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異世界!無双されし廃パーティー めるふぃす  作者: 水無 藍
1章 アリアと未踏のダンジョン
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5話 職業

 メルクは家で母親の帰りを待っている。

 冒険者登録には保護者の承認書が必要のため、説得して許可をもらうためだ。

 ギルドから承認書の羊皮紙をもらい準備はできている。


「ただいまー」


 日暮れ前に母親が帰宅する。

 母親は町の宿屋で働いているようだ。


(よし、説得するぞ)


 メルクは母親が許可してもらえるはずないと思っているため、説得理由をあれこれ考えている。

 承認書を手に取り母親の元へ向かう。


「母さんお帰りなさい、ちょっと話があるんだ」


 母親は何かしらとそのまま椅子に腰を掛ける。

 メルクも合わせて椅子に座り話を進める。


「実は母さんにお願いがあって…」


 メルクは承認書をテーブルの上に置いて母親に見せる。


「僕、冒険者の登録をしたいんだ。勿論仕事の受注はしないよ」


 メルクは危険なことはせず、今の生活と何も変わらないことを示した。

 しばしば母親の回答を待っていると母親は承認書を手に取り、ポツリと口(こぼ)を溢す。


「あなたはやはり父さんの子ね…」


(うん?父親は冒険者だったのかな?)


 メルクは父親の記憶は何もなかったため、冒険者だったのかと考える。


「まだ8歳なんだから危ないことはしたらだめよ」


 母親はそう言って指に針を指し、血印を承認書に押すのである。


「母さんいいの?」


 メルクは予想だにもしなかったため驚いた。


「あなたは人より賢い子だからね」


 メルクは同年代の子より、いやその辺の大人より賢く言葉遣いもしっかりとしている。

 そんなメルクが理由もなくお願いするとは思えなかったため、そんなメルクの発言に母親は父親の面影を見た。

 この世界では父親の職業を子が継ぐことが一般的だとメルクは思っている。


「お父さんは冒険者だったの?」


 メルクはポツリと溢した母親に問いかける。

 メルクの記憶に父親の情報がないため、今まで何も聞かされていなかったのだ。

 父親は何かしらで死んでしまったんだろうなとメルクは考えていた。


「お父さんは冒険者で、あなたが小さいときに魔人と戦ってやられてしまったの」


 メルクはこの世界に転生された理由を考えていた。

 ゲームによって最終目的が異なり、ドラゴンを倒すのか魔王を倒すのか領地を広げるのかゲームによって目的は様々である。

 魔人の話が出てきたため、メルクが転生された理由は魔人もしくは魔王を倒すことではないかと推測した。

 そのため前世の世界から強者を集めたのではないかと...。


「僕が強くなって父さんの仇を取るよ!もちろん倒せない敵がいたら迷わず逃げるよ!」


 メルクは母親に仇を取ると明言した。

 でも敵が強かったら逃げるよと母親の感情を汲み取りベストの回答をしたつもりだ。

 母親の目からは一粒の涙が零れ落ちるのが見え、メルクは強くなることをより一層胸に誓った。


 メルクはクエストが1つ進んだと感じ、母親との話を終え明日からの予定を模索するのであった。


 翌日、メルクは母親と一緒に家を出た。

 母親は仕事で宿にメルクはギルドへ向かうのである。

 町の中心部で母親と別れメルクは承認書を持ちギルドの中へと入る。

 数多くの冒険者は既に出発しているためギルド内にいる冒険者は疎らだ。

 メルクは真っ直ぐに受付へ進み受付の女性に承認書を渡す。


「いらっしゃいませ。あ、承認書ですね」


 昨日やってきた子供に受付の女性は直ぐに思い出した。

 承認書を受け取り内容を確認し冒険者登録の準備を進める。

 そして受付の女性はカウンターの上に水晶みたいなものを置いた。


(お、異世界あるあるが出てきたぞ)


 水晶は異世界で鑑定に使われる魔道具である。

 異世界をかじったメルクは直ぐに水晶が何の道具かを察した。 


「では水晶に手をかざしてください」


 緊張しつつメルクは水晶の上に手をかざす。


(なにがわかるのかな…)


 すると水晶が輝きだし、水晶内は白色の煙のようなもので充満されていく。


(受付の女性は鑑定スキルのようなものを持っているのかな)


 他人のステータスを確認するためには鑑定スキルが必要だとメルクは推測する。


「え、」


 メルクは鑑定結果を待っていると、受付の女性は驚きの声を上げた。


「ま、魔剣士……メルク様の職業は魔剣士になります……」


(お、ゲーム内と同じ職業になるのね)


 どうやら水晶で名前と職業が分かるらしいが、何故受付の女性が驚いているのかメルクは疑問に思う。


「魔剣士は何か問題があるのでしょうか?」


 メルクは疑問をぶつける。

 魔剣士は勇者の劣化版みたいな職業で、すごい職業ではないとメルクは思っている。

 ゲーム内では勇者の職業が無かったため、少数パーティーの効率を考えた結果、剣も魔法も使える職業は魔剣士しかなかったのである。


「も、申し訳ございません、本でしか見たことがない職業でしたため…」


 どうもこの世界に他に魔剣士の職業はいないみたいだ。

 そんなにすごい職業でもないのにと思いつつ、受付の女性から1枚の小さなプレートを手渡される。


「こちらが冒険者証になります。名前と職業と冒険者ランクが記載されています」


 銀色のプレートは魔道具の一種のようで、偽造したら水晶の鑑定でバレるとのことだ。

 職業の下に『F』と刻まれている。


(Fランクから始まるのか)


 メルクは剛だった頃、どのゲームでも最高ランクに到達していた。

 ゲーム毎にランクが上がる条件が異なっており、ゲーム内ランキング上位に入らないと取得できないランクというのもあった。


「ランクは『F』から『S』までございます。今世界に『S』ランク以上は5人おり、そのうち3人は『フェアリーフェザー』というパーティーになります。ランクアップ条件になりますが、該当ランクの依頼を規定回数終えること、ギルドマスターの推薦、規定レベル到達、規定ダンジョン踏破が条件となります」


 説明はこれで終わりらしくメルクは何点か質問をした。

 昨日小一時間ばかり質問をしたため、受付の女性は身構えていたが質問は数分で終えた。


 ・レベルは水晶で確認可能

 ・職業の変更はできない模様だがレベルによって上級職に変わることがある

 ・他の冒険者のステータスはパーティーを組まないと確認出来ない


 メルクは大人になるまで依頼は受けないことを受付の女性に伝えギルドを後にした。


(よーし、これでレベル上げに専念できるぞ)


 メルクは母親に内緒で近くの森で魔物を狩るつもりである。

 武器すら持っていないメルクは、E級の魔物くらいだったら何とかなるだろうと簡単に考えている。


 メルクは明日からの予定を考えながら家へ帰るのであった。



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