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聖女の薬草処方箋  作者: 地野千塩


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番外編短編・レーネと猫

 春の終わり、マンナ村ではある事が話題だった。


 それは捨て猫だった。牧場の側に捨てられていたが、奇跡的に生還し、今は村長宅で元気に暮らしているという。


 猫は黒くフワフワな毛並み。名前もミャオとつけられ、たいそう可愛いらしい。カタブツの村長もメロメロになり、村人たちは猫に夢中。


「はぁ。私も猫を見たいもんだ」


 研究室でハーブの調合をしながら、レーネはため息をつく。今はラベンダー、オレンジピール、カモミールなどをブレンドさせ、より飲みやすく、美容効果のあるハーブティーを開発中だった。


 研究室にはドライハーブが詰められたガラス瓶が並ぶ。本や実験器具なども散乱し、とても綺麗な部屋ではないが、ハーブの良い匂いも漂い、ここはレーネの城。


 しかしその表情は微妙。


 レーネも猫が大好きだ。こんなヲタクみたいな女だったが、可愛い小動物に目がない。休日はリスを観察する為に森に行く事もある。


 それでも猫の近づけない。今はオレンジピールを扱っている為だ。猫は柑橘系の匂いが苦手で健康を害する可能性もある。猫に近づきたいが、オレンジの匂いをつけていくわけにもいかない。


 結局、村で話題の猫にも一回も会えていない。本当はキャットニップを大量に持って尋ねたいぐらいなのだが……。


「レーネ、いるかい?」


 そこに修道士のユリウスがやってきた。仕事の報告して帰ると思ったが、スケッチブックを見せてきた。


「レーネ、猫ちゃんをみたいと思ってさ。絵を描いてきたぞ」


 ユリウスは自信満々に胸を叩きが、そのスケッチの出来は子供の落書きレベル。正直、その可愛さは伝わってはこない。


 それでもユリウスの犬のような無邪気な笑顔を見てたら、嬉しくなってきた。実物の猫を見られないのは残念だが。


 それに今はハーブティーを作る事が一番大事だ。このハーブティーで少しでも美容や健康に役立ち、笑顔になっている村人達を想像していたら、やる気になってきた。


 レーネは再び仕事に戻る。机の側の壁には、ユリウスが描いた絵も貼る。これを見ていたら、より頑張れそうだ。

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