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強がりは春の暖かさで解けていく

作者: 渡会 海

今川 宏(いまがわ ひろし):主人公  22歳

 鹿谷 紅(しかや こう):ヒロイン 20歳 


「好きになってもいい…?」



肌寒くなった季節に、恥ずかしそうに。

普段強気な君が、不安げにそうつぶやく姿がなんだかとても愛おしい。


あのときちゃんと返事しておけばなぁ…。

なんて半年前の甘酸っぱい記憶に浸っていたら。



「…かしくって、ねぇ?」


「ねぇ!!ヒロ!ちゃんと聞いてんの?」


春の暖かな陽気に包まれて、思い出に身を寄せていたら、話を聞き逃していた。


なんてのはよくあることだよね。とっさに切り返す。


「聞いてるよ、難しかったんだろ?」

「何が難しいのか言ってみてよ。」



上手くいったと思ったが、向こうもこちらのパターンを読んでいる。結構まずい。

というか眠くて聞いてなかったので一か八かでいくしかない。


「こないだの試験だろ?英語とか難しかったよな」



あっ、勝ち誇った表情になった。このパターンは知ってる。俺の負けだ。


「ほーら、聞いてないじゃん。こんなに可愛い後輩が、懸命に話してるのに。

 そういうとこホント嫌い。」


『嫌い。』そういう言葉は、あまり聞きたくない。

特にコウから言われるとキツい。ごまかす。


「ごめんって。眠かったんだよ。それで何が難しかったんだって?」


「だからぁー、今年の新入生たちとどうかかわっていけばいいか

 難しくてさぁー。」


「そんなの俺だってわからないに決まってんじゃん。

 とりあえず話しかけてみて相手の趣味とか探ってみたら?」


「そういうのがむずかしいんだってぇー。」



いや、お前が2個下なら、こっちは4個下になるんだぞ…。

そういえば、コウと始めて会ったときは、こっちが一方的に話しかけてたなぁ。

っと、まずいまずい。いつもこれで「話聞いてよ!!!」

と不機嫌になるんだっけ。


「じゃあ俺も遊び誘ってみるよ。そこでコウにも話を振る感じでどう?」


「そういうのならいいけどー。」


「ひとまずカラオケかボウリングにでも誘ってみるか。」



とSNSを開き、全体チャットに

<ヒロ:この後、カラオケかボウリング行く人いますか?>


俺にしては非常に丁寧な表現でメッセージを送る。




ふと、既読がつき早速の返信が入る。優秀な新入生もいるもんだ。


とっさに名前の欄に目が行く…。ってお前かい。



<コウ:私も行く~! 女の子も大歓迎だよ!>


やっぱりコウも新入生を意識しているのか、普段の<ノ>とかではなく丁寧な表現だ。



その後、連絡は全然来ない。新入生はちょうどオリエンテーションの頃か。


そんなに都合よく返信が来る訳もない。


結局ダラダラと空き教室で時間だけが過ぎていく。



また眠気が襲ってくる。どうして春はこんなに眠いのだろうか。


なんて哲学者みたいなことを思っていると。



「このまま誰からも連絡来なかったらどうするー?」


新入生に奢る必要もあり、この時期はどうしても金欠だ。


「あぁ、そんときはキャンセルで次の機会にしようぜ。」


「そしたら、2人で行こ。」



ん? 今なんつった?


「え、2人で?」


「うん、2人で。」


「いや、前に俺と2人でいると落ち着かないとか、ウザいとか、周りに

 冷やかされるとか、嫌いとか、なんとか言ってたじゃん。」


「急に早口になってどうしたの?笑 そんなこと言ったっけ。」


え、なんで俺が急にテンパってるんだ?そういうやり取りではなかったはず。

1回冷静になろう。


こちらが落ち着く暇もなく話しかけてくる。


「別に2人でも良くない?思ったんだけどなんか最近、周りに気を使いすぎてたかなって。」


「いやいや、まぁ俺はいいけど。」


「じゃあ2人ねー。何歌おっかなー♪」



なんか楽しそうだな。いいことだけど。



っていうかよく考えたら、今デートの約束取り付けられた?

待て待て、急にどうしよう。



「もしかして、今ドキドキしてるぅ?」



えっ。


「そんなつもりじゃないから安心してよ笑 そういう対象として見てないし。」


いや、それはそれで傷付くんだが。


「俺もそういう対象として見てないから、お互いさまだなー。」

なんて心にもないことをつい言ってしまう。


「ヒロのそういうとこも嫌い。」



あ、また傷つけてしまったかもしれない。フォローになってなかった。



「なーんてね。嘘だよ♪ 嫌いだったら、

 冗談でも2人でカラオケ行こうとか言わないし。」


そんなコウのセリフに少しにやけてしまいそうになる。

顔、崩れてないか? しっかりしろ、俺。



ピロンッ♪

どことなくいい雰囲気を消すかのように、スマホの通知音が鳴る。もしかして。


<後輩:私も行きたいです!>



せっかくのデートチャンスが、終わった。


少し残念だが、本来の予定通りコウと後輩が仲良くなる

きっかけになってくれれば、それでいいか。



コウもスマホを見たらしい。



「じゃあみんなでカラオケいこっか。

 また、よくわからない歌選ばないでよねー。」


「いや、最近の曲ばっかりじゃ飽きるだろ。」


とりあえず後輩たちに布教して、ハモリパートとか一緒に歌わないとな。

そう思って、何を歌おうかスマホで調べ始める。




「…今度は2人で行こうね!」



聞こえた。2人で行こうって。


『そのうちな~』

なんて返事を言いかけて、止まる。



よく考えろ。強がってたのは、コウじゃなくて俺だったのか?


あの冬も、コウは強がりながらも素直な気持ちを伝えようとしていたじゃないか。



だとしたら。


ほんの少しでいい。


勇気を出してみるか。



「…今度と言わず、明日でもいいぜ。嫌いじゃないならね。」


「嫌いじゃないよ!ヒロのことは嫌いじゃない。」




コウの一言で、春らしい暖かさが深まった気がする。

しかし、先程まで感じていたはずの眠気はどこかへ吹っ飛んでいった。


お読みいただきありがとうございました。

これが処女作でした。

拙い内容だったと思いますが、楽しんでいただけたのであれば幸いです。

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