2話 異世界転生の権利
お昼12時にイベントが終了した。
3日間で3時間の仮眠のみだったため、パーティーメンバーは4時間の休憩をとることにした。
いち早くゲーム内に戻ってきた剛が1通の運営からのメッセージに気づく。
『いつもご利用ありがとうございます。この度は貴殿パーティーのご活躍により「異世界転生の権利」を送らせて頂きます。今後のご活躍も期待しております。運営一同』
剛がメッセージに添付された添付マークをクリックする。
するとコーションマークがついているウィンドウが表示され、説明分と共にウィンドウ下部に『OK』と『取り消し』のボタンが設置されている。
異世界転生の権利
・OKボタンを押したら元に戻ることができません。
・取り消しボタンでこのウィンドウを閉じることができます。
・パーティーメンバー全員が同じ世界に転生されます。
(ふむ…ひとまずメンバーを待つか…)
一旦取り消しボタンを押してウィンドウを閉じ、皆の反応があるまでデイリークエストを進めることにした。
『運営からなんかきてるぞ』
30分もたたなくしてレイラスが一番に反応した。
『みた』
すぐにシグマが端的に返事する。
チャットが少ないシグマは既に待機しているようだ。
『アリアが来るまで待ってよう』
メルクがチャットする。
ゲームプレイ時間で計算するとアリアが一番プレイ時間が少ない。
そのためレベルもパーティー内で一番低いが、一般プレイヤーから見れば間違いなくアリアも廃人ゲーマーなのだ。
レベル80近辺になるとレベル1上げるのに廃人プレイでも1ヵ月近くは掛かる。
『お待たせ― 運営からのメッセージ見たよー』
程なくしてアリアから応答がある。
しばらく運営から来たメッセージについて議論が続く。
『装備もアイテムも整えたし、OKボタンを押すか』
メルク達はまだ公開されていないダンジョンまたはワールドに移り、ボスを倒したりイベントをクリアしなければ戻れないと判断した。
そのため、いつでも戦闘を行えるように準備したのである。
『押すよー』
『いくぜえええ』
『おう』
時間差なくパーティー全員がOKボタンを押すのでる。
すると画面が真っ黒、いやプレイヤー自身の視界が真っ暗になったのだ。
(うん? 真っ暗になったぞ? え? 俺自身の視界がなくなったのか?)
(あれ? …眠くなっtk……)
剛が突然の異変に驚くが次第に眠気が襲い、意識を失うのである。
――― どのくらい時間が過ぎたのであろう。
薄い光に女性の声が聞こえて剛は目を覚ます。
「メルクー。朝ご飯だよー」
(うん?ここはどこだ?)
素っ気ない部屋の片隅にあるベッドの上で剛は寝ていたのである。
なぜここにいるのか剛は思案する。
(確か真っ暗になって気絶したんだよな…普通の家っぽいけど病院か?)
剛は起き上がり、声のする方へ行こうとする。
(あれ? 身体が軽いぞ?)
剛は自分の体がに異変を感じて手や足を見て確認する。そして体が小さくなっていることに気付く。
(え? ちっこくなっているぞ?)
慌てて部屋にある透明度が低い窓に映るうっすらとした自分に驚愕する。
(子供になってるぞ…)
剛がゲーム内で使っているキャラクターを子供にしたような容姿である。
(もしかして俺がゲーム内に転生されたのか?)
正確にはゲーム内ではないが、ゲーム脳の剛はすぐに判断した。
ゲームをしない素人が同じ境遇に遭えば、まともに判断できないだろう。
剛はあることにふと思いつき、声に出すのである。
「す、ステータスオープン」
すると目の前の空間に透過性のある薄い板のようなものが現れた。
(うおっ!)
そこには自分のステータスが記載されているようだ。
【名前】 メルク・アクレイド 8歳
【レベル】 1
【職業】 平民
【体力】 6
【魔力】 0
【力】 2
【耐久】 2
【敏捷】 3
【知力】 5
《 記憶読込可能 》
【パーティー】 めるふぃす
「ま、まじか…」
不安とワクワク感が入り雑じった表情で声をあげる。
(MPがあるってことは魔法が使える世界なんだな…)
ステータスをしばし眺め剛は思った。
いや剛は確信した。
自分自身が異世界に転生されたことを…
そしてこれから異世界攻略の冒険が始まるのだった。