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花と造花  作者: 東 弥生
6/9

第6話

女を閉じ込めていた部屋から轟音が鳴り響き、この屋敷の執事であるモッソは慌てた。


魔力を使うために必要となる媒体は全て取り払ったはずだ。


媒体に反応する魔道具で調べたのだから、間違いはない。


爆薬でも隠し持っていたか?と考えながら、走って部屋へと向かう。


もし隠していたとしても、所詮魔力の使えない魔道士。


どうにでもなるだろう。


主人は傷つけるなと言ったが、こうなっては仕方がない。


モッソは剣を抜き、スピードを上げた。




フィルニアは部屋を出たところで、ただ突っ立っていた。


よくよく考えれば、この屋敷のどこにジルがいるのか、全くもってわからないのだ。


「ええと……意外と頭にきていたのかな」


元はドアだった残骸へと視線を向けてから、苦笑する。


普段であれば、まず部屋を出てからどこへ向かうか決めていただろう。


いや、向かう場所は決まっている。


「ジルの、所へ……」


ただ、どこが向かうべき場所なのかがわからないだけで。


「しょうがない、しらみつぶしに探しますか。何時間かかるやら……」


そのうちジルも自力で出てくるかもしれない、と希望的観測を思い浮かべ、ようやく足を動かす。


「お待ちください」


「……ただの執事かと思ったのですが。困りましたね」


ようやく動き出したかと思えば、先ほどの執事が抜き身の剣を持ち、フィルニアの三歩先に立ちはだかった。


「大人しく部屋にお戻り下されば……いえ、別の部屋を用意致します。そちらに移っていただければ、危害は加えません」


媒体はお預かりさせて頂きました。ご存じでしょう。


牽制も兼ねて、モッソは付け足した。


「ええ、そうですね。困ったことになりました。殺してしまうのは後味が悪いんですが。まぁ、しょうがないですよね」


困ったように美しく微笑むフィルニアに、モッソは困惑する。


彼女がはったりをかましている様子はなさそうだ。


だとすると、魔道以外に何か武器があるのかもしれない。


武器となるものは取り去ってあるはず。


となると、暗殺者が得意とする、巧妙に隠された武器か。


もしくは体術か。


どちらにしろ、彼女に後れをとらなければ良い話だ。


腕に覚えのあるモッソは、構わず彼女との距離を詰めた。


彼は、その後何があったのか、正確にはわかっていない。


一瞬のうちに、ものすごい衝撃が襲いかかり、意識が途絶えた。


彼の意識が戻った時、彼はようやく何かの力で壁に叩きつけられたのだと理解した。



「……だから……だって、言って……」


「かまわ……君……」


「……いい加減……でしょう!」


「いや……めない……は……もの……」


ドアから小さく洩れる声に、何の当てもなく屋敷を探索していたフィルニアは反応した。


これは、ジルの声ではないだろうか。


気配を消してドアに近寄り、そっと押す。


予想外にドアに鍵はかかっておらず、薄く隙間ができる。


ジルが人質に取られても困るので、様子を見ようと隙間を覗く。


ジルの姿は陰になってみえないが、彼女が言い争っている相手は、金髪の男だ。


こうして見た感じでは、あの男がジルを押さえつけられるほど強くはなさそうだ。


フィルニアは思い切ってドアを押し開けた。


「だから、私は男だって言ってんでしょうが!!!いい加減にしろ!!あんたも見たでしょ!!!!」


フィルニアは、頭が真っ白になった。





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