8話 武器
メルクはソロでゴブリンを討伐した夜、母親に父親の事を聞いた。家で武器について考えているとふと思い付いたのだ。
「お父さんの職業は剣士だったのよ」
母親のメルダは答えた。そう言えば自分の職業を伝えていなかったなと思いだし、母親には『剣士』と伝えた。
(たぶん魔剣士って言ってもわからないからな)
メルダは「お父さんと同じ職業なのね」とにっこりと笑い、家の物置部屋に向かった。
メルダはあるものを持ってきてメルクに差し出す。
「はい、お父さんの使っていた剣よ、メルクも剣士ならあなたが持っていた方がお父さんも喜ぶわ」
(棚からぼた餅とはこういうことを言うのか)
メルクは何かしらの条件をクリアすればクエストが進むのかと冗談で心に思った。
メルクには少しばかり長い剣を手にする。業物という言葉には程遠い剣だが、柄には小さく父親の名前が刻印してある。
『アルファロス』
メルクは母親にお礼し、これで鍛練して強くなるねと宣言する。
(うひょー明日から忙しくなるぞー)
興奮が収まらないメルクは早速明日の予定をベッドの上で考えるのであった。
翌日、いつも通りに森へ向けて進むメルク。
昨日貰った剣を背に掛け、ウキウキ気分で森へ入る。
(今日はひたすら刈るぞ)
剣があれば魔力を使わなくてもゴブリンくらいなら倒すことが出来ると考えている。魔力については予想通りに朝には全快していた。
森を進むこと数十分、早速魔物に巡りあった。
(ゴブリン1体とは都合がいいな、スキルなしで戦ってみようか)
獲物でも探しているのかゴブリンが辺りを見渡している。
メルクは奇襲をかけるべくゴブリンの背後へ忍び寄る。
「うりぁぁぁぁ!」
メルクはやや重い剣をゴブリンの背に斬りかかる。
「グギャギャ!」
斬られたゴブリンは奇声を上げる。ゴブリンが反撃の姿勢に向かうまでにメルクはさらに一撃を食らわす。
「そりゃぁ!」
「グギャー!」
ゴブリンの胴体に大きな傷をつける。大分ダメージを与えたつもりだが死んではいない模様だ。
(力の数値が低いのかな)
倒せないのは自分のステータス値が低いと判断したが、ゴブリンは瀕死のようだ。
メルクは最後の一撃を出そうと腕を振り上げた瞬間、ゴブリンは力尽いて地に伏せた。
メルクはステータス画面を見つめる。
【 ゴブリン を1体倒しました。 経験値12EXPを獲得しました。 】
(よしよし、どんどん狩るぞ)
……
時刻で言うと午後3時くらいだろうか、日も傾き始めた頃メルクは本日の討伐を終えたようだ。
(ふー、今日はここまでにしよう)
最後にゴブリンが3体出くわしたため、スキルを使いゴブリンを難なく倒した。
今日はゴブリンを7体と角の生えたウサギ『ホーンラビット』1体を倒した。
ホーンラビットはF級の魔物と思われ、素早いが耐久が豆腐のためゴブリンより弱く感じた。経験値はゴブリンより少ない8EXPだった。
帰り道で歩きながら今日の戦果を確認する。
【名前】 メルク・アクレイド 8歳
【レベル】 6
【職業】 魔剣士
【ランク】 F
【体力】 19
【魔力】 16
【力】 15
【耐久】 12
【敏捷】 8
【知力】 21
【パーティー】 めるふぃす
【経験値】 134/178EXP
【スキル】
・ウィンドスラッシュ
(うしうし、レベルが6まで上がったぞ、力もついてゴブリンなんて一撃だもんな)
ゴブリンを一撃で倒せるレベルになり、複数体での戦闘も魔力が増えた分スキルが使えるため難なく倒すことができる。
また、倒した魔物から剣を使って魔石を取り出すことも出来た。他パーティーの見よう見まねで実践し、小さな石ころサイズで、紫色した宝石のような物だった。魔物のランクで魔石の色が違うのではと想定している。
(ボアを何度か見かけたが、明日挑戦してみるかな)
ゴブリンを探す中、何度かボアを見たがレベルが低いこともあり避けてきたのだ。
メルクは家のベッドの上でステータス画面を見つめる。
(そう言えばパーティーメンバーは今頃何をしてるかな)
ふとパーティーメンバーが気になってメンバーのステータスを確認する。
(お、シグマだけレベルが上がっているぞ)
【名前】 シグマ・グルート 8歳
【レベル】 2
【職業】 魔法使い
【体力】 5
【魔力】 6
【力】 3
【耐久】 3
【敏捷】 5
【知力】 10
【パーティー】 めるふぃす
【魔法】
・火球
想定通りゲーム内の職業を引き継ぐ。経験値は見ることができないみたいだ。
(レベル2で魔法をおぼえるのか、魔法がないと戦えないからな)
シグマのステータスを見て分析を進める。魔法使いは魔力と知力の上昇幅が大きいようだ。
(知力は魔法の威力に影響するのかな)
レベルが上がったことでメルクが使用するスキルについても威力が増しているのである。ゲーム内にも知力や運といった謎のステータスが記載されているが、気にするプレイヤーはほとんどいないだろう。剛も同様に気にしない部類に入る。今改めて分析するが明確な答えが出ない。
(それにしても2番手は予想通りのシグマか…)
ゲーム内でもメルクに次ぐプレイ時間を誇る廃人だ。
メルクは他のメンバーが自分のステータスを見てレベルが上がってることに焦りを見せている姿を想像していたら、いつの間にか眠りについていたのである。