番外編短編・キャットニップのぬいぐるみ
とある夜、レーネは修道院の自室で針仕事をしていた。
村で話題の猫・ミャオの為にぬいぐるみのおもちゃを作っていた。ネズミの形のぬいぐるみだが、中にはハーブポプリも入っている。
そのハーブはキャットニップ。猫が大好きなハーブだった。
少しミントに似た匂いで、爽やかさもある。風邪予防や不眠にも効果があり、猫だけでなく、人間にも嬉しいハーブだ。
人間にとってはキャットニップは乾燥させハーブティーとして飲むのが一番良い。他は入浴剤やポプリが適切だが。
「ああ、猫ちゃん。早く会いたい!」
レーネはいつもの冷静さはなかった。猫に危険性がある柑橘系のハーブの仕事を無理矢理早く終わらせ、こうしてぬいぐるみを作り、ミャオに会う計画を立てていた。
レーネは猫が好き。ヲタクっぽい見た目に反して可愛いものに目がない。今もこんなぬいぐるみを作成しながら、可愛い猫の事しか考えていなかった。
「ああ、猫ちゃん! 早く会いたい!」
頬を赤くさせ、猫の事を考えているレーネは、どこにも知性や賢さもない。
案の定、このぬいぐるみを持って猫に会いに行った時は、興奮が抑えられず、ミャオをベタベタに溺愛していた。
ミャオの方もキャットニップ入りのぬいぐるみに大興奮。すっかりレーネに懐いていた。
おかげで村ではキャットニップが大流行していた。元々キャットニップは豊作ではあったが、レーネの元に問い合わせが相次ぎ、このぬいぐるみの商品化も決まってしまった。修道院はこの収益でホームレスの食事は賄われたらしい。
ちなみにキャットニップは安眠作用もあるので、村人達の不眠の症状もかなり改善したという。嬉しい副作用と言って良いだろう。
「ミャー?」
そんな事は何も知らないミャオは、首を傾げ、今日も村人達の目を楽しませていた。
「可愛いすぎる! 超可愛い!」
もっともミャオを見て興奮状態のレーネは、相変わらずだったが。




