14話 D級の魔物
レベル上げの許可をもらった翌日から、メルクとアリアは鬼狩りを続けている。初日から20日経ったが一度も休まず今日に至る。
今日も森でアリアと魔物の討伐を行っている。
レベルも大分上がり、新しくパッシブスキルを取得した。パッシブスキルは自動的に作動するスキルになる。
メルクが取得した魔力吸収は名前の通り、攻撃を敵に当てるたびに敵の魔力を吸収できるパッシブスキルとなる。これでメルクは魔力の温存をせずとも戦闘することが出来るため、魔物の討伐がさらに捗った。
メルクは昼食のパンをかじりながらステータスを確認する。
【名前】 メルク・アクレイド 8歳
【レベル】 28
【職業】 魔剣士
【ランク】 E
【体力】 157
【魔力】 212
【力】 168
【耐久】 155
【敏捷】 82
【知力】 226
【パーティー】 めるふぃす(2)
【経験値】 14352/14696EXP
【スキル】
・ウィンドスラッシュ
・フレイムバスター
・サンダースマッシュ
・エタニティフリーズ
【パッシブ】
・魔力吸収
【名前】 アリア・フィアレーゼ 8歳
【レベル】 25
【職業】 クレリック
【ランク】 F
【体力】 86
【魔力】 418
【力】 69
【耐久】 69
【敏捷】 69
【知力】 249
【パーティー】 めるふぃす(2)
【経験値】 8322/8508EXP
【魔法】
・ヒール ・プロテクション(単体耐久向上)
・キュア ・アジャイル(単体敏捷向上)
・ハイヒール ・アビリティ(単体力向上)
・ハイキュア ・アンプロテクション(単体耐久低下)
アリアもレベルが一気に上がって魔法も結構な数を取得した。魔法は想定通り、味方の回復系魔法と味方のステータス上昇魔法を同時に取得してきている。
討伐した魔物は魔石だけを抜き取り、後は回収せずにしている。金策については必要なときにすれば良いとメルクは思っている。
「メルクー、私のレベルが25になったから冒険者証の更新に行こうよー」
「じゃこれからギルドへ行こうか」
(そろそろ経験値の効率が落ちてきたから次の手を考えないとな)
アリアはレベル25で冒険者ランクが上がることを聞いていたため、ただ単に更新して見栄えをよくしたいだけである。逆にメルクは見た目にはこだわらないため、ランクなんてどうでもいいと思っているが、現状の効率を打破するためにギルドで情報収集をしたいと思った。
「それじゃ行くとするか」
「―――メルクあれ!!」
パンを食べ終えた二人は腰を上げようと思った時、アリアが声を上げて指を指す。
「おっきいゴブリン!!」
「うん?……デカいな、ゴブリンキングか?」
こちらに向かって歩いてくる巨大な魔物。手にはハルバードを持っており、頭には王冠みたいなものを被っている。ゴブリンの5倍程ある巨体を揺らしながらこちらを睨んでいる。
(ちょっとゴブリンを狩りすぎたから、親玉が出てきたのかな)
「メルクいけそう?」
「多分いけると思う」
メルクが考えるにゴブリンキングはD級の魔物くらいだろうと直感で推測する。
(無理そうなら逃げればいいっか)
「アリア準備お願い、やっつけてくる」
「ほい!」
アリアは次々とバフ系の魔法を掛けていく。ステータスの力、耐久、敏捷の数値がアリアの知力分である249が増加される。そしてゴブリンキングにも耐久低下の魔法を掛ける。魔力値400を超えているため、このくらいアリアにとってはどうってことないのだ。
「グゴゴゴォォォ!!!」
ゴブリンキングがハルバードを振り上げ雄叫びを上げるが、お構いなくメルクは接近する。
目の前に迫ったメルク目掛けてゴブリンキングは振り上げたハルバードを振り下ろす。
『ドゴーーン!!!』
(うほ、すごい攻撃力だな)
間一髪で避けたメルクは今までの魔物とは比べられない程の攻撃力に冷や汗を流す。地面には小さなクレーターが出来ている。
ゴブリンキングが再び腕を振り上げ、攻撃体勢を整える。
(攻撃さえ当たらなければどうってことないな)
メルクが再びゴブリンキングへ接近する。ゴブリンキングもすかさず腕を振り下ろす。
『ドゴーーン!!!』
(チャーンス)
ゴブリンキングの攻撃を簡単に避けたメルクは、この合間を待っていた。
「フレイムバスター!」
ハルバードが地面にめり込んだ隙に、メルクの炎スキルがゴブリンキングの脇に『バーン!!』という炸裂音が響く。それと同時に激しい炎がゴブリンキングを包む。
「グゴォォォ!!!」
真っ黒焦げになった巨体はハルバードを捨て、大きな拳を作り腕を振り上げる。
「グゴゴゴォー!!」
(さすがのD級はこれくらいじゃ倒せないか)
ゴブリンキングは雄叫びを上げながらメルク目掛けて腕を。
だが攻撃速度が遅いことに気づいたメルクは、敢えて逃げずに寸前で避けるのである。
「ほいっと、もういっちょフレイムバスター!」
軽々に拳を避け、ゴブリンキングの胴体を斬りつける。激しい炎がもう一度ゴブリンキングを包む。
「グゴオォォ………」
炎が燃え尽きた瞬間、ゴブリンキングの巨体が『ドカーン』という音と共に地に倒れる。
(お、倒したか?)
【 ゴブリンキングを1体倒しました。 経験値450EXPを獲得しました。】
【メルクはレベル29に上がりました。】
…………
アリアもレベルが上がり新しい魔法を覚えたようだ。
(ソロで狩った場合は900EXPか、やはりD級の魔物を狩った方が効率がいいな)
ゴブリンキングの経験値とD級の魔物の強さから今後は別な場所で狩りをした方が効率がいいとメルクは思う。
メルクが今後のことを考えていると、アリアはガッカリな様子でこちらに近づく。
「取得した魔法がパーティー魔法だったよー↓」
アリアがレベル26で取得した魔法は『ヒールレイン』と『キュアレイン』だったようだ。範囲魔法のため、現時点では意味の無い魔法になる。そのためアリアは落ち込んでいる。
「いやアリア、レベル20台で範囲魔法を取得するってことは、これから強力な魔法を取得できるのではないかな」
「そっかー!」
「取り敢えず魔石を回収してギルドへ行こうか」
「オッケー!」
メルクはアリアを宥めるが、アリアの魔法は今後の戦闘で一番重要になるとメルクは思う。そんな期待を込めてアリアを諭した。