19話 Cランクダンジョン『マテリアル廃鉱』①
マテリアル山脈の麓にあるCランクダンジョン。
二人はお昼前にダンジョンの入口前に到着する。辺りにはいくつものテントが設営されており、Dランクダンジョンの周りにいた冒険者よりも整った装備をした熟練冒険者と思われるパーティー達が見える。
「こっちのダンジョンの方が賑わっているな。あそこに屋台もあるぞ」
ノーランの町にいる大方の冒険者はこのダンジョンを目的にしているんだなとメルクは思う。
町からは結構な距離があるため、ダンジョン前で野営するパーティーが多く、屋台や風呂敷を広げ道具を販売している人達も見える。
「アリア、しばらくこのダンジョンを周回する予定だから」
「全然大丈夫だけど、食料はちょっとしかないよ?」
「このダンジョンに出る宝箱を漁って道具屋に売ればなんとか凌げると思う」
宝箱大好きなアリアはメルクの言葉にニコニコ顔だ。
普段は宝箱があってもスルーするメルクはレベル上げの他に別の目的を考えている。
「多分このダンジョンの宝箱から脱出用のアイテムが希に出てくると思う。Bランクダンジョンに挑戦するためにここで入手するつもりだから」
Bランクダンジョンに挑戦する前に、ダンジョン脱出用のアイテムは必須とメルクは考える。ギルドから聞いた話しだと、Bランクダンジョンに挑戦するパーティーはちらほらいるみたい。未だに未踏のダンジョンのため、脱出アイテムを使用して帰還しているとみられる。
「アリア、早速入るぞ」
山肌に大きな洞穴があり、ここが入口のようだ。
ダンジョンは元々、ミスリル鉱を採掘するための鉱山と聞いた。数百年前にミスリル鉱を採掘しつくし廃鉱となりダンジョン化したようだ。まだ残っているミスリルを求めてダンジョンに入るパーティーもいるだろとメルクは思う。
「あ、この立て看板にダンジョンの情報が書いてあるよ!」
「どれどれ…」
アリアはダンジョン入口の横に立て看板を見つけ、ダンジョンの情報が書いてあるよと話す。
書かれている内容は以下となる。
『Cランクダンジョン マテリアル廃鉱』
・最深部5階層のダンジョン
・ダンジョン内の道は複雑で迷いやすいので、最適1週間分の食料を持つべし
・ボスはビックビーのため、それなりのパーティーで挑むべし
『ミスリル鉱を見つけた際は高価買取のベルムス商会まで!』
(注意看板かと思ったが広告か)
メルクは死亡者が多いために設置された看板かと思ったが、最後の一筆を見て広告だったかと思うが、有難い情報に今度商会を利用させてもらおうと思った。
二人はダンジョンの入口に入るとすぐに転移の魔方陣を目にする。
「食料少ないからさっさと踏破しちゃおうか」
「迷路になっていると思うけど大丈夫?」
「なんとかなるさ」
多くのパーティーが踏破しているようなので、メルクはそこまで苦労はしないと踏んでいる。
二人は転移の魔方陣の上に乗り、1階層に転移した。
転移先には廃坑と思われる道がいくつも枝分かれをしているようだ。
メルクは剣を握り剣先を石畳の地面に付ける。少し剣先で引っ掻いてみると白線が付くようだ。
剣を引きずって白線を付けていけば迷いはしないと考えた。
メルクが先頭に立ち枝分かれの道を小走りで適当に進んで行く。
「メルク!あっちの道に魔物がいるよ!」
アリアが枝分かれした別の道を指指してメルクに伝える。そこにはもぞもぞと何か蠢いている。蠢二人はそれに近づき、正体を確認する。
「ぎゃ!おっきなムカデ!」
そこにいたのは真っ赤な色をした体長15~16メートルの大ムカデだった。
虫嫌いのアリアはメルクの後ろへ隠れ身を潜める。
大ムカデの魔物は渦を巻いて魔物を補食しているようだ。
(お、こっちに気付いてないぞ?先制攻撃のチャ~ンス)
ボムロックとの戦いで結構魔力を消費したため、スキル無しの攻撃で魔力を溜めるつもりである。
メルクはひっそりと魔物に忍び寄り、大ムカデの本体の接続部らしき箇所を狙って大きく剣を振りかざす。
「うりゃ!」
「ギィィィィィ!!」
渾身の一撃は大ムカデの胴体を半分に切断し、体液が辺りに飛び散る。大ムカデは不意な攻撃に悲痛の叫びを上げ、メルクの方へ向きを変える。
(思ったより通常攻撃が通るのか。半分くらいの長さになったがまだ元気だな)
大ムカデはメルクを補食しようと地を這って襲いかかる。大きな顎を大きく開き、メルクの上から覆い被さるように飛び付く。
メルクは飛び付いてきた大ムカデの頭に剣を振るう。
剣は頭を切り裂き、そのまま大ムカデの勢いを利用して胴体の半ば付近まで斬り込む。大ムカデは頭から縦に真っ二つに切り開かれ、体液が辺りに吹き乱れる。大ムカデは魔石を残して黒い靄と変わる。
【レッドワームを1体倒しました。経験値400EXPを獲得しました。】
(思ったより楽勝だな)
「よくあんな気持ち悪い魔物と戦えるね」
「経験値だからな」
メルクは虫だろうがなんだろうが魔物は経験値としてしかみていない。
ステータス画面にて獲得経験値の確認を終えた二人は、迷路のような道を剣を引きずりながら進むのであった。