16話 Dランクダンジョン『蒼の洞窟』 ①
2人はノーランの町を北上し、Dランクダンジョン『蒼の洞窟』を目指して歩く。
昨夜、メルダとアイラにダンジョンに挑戦する旨を話し、2人の実力だったら問題ないと快く承認してくれた。メルダとアイラも冒険者だった頃にDランクとCランクのダンジョンは踏破していると聞いたのだ。
ダンジョン内に出現する宝箱について聞いたが、アイテムバックや脱出用のアイテムは出たことが無いと言っていたため、今回は宝箱は探さずに進もうとメルクは思う。
「アリア、宝箱は探さないぞ?」
「ええええええ!!楽しみにしてたのにー↓」
「日帰りで踏破するつもりだけど、余裕があったらな」
「わかったー↓」
しょぼくれるアリアを横目にダンジョンへと向かう。
王都とノーランの町の間は広い荒野となるが、その中間地点からノーラン寄りにダンジョンがあるとのこと。
ギルドで教えてもらった道を進んでいるが、見渡しの良い荒野に魔物1匹いない。
「あそこがダンジョンかな」
「どおうやらそうみたい」
周りには冒険者パーティーがちらほら見える。日の出と同時に出発した2人はお昼前にダンジョンに到着する。
「ここか、近くで見ると大きいな」
大きなかまくら状の入口が広い荒野にひょっこりと盛り上がっている。
「メルクー、周りにいる冒険者がじろじろ見てくるんですけど」
「まぁ普通子供が来る場所じゃないからな。ギルドでも厳ついおっさんに言われた気がする」
ここはDランクダンジョンのため、周りにいる冒険者は若い人が多い。視線はほっとけばいいとアリアに言い、洞窟の入口へと向かう。
「よーし、初ダンジョンいくぞ」
「ほーい!」
掛け声と共に入口から地下へ続く階段を進む。するとすぐに小部屋に辿り着く。
「なんか光っているよ」
「おぉ、これが転移の魔方陣か」
地面に直径3メートルくらいの魔方陣が描かれて魔方陣から光を放っている。
「じゃ魔方陣の上に乗るぞ」
「ほい!」
躊躇なく魔方陣に乗った2人は一瞬でその場から姿を消した。
「うほ、一瞬で景色が変わったな、ここが1階層のスタート地点か」
「思ったより広くて明るい!」
ダンジョン内は幅高さ共に5メートル程あり、壁には松明が等間隔で並んで燃えているため、内部はとても明るいのである。
「よし、進もうか」
進み出した2人は曲がりくねった一本道を歩いてると早々に魔物がいる音に気付く。
『カラカラ…カラカラ…』
「お、角を曲がった先に何かいるぞ」
「バフ掛けておくね」
戦闘が始まると思いアリアはメルクに補助魔法を使う。メルクは背に背負っている剣を手に掴む。
2人は角から飛び出し、音源を確認する。
「スケルトンか!」
「スケルトンがE級なんだ」
そこには骸骨が剣を持つ姿をした魔物が歩いてた。二人にとってスケルトンは雑魚の部類に入るが、初っぱなから出てくる弱い魔物ではない認識だ、
「アリア、凄く動きが遅くないか?」
「ステータスで言うと敏捷値1ね!」
スケルトンが『カラカラ』音を立て歩いてるがスローモーションの様に動いている。
「一撃喰らわせてみるか」
メルクは無防備なスケルトンの胴体に一撃を喰らわす。
『カラカラカラカラ』
骨は切れないものの、ダメージを負ったスケルトンは骨がバラバラになり地面に散乱する。
「あれ?もう終わり?」
メルクの攻撃でバラバラになったスケルトン。メルクは復活するだろうと思って経過を観察している。
するとバラバラになった骨が黒い靄靄となり、魔石だけを残して消えてゆくのであった。
【スケルトンを1体倒しました。経験値4EXPを獲得しました。】
「倒したのか、とんだ拍子抜けだな」
「ゴブリンより経験値少ないよ↓」
獲得した経験値からスケルトンはゴブリンより弱い魔物とメルクは判断した。
地面に残った魔石を回収し、二人は洞窟の奥へと進む。
所々に小部屋があったが、中にはスケルトンがいたりいなかったりするだけだった。
「メルクー、あれってスライム?」
アリアが指を向けた先に、青緑の透明色で人の顔サイズの物体がピョンピョンと跳び跳ねている。
「取り敢えず倒してみるか」
メルクはスライムに接近し、サッカーボールかの様におもいっきり蹴り上げる。
『ベチャ』と音を立てスライムが飛散し、黒い靄へと変わっていく。
【スライムを1体倒しました。経験値1EXPを獲得しました。】
(これは非常に効率が悪いな)
魔物とのエンカウント率は南の森より良いが、獲得できる経験値は低い。この二つが両立しなければ効率が良い狩場とは言えない。
「アリア、さっさと踏破してCランクのダンジョンに行くぞ」
「ほい!」
このダンジョンは時間の無駄と判断し、突っ走って2階層へ続く転移の魔方陣を探す。魔物が居ようがお構い無しに攻撃を加えながら走り抜ける。今までは魔石の回収を一応してきたが、今は時間が惜しいため放置して走り抜ける。
単純な道だった為、時間も掛からずに2階層目の転移の魔方陣に辿り着く。結局この階層にはスケルトンとスライムしかいなかった。
「アリア、ボスまでノンストップで走るけど大丈夫か?」
「余裕のよっちゃん!」
こうして二人は転移の魔方陣の上に乗り2階層へ転移したのである。