4話 冒険者ギルド ノーラン支部
メルクはすんでいる町の中心部へ向けて歩いている。
町の外れに家があるため、中心部に行くのに30分ばかり掛かりそうだ。
周りには畑が一面に広がっており、ぽつぽつと家が建っている。
町の中心部はそれなりに建物が密集しており、人口も数千人はいそうな町のようだ。
歩いていると馬車が横を通り抜けていく。
(お、馬を引いてるの獣人だったぞ)
この世界のことをある程度想定しているため、メルクは驚く様子もない。
でも生で見る初めての獣人には感動しているようだ。
対人戦闘に特化した種族のため、護衛を兼ねているのだろうとメルクは考える。
(そろそろノーランの中心部か…)
住んでる町の名前くらいはメルクの記憶にあるようだ。
歩いていると看板を掲げた店が並んでいる。
(ん?記号みたいな文字が読めるぞ)
店の看板は日本語ではないが、なぜか違和感なく文字を読むことができるのだ。
どうも町は宿が多いようで冒険者と思われる格好をした人達が出入りをしている。
(宿屋が多いな…… お、冒険者だ。大剣を担いだ剣士に尖り帽子の魔法使いっぽい人もいるぞ)
メルクは目を輝かせながら、あっちこっちと目を泳がせる。
やはりこの世界は魔物を討伐して生活する冒険者がいるのかと思うのである。
(さて、目的の建物はどこかなっと)
メルクは単に町に繰り出した訳でもなく、異世界ならあるであろう建物を探す。
冒険者がいることで一層確信を持ったメルクはあちこち探し回り、ようやく目的の建物を見つけたのである。
『冒険者ギルド ノーラン支部』
西欧風の町並みに混じり他の建物より一際一際大きく、大きな看板を掲げている。冒険者ギルドは冒険者達が仕事を受注したり、討伐した魔物の素材を換金したりする施設になる。
(あったぞ、入ってみるか)
高さ3メートルくらいありそうな大きな観音扉を開くと、中は天井が高く銀行の窓口の様にカウンターが並んでいる。
今は昼時と思われるため冒険者は疎らのようだった。
メルクは中に入りキョロキョロと建物内を物色していると、大柄なゴツい男が近づいてくる。
「おいガキんちょ、お前のようなガキが来るような場所じゃねーぞ」
ここは男の鉄火場だと言わんばかりとメルクに睨みを利かせる。
「あ、はいすみません、用事が済んだら帰りますので」
メルクは怯えることなく対応する。
男はそのまま建物を後にしたため、メルクはカウンターへと向かう。
「本日はどのようなご用件でしょうか?」
カウンターで冒険者の対応をしている若い女性がメルクに話しかける。
子供が来ても冒険者と同じ対応をするようだ。
「いくつかお聞きしたいことがあるのですけど、お時間は宜しかったでしょうか?」
まだ小さい子供が丁寧に話すため受付の女性は驚くが表情には出さずに対応する。
「は、はい答えることができるご質問であれば…」
メルクはここに来れば大抵の情報が得られると思っている。
今後の目標を決めるべく考えていた質問をぶつける。
「冒険者登録は誰でも可能でしょうか?」
メルクはいち早くレベルを上げたい。
そのためには冒険者登録をしなければいけないと考えている。
「冒険者登録は誰でも可能ですが、15歳未満は保護者の承認書が必要です」
この世界では15歳から大人と判断されるようで、子供でも承認書があれば誰でも冒険者のなれるようだ。
(よしよし、これでやることができたぞ、初クエストは母親から承認書をもらうことか)
表情には出さないがメルクは歓喜し、質問を続ける。
「ありがとうございます、仕事はどのように受注するのでしょうか?」
受付の女性も未来の冒険者のために丁寧に回答する。
冒険者の登録前に確認しに来る子供もたまにいるような感じかと思う。
「そちらの壁に貼っている紙が依頼内容ですので、受注する依頼をこちらに持ってきてもらえば受注処理いたします」
受付の女性が指を指した方の壁には数十枚の紙が貼り付けられている。
この後もメルクの質問が小一時間掛かり、受付の女性は質問が終わったことに安堵し疲れを見せる。
質問から大まかに以下のようなことがわかった。
・この世界は4つの大国といくつかの小国があるようだ。
・この町は人属が多数を占めるドムルート王国の一部とのこと。
・この町の周辺に3つのダンジョンがあり、内1つは未踏のダンジョン。
・町の外には魔物がおり、この辺りはE級の魔物が多い。
冒険者に必要な情報は登録時に教えてもらうことになるようだ。
メルクは最後の質問に「この世界に転生者はいるのか」と質問したが受付の女性はそれはなんですかと聞き返された。
それともう一つ有益な情報として、数年に一度の割合で魔神がやってきて悪さをする話しを聞くことができ、やはり異世界には魔神みたいな敵がいるのかと思うのである。
(色々確認できたな)
満足顔でギルドを後にしたメルクは冒険者登録をするため母親の説得理由を考えながら家に戻るのであった。