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異世界!無双されし廃パーティー めるふぃす  作者: 水無 藍
1章 アリアと未踏のダンジョン
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6話 魔物と経験値

 冒険者証をもらった翌日の朝、メルクはいつも通り母親と朝食を囲む。

 昨日母親に冒険者証を見せたら「よかったね」と笑顔で言われただけだった。

 その後メルクは鑑定スキルを使えるか検証したが使うことが出来なかったため、職業スキルと判断した。


 二人は朝食を終えるとメルクは母親を見送りメルクも準備を始める。

 今日からレベル上げをするつもりだがメルクは魔物を見たことがなく、武器も無ければ魔法も使えないため、今日は視察だけの予定だ。

 メルクは水が入った水筒と硬いパンを麻の袋に入れ家を後にした。


(よーし、レベルアップ一番乗りを頂くとしよう)


 メルクは町の外に出て、木が疎らに生えている道を歩きながらパーティーメンバーのステータスを確認する。

 スライムのような魔物くらいならメルクは倒すことが出来るだろうと考えているが、そもそもスライムがこの世界にいるかはわからない。


 1時間くらい歩いただろうか、次第に木が多くなり森へと変わっていった。

 薄暗い道を歩く中、遠くから微かに何かの音が聞こえる。


(なんか聞こえるな)


 メルクは音のする方へ小走りで静かに近づく。

 次第に音が大きくなり近くの茂みから顔を出して確認する。


(お、戦闘中か!タイミングがいいぞ!)


 剣士と魔法使いと弓使いと思われる3人組パーティーが体長3メートル程の猪の姿をした魔物と戦っている。


(あれはボアという魔物だっけか)


 攻撃手段を持たないメルクは経験値を取得するために二つの方法を考えていた。

 1つ目はメルクが倒すことの出来そうな魔物を探す。

 2つ目は今ある状況のように戦闘中パーティーを見つけ、経験値のお裾分けを頂くこと。

 2つ目の方法は褒められたものではないが、攻撃手段を持たないメルクにはこれしかないのだ。

 メルクは2つ目の方法を実践すべく考えていた方法を行動に移した。


(こっそり石を投げて魔物に当てるぞ)


 剛がゲームをしていた頃を思い出す。

 経験値取得の条件はどのゲームも同じだったため、この世界でもその条件は当てはまると考えた。


 メルクが考える経験値取得条件

 ・戦闘に参加した人は経験値取得できる。

 ・近くにいるだけでは経験値取得できない。

 ・一定距離にいるパーティー内であれば、1人でも戦闘していれば全員に経験値が分配される。

 

 メルクの考える経験値取得条件から魔物に石を当てるだけで戦闘に参加したことになると踏んでいる。

 魔物の背後20メートルくらいの距離にある茂みの中からメルクは魔物に向けて石を投げる。


(おりゃ!)


 戦闘中のパーティーには気づかれず、魔物の尻に石を当てる事が出来た。


 後はパーティーが魔物を倒すのを待つだけになる。

 メルクは戦闘を眺めているがパーティーの方が優勢のようである。

 そこまで派手な戦いではないが、魔法使いが火属性の魔法を使い、弓使いが矢を放ち、剣士が接近戦で大きな胴体を斬り刻んでいる。

 パーティーの攻撃力は大きくはないが少しずつ魔物の体力を削っているようだ。

 メルクが戦闘を眺め始めてから十数分、剣士の一撃が魔物の首元にある動脈を切ったのか大量の血が噴き上がり、時間差で魔物が地面に倒れ込んだ。

 戦闘していたパーティーが喜びを上げる中、メルクはステータス画面を見つめている。


(ステータス画面には経験値の欄は無いが)


 するとステータス画面とは別の画面が表示されてログが流れ始めた。



【フォレスト=ボア を1体倒しました。 経験値18EXPを獲得しました。】

【メルクはレベル2に上がりました。】

【ステータスが 体力+2、力+2、耐久+2、敏捷+1、知力+2 上昇しました。】


(きたああああああ!!!)


 メルクは心の中で雄叫びを上げる。


 予想した通りにメルクが投げた石は魔物に当たり、それが戦闘に参加した事を意味した。

 戦闘を終えたパーティーはボアを解体しているようだ。

 そんなことにも目もくれず、メルクはステータス画面を凝視する。


(経験値が18EXPも入ったか。フォレスト=ボア単体の経験値は72EXPと想定できるな)


 メルクはボアの経験値について分析を進める。

 経験値からしてE級の魔物と推測する。


(レベルは上がったが魔法やスキルは何も覚えなかったな。取得条件をギルドで確認するか)


 パーティーが解体を続ける中、メルクはステータス画面を凝視続ける。


(お、経験値欄が増えてるぞ。職業によってステータスの上り幅は違いそうだな)



【名前】  メルク・アクレイド 8歳

【レベル】 2

【職業】  魔剣士

【ランク】 F   


【体力】  8

【魔力】  0

【力】   4

【耐久】  4

【敏捷】  4

【知力】  7


【パーティー】 めるふぃす

【経験値】 18/40EXP



 解体を終えたパーティーはどうやらもう1体ボアを狩るような話が聞こえる。

 メルクはしめしめとにやけ顔でパーティーの後を隠れながら追うのである。

 

 メルクはコソコソ隠れながらパーティーへ付いていき30分程たったくらいだろうか、辺りに腐敗臭のような臭いが漂い始める。

 するとパーティーの前方に人型の魔物3体が姿を現した。

 メルクが遠目で凝視すると背丈は140センチメートルくらいだろうか、醜い顔にボロボロの布を巻き付け、手には木のこん棒を持った魔物のようだ。


(お、あれはゴブリンか?)


 どうやらパーティーは戦闘態勢に入るようだ。

 メルクは気づかれずに敵の背後30メートルくらいの距離にある茂みまで移動する。


(石をぶつけるのは1体で大丈夫かな)


 メルクはゲームによって経験値分配の仕様が異なることを思い出す。

 自分が攻撃した敵だけの経験値がもらえる仕様と1体攻撃すれば3体分の経験値がもらえる仕様のゲームがある。

 3体に石を当てるのはリスクがあると判断し、1体を目掛けて石をぶつける事にした。


(おりゃ!)


 一番後方にいたゴブリンの後頭部に石が当たり、一瞬ゴブリンが後を振り返ったが頭を掻いてパーティーへと視線を戻した。


(…セーフか。鈍感で助かった)


 興奮感に緊張が混じり、メルクの息遣いが荒くなる。


(これで準備完了。お、戦闘が始まったな)


 魔法使いの先制攻撃により火属性の魔法がゴブリンに命中する。


(お、ぶつけていないゴブリンの経験値が入ったぞ)


 ゴブリンは一瞬にて絶命したようだ。

 その瞬間にメルクのステータス画面にログが流れる。


【ゴブリンを1体を倒しました。経験値3EXPを獲得しました。】


(ゴブリン単体の経験ちは12EXPか。F級になるのかな)


 メルクは経験値からゴブリンの討伐ランクを推測する。

 ゴブリンは群れを成す魔物のため、群れている数によりランクは変動する認識である。


(フォレスト=ボアに比べると随分弱いな。火球で即死か)


 魔法使いが一番初めに取得する魔法が火球であると考えているため、そんな最弱の魔法で即死するゴブリンは、この世界では最弱の魔物ではないかと推測する。


 メルクがあれこれ考えている内に剣士によって2体同時にゴブリンの首を跳ねる。

 ステータス画面に追加でログが流れた。

 メルクは満面の笑みでステータス画面を見つめている。


 パーティーがゴブリンの解体を始めたようだが、胸を切り開いているだけのようである。


(やはり魔物には魔石があるんだな)


 メルクはパーティーが行っている行動をすぐに理解した。

 ゴブリンの売れる素材は魔石くらいだとメルクは考える。

 ゲームでもゴブリンが落とすものは魔石だけだったためである。

 パーティーは3体分のゴブリンから魔石を抜き取り終え、これからどうするか話し合っているようだ。


 いつの間にか太陽は暮れに向かっている。

 パーティーはゴブリンの討伐を終え町へ帰る選択をしたようだ。

 メルクも離れた距離を維持して後を付いていく。

 メルクはもう一狩りしたかったが、どうすることもできないままギルドに到着した。


「あ、メルク様こんにちは、本日はどのようなご用件でしょうか?」


 いつもの受付の女性が対応する。

 胸に付けている名札に『メルビス』と書かれているため、親しくなれば色々な情報を提供してくれるのではないかと思い名前で呼んでみる。


「メルビスさんこんにちは。今日は2点質問がございます」


「は、はい」


 受付のメルビスは名前を呼ばれて一瞬ビクッとなった。

 普段名前て呼ぶ冒険者は少ないかと思う。


「魔物について教えて欲しいんですが。フォレスト=ボアという魔物はE級、ゴブリンはF級の魔物でよろしかったでしょうか?」


「はい、その通りでございます。ゴブリンに付きましては種類が多く、ゴブリンキングになるとC級の魔物になります」


(想定した通りだな)


 メルクが考えていた魔物の経験値から魔物のランクを割り出す法則はある程度適用するようだ。


「ありがとうございます。次の質問になりますが、スキルや魔法というのはどのようにして覚えるのでしょうか?」


「はい、個人によって違いますが一定のレベルまで上がれば自動で取得できるようになりますが、職業や個人によって覚える種類は変わってくるようです」


 レベルが上がれば勝手に覚え、自然に使うことができるようだ。


(どういう理かはわからないが、不思議と使えるのか)


 メルクはありがとうございましたとお礼を告げギルドを後にし、帰り道に明日の予定を考えるのであった。


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