかった感覚が急に生まれたような。


 にんじんだけでなく、ブロッコリーもパンも全部ちゃんと味を感じられた。食べ物にはこんな味があったのだと感動する。見た目は地味な食事だが、今はご馳走のように美味しい。涙目で夢中で食べる。隣にいるコリンナも泣きながら食べていた。


「空腹は美食の最高のスパイスだからな。伯爵夫人、食欲は正常に戻ったかね?」


 レーネがシャルロッテを見ながら笑っていた事は、本人は知らなかった。


 その後、シャルロッテは都に帰ったが、この時の味は忘れそうになかった。


 本当に満たしたいものは、答えはまだ分からない。


 ただ、二度と夜中に貪り食う事もなかったし、王都で美食三昧する事も控えた。


 自然と体重も減っていき、着れなかったドレスも入るようになった。その姿を見たシャルロッテの夫は見直し、夫婦仲はより深まったという。


「あなた、食前にはフェンネルティーを飲みましょう。食欲を正常にしてくれるんですって」


 食前にフェンネルティーを飲む事が習慣づき、シャルロッテの問題は綺麗に解決したという。

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