3話 ステータス
「メルクおはよう。朝ごはん出来ているわよ」
まだ20代半ばくらいの綺麗な容姿をした女性が声を掛ける。
剛そのものが異世界へ転生したことに戸惑いを隠しつつ、居間と思わしき場所へ顔を出すのである。
(日本語だよな…)
「お、おはよう…」
日本語で女性が話したため、戸惑いながら剛も返事をした。
この異世界では剛はゲーム内と同じ名前であるメルクと言う名になるみたいだ。
テーブルの上にはパンとスープが並んでいる。
剛は椅子に座りパンを頬張る。
(パン硬っ!…あ、スープに付けて食べるんだっけか…)
剛は以前に異世界モノの小説を少しばかり読んだことがあったために食べ方を思い出す。
母親と思われる女性と二人で朝食を囲み、母親と思われる女性が先に席を立ちどこかへ行く準備をしている。
「今日は早めに帰れそうだわ。それじゃ行ってくるね」
メルクに一言声を掛け、家を出るのである。
朝食を終えたメルクはとりあえずテーブルの上を片付け、ベットで仰向けに横たわる。
(…なにがなんだかわからないぞ)
メルク本体の記憶が全く無いため、メルクの1日のルーティンがわからなく動きが取れない。
何か情報はないかと、先ほど開けたステータス画面を見てみることにする。
「ステータスオープン」
【名前】 メルク・アクレイド 8歳
【レベル】 1
【職業】 平民
【体力】 6
【魔力】 0
【力】 2
【耐久】 2
【敏捷】 3
【知力】 5
《 記憶読込可能 》
【パーティー】 めるふぃす
(メルク6歳の平民か…所属パーティーは「めるふぃす」のままだが他のメンバーはどこ行った?)
(同じ世界に転生されたはずだが…うーん)
ステータスが面をみて情報を得ようとするが内容が乏しいため、これからどうしたらよいかステータス画面を見つめながら考える。
(…うん? 記憶読込可能ってなんだ?)
ステータスに記載されている文言に疑問が上がる。
(なんの記憶だ?どうやって読み込むんだろう…)
ステータス画面を見つめながら文言の起動方法を模索する。
一切の情報を与えられずに転生したため、右も左もわからないのだ。
ステータス画面を触ろうとしても透明のため手がすり抜けてしまう。
(まいったな…)
家には時計らしき物はないが、体感で1時間程が過ぎた。
「記憶読込!」
声に出して叫んでみた。
するとステータス画面から「記憶読込可能」の文言が消え、同時にメルクの頭の中に何かが入り込む感覚に襲われる。
(お、起動されたようだが…なんだこの感覚は…)
メルクとしてのこれまでの記憶が剛の頭の中に蓄積されていく。
ほんの数秒の出来事だった。
(俺はメルクになったのか……)
メルクの記憶に満ちた剛は改めて自分が転生したことを実感した。
しばしの間ベッドの上でメルクの記憶を辿り現状を把握することができた。
大まかには下記となる。
・母親と二人暮らし
・父親はいない(情報無し)
・小さな田舎町の外れに住んでいる
・母親は仕事、その間は外で遊んでいる
記憶の確認を終え、ふとステータス画面にパーティーに所属していることを思い出す。
(もしかして、パーティーメンバーの情報って見れるのか?)
メルクはゲーム内では所属するパーティーメンバーのステータスを確認することができるのを思い出し、ステータス画面を開いて模索する。
「アリア ステータスオープン」
するとステータス画面が切り替わり、アリアのステータスが表示される。
【名前】 アリア・フィアレーゼ 8歳
【レベル】 1
【職業】 平民
【体力】 5
【魔力】 0
【力】 2
【耐久】 2
【敏捷】 2
【知力】 6
【パーティー】 めるふぃす
(お、やはり確認できるぞ)
今までやっていたネットゲームはこの世界を模倣して作られたような気がしたため、ゲームで出来ることはこの世界でも同じことが出来るのではないかと予想する。
(レイラスとシグマも確認してみるか)
【名前】 レイラス・バキスティーニ 8歳
【レベル】 1
【職業】 平民
【体力】 7
【魔力】 0
【力】 3
【耐久】 2
【敏捷】 2
【知力】 4
【パーティー】 めるふぃす
【名前】 シグマ・グルート 8歳
【レベル】 1
【職業】 魔法使い
【体力】 4
【魔力】 0
【力】 2
【耐久】 2
【敏捷】 3
【知力】 6
【パーティー】 めるふぃす
(全員確認できたと…ステータスがあるということは何かしらの敵がいるとみるが……レベルを上げたいけど……まずは外で情報収集か)
ゲーム脳のメルクはこの世界に敵がいると踏んでまずはレベルを上げる事を考えた。
剛が初めてするゲームでも情報収集は二の次で、とりあえずレベルを上げるのだ。
ある程度のレベルになるといろいろとクエストが解放され、街とダンジョンの行き来を最小限にする。 これが最も時間効率が良いからである。
(皆うまくやってやっていると思うが…とりあえず町に出てみるか…)
皆メルクと同じくゲーム脳のため、メルクは他のパーティーメンバーをそこまで心配はしていない。むしろ皆よりレベルを上げられるかを心配している。
これからこの世界で生きていくためにメルクは情報収集を急ぐのであった。