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聖女の薬草処方箋  作者: 地野千塩


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幸せのスパイスクッキー(4)

 エクソシストはあっという間だった。ユリウスが聖書の言葉や主の御名を叫ぶと、急に吐き気が襲い、その場で吐いてしまう。


 他にも汗、目やに、あくび、涙なども大量に出たが、なぜかそれと同時に重い雲のような無気力感も消え、雨上がりの空のようにスッキリとしてしまった。


「じゃあな。後の処理は頼む。これから羊の出産もあるしな!」


 豪快に笑い、ユリウスは去っていった。


 残されたレーネとソフィーア。ソフィーアは呆然とし、椅子に座る事しかできなかったが、レーネは実に冷静だった。


 ソフィーアが吐いたものを敵テキパキと処理し、全部片付けると再び食堂へ戻ってきた。


 その片手にはスプレーもあった。ハーブ水が入っているらしく、臭い匂いをとるらしい。おかげでソフィーアが吐いたものの匂いはすっと消えた。ミントやレモングラス、他、ハーブの匂いがするぐらいで、ソフィーアの気持ちはようやく落ち着いた。


「い、今のエクソシストってなんだったんですか?」

「ソフィーアの症状を見る限り、鬱の悪霊が悪さをしていると思ったからな。これは薬を飲ませるより、修道士にエクソシストしてもらった方が早いと思って」

「あ、悪霊なんて……。私は罪は犯してないです」


 さらっと語るレーネに反論した。確か神学では殺人や泥棒、不倫などの罪を犯すと悪霊が入ると習った。自分ではそんな事はそていないつもりだったので、必死に反論。


「ふふふ」


 しかしレーネは聖書の言葉を引用して笑う。


「聖書にはいつも喜んでいなさいとあっただろう? つまり私達の神学ではショックな事や傷ついた出来事でも悪霊が入ると解釈している」

「そんな……」


 それは初耳だった。ソフィーアは神学の勉強についていけていなかったので、解釈の違いがあったようだが、心当たりはある。


 大都での婚約破棄だった。ショックだった。傷ついた。そのまま心の傷も放置していた。だとしたら、悪霊が心に入る事もあり得ない事ではない……?


「でも悪霊もとれてスッキリしただろう?」


 レーネの目は自信たっぷりだった。悔しいが、それは認める他ない。


 ユリウスからエクソシストされた後から、心は晴れやかだった。あの無気力感は全くない。


 その証拠のように腹の虫もなった。あんなに食欲も中なかったのに。


「お腹減った……」

「そうか、そうか。何か食べたいものはあるか?」


 レーネの声は本当に聖女のように柔らかく、温かくもあった。口調はぶっきらぼうで男っぽくもあるのに。


「あの、幸せのクッキーが食べたいかも……」


 なぜか頭にアーダが食べていたクッキーが浮かんでいた。


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