表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花と造花  作者: 東 弥生
9/9

第9話

ジルはベッドの中で何度目かの寝返りを打った。


(はぁ……。指輪をプレゼントして、それが自分の瞳の色とか……これって……)


チラリと隣のベッドを盗み見ると、フィルニアが静かに眠りに落ちている。


(いやいやいや、媒体よ、媒体。何の意味もないのよ。……それにしても、ちょっと警戒心無さすぎじゃないかしら。私が男だって分かってるのに、同じ部屋ですやすや寝てるし)


ジルは小さくため息をついた。


(はぁ……信用されてるって事よね。その信用が嬉しくもあり……)


寂しくもあり、と考えたところで、頭を振る。


(ちょっと、私何考えてるのよ。せっかくフィルニアが私に女同士の態度を取ってくれてるのに。これじゃまるで……)


その先に考えが行こうとするのを、必至に誤魔化す。


(ダメ。これ以上考えちゃダメだわ。女同士だから一緒に旅できるけど……)


ふぅ、ともう一度溜息をついて、ジルは瞳を閉じた。


眠りに落ちていく中で、フィルニアの微笑みが瞼の裏に浮かんでは消えた。






フィルニアはベッドから降り、毎朝の日課としている瞑想を行うため、床に座る。


そっと淡く輝く媒体を撫でる。


今は閉じられていて、見ることのできない瞳と同じ色の石。


誰かから物を貰って、素直に喜べたのは初めてかもしれない。


巻き添えにした罪悪感から、純粋な好意ではないのは分かっているが、嬉しかった。


思わず笑みが浮かぶが、ゆっくりと心を平な状態へと落ち着かせていく。


それにしても、ジルが魔道や魔力について詳しくないおかげで、余計な詮索をされずに済んだ。


本来魔道士は媒体が無ければ、自らの持つ魔力を外に放出することはできない。


もしかしたら知っているかもしれない。


知らないふりをしてくれているのであれば、フィルニアにとっては有難いことこの上なかった。


もう一度媒体にそっと触れ、瞳を閉じた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ