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プロローグ
トーキョー ハチオウジ
薄暗い廊下を裸足で駆ける。
彼方では怒号が、警告音が、そして地響きが聞こえる。
私を囚えていたのであろう檻は、天井の崩壊によって役目を終えて私を解放した。
―なんで、こんなことになってるんだろう。―
走り続けながら独りごちる。
いま私が持ち合わせているのは2つ。空白の記憶と、許し難い程の空腹。
なぜ捕らえられていたのか、自分が何者なのかも分からない
ただそんな記憶の空白さえも些事にするほどの空腹感が頭の中を満たしていた。
―お腹すいた。はやくなにか口にいれなくちゃ。―
ゴールの見えなかったマラソンにようやく終点が訪れる。
―出口だ。―
扉はロックなどもなく押すと簡単に開いた。
扉を開いて目に入ってきたのは、森。宙を舞う、少女。
そして、天狗。
記憶の空白がこの光景を異常と感じさせているのか、ごくありふれた光景なのか、それすらも判断することができずその場に立ちすくむ。
後方から人の話し声が聞こえてくる。私を探しに来たのか、避難をしているのか。どちらにせよ、逃げ出してきた施設から出てきた人間に見つかるのは避けたい。
私は意を決して森へと足を踏み入れた。




